株式市場で「鉱業」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する6銘柄の平均上昇率は1.7%と、大幅安の東証株価指数(TOPIX、2.6%下落)に対して「逆行高」となりました(1月28日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい「鉱業」関連5銘柄とその背景について解説します!
原油価格は7年ぶり、ガソリン価格は13年ぶりの高値
2022年に入り 原油価格の上昇が続いています。北米原油価格の指標であるWTI先物価格は、1月27日に1バレル88.54ドルと約7年ぶりの高値を付けました。
この背景の一つは、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の世界的な感染拡大です。経済活動が制限されるとの警戒感から原油の需要は減少するとみられていました。しかし、実際にはそこまで経済活動は縮小せず、原油の供給に対して需要が高まり、原油価格が上昇したのです。
原油価格が上がれば、ガソリン価格も上昇します。ガソリン価格は、約13年ぶりの高値をつけました。これを受け、日本政府は、1月27日からガソリン価格抑制のための施策を発動しました。出光興産やENEOS などの石油元売り企業に補助金を支給することで、ガソリン価格高騰を抑えるという施策です。この補助金制度が発動されたのは初めてのことでした。
原油高騰で儲かるのは?
一方、原油などの権益を持つ鉱業関連会社は、原油価格上昇が収益拡大に直結します。米石油大手のシェブロンが1月28日に発表した21年10〜12月期決算は最終的なもうけを示す最終損益が50億ドルの黒字と、前年同期の6億ドルの赤字から急回復しました。原油高が収益拡大につながるとの見方から鉱業関連株が買われています。
日本の資源開発最大手!【INPEX】
上昇率1位の「 INPEX 」は、国際石油開発と帝国石油が2006年に経営統合して誕生した資源開発の日本最大手です。オーストラリアやインドネシア、中東・アフリカ、欧州、米州など世界中で原油や天然ガスの探鉱・開発・生産を手掛けています。コロナ禍からの資源価格の回復を背景に四半期ごとに業績予想を引き上げるなど好調で、21年12月期は、売上高が前年に比べ58%増の1兆2200億円、本業のもうけを示す営業利益が2.4倍の5880億円となる見込みです(会社予想)。コスト削減も進めており収益拡大への期待が高まっています。
原油価格上昇で赤字幅が縮小!【石油資源開発】
上昇率2位の「 石油資源開発 」は、新潟や北海道などで原油や天然ガスを探鉱・開発・生産し、インドネシアやイラクなど海外のプロジェクトにも参画しています。22年3月期はカナダで手掛ける化石燃料の開発事業2カ所からの撤退に伴い1300億円強を特別損失として計上するため、最終的なもうけを示す最終損益は2期続けて赤字となる見通しです。ただ、原油価格の上昇や保有株式の売却、子会社の解散などで赤字幅は第1四半期時点の会社予想よりは縮小する見通し(会社予想)。2月9日に公表される新たな業績予想では、赤字幅がどこまで縮小するか注目されています。
原油価格の上昇はしばらく続く可能性
そのほかにも、オーストラリアやインドネシアに石炭の権益を持つ「 三井松島HD 」、1931年創業と日本最古の天然ガス会社で千葉県産の天然ガスを生産している「 K&Oエナジーグループ 」、石炭の輸入販売が主力の「 住石HD 」にも、資源価格の上昇を好感した買いが入っているようです。3社ともに今期の業績予想の見通しを引き上げています。
オミクロン型の感染拡大でも原油需要が衰えない上、石油輸出国機構(OPEC)が増産に苦戦しています。さらに、ロシアがウクライナを再侵攻すれば、原油や天然ガスの生産が混乱するとの警戒感もあり、資源価格の上昇は当面続くとの見方が増えています。鉱業関連株の動向は今後も注目です。