お金のむこうに人がいる

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

元ゴールドマン・サックスのトレーダーによる、専門用語なしの経済入門書。「読めば、すぐにお金持ちに!」とはいきませんが、われわれの固定観念を取っ払い、世界や未来の見方を半回転くらい変えてくれる本です。

経済オンチほど感動する! 思い込みを反転させた先の未来

経済オンチほど感動は大きいです。タイトルの意図は読み進めるうちに明らかになり、お金の話ってつまるところ、「SDGsに行きつくのね」と納得してしまう展開に美しさを感じました。

とはいえ、難しい話や退屈な話はなし。「経済の専門用語はごまかす時に使われる」「社会のお金は増えない。1.6兆円の経済効果とは、単に1.6兆円のお金を移動させたという意味でしかない」と次々に斬っていく(作者の人柄なのか、一刀両断してもあくまで柔らかい印象ですが)。目からウロコとは言ったもので、その視点にはほぼ既視感がありませんでした。読書中「そういうことだったのか!」と何度叫びそうになったことか。

特に「価格の高さは『どれだけ働きたくないか』を表している」には笑ってしまいます。休日の旅行代金が上がるのは「(旅行会社の従業員が)休みたいのに働かなければいけないから」。この例にたがわず、「価格=質」の枠を取り払う事例は本書でも繰り返し登場します。

また、年金問題を踏まえた高齢化と少子化への考察はたいへん興味深いです。「1人の高齢者を1.3人の大人で支える(※2050年)」お馴染みの数字に対し、子育てと人口バランスのデータを提示。現在は1人の子どもを3.3人の大人で支えていますが、1940年には1人の子どもをたった1人の大人が見ていたという事実。出生数の減少は毎年騒がれても、こうした数字はほとんど取り上げられません。

「現役世代は損」といった声が聞こえる中、子育ての負担が減ったことは忘れている。ひるがえって「社会全体で高齢者を支えよう」とは考えても「社会全体で子育てを支えよう」という発想は薄くなってしまったのではないか? 著者の指摘には唸ってしまいました。

本書の出発点は「借金が1000兆円もあるのに、日本はなぜ破綻しないのか?」をつきつめていったことがきっかけだったそう。経済の専門家自らさまざまな問題の枠組みを外し、反転させていく。そこにあるのは決して絶望ではない、フレキシブルな未来です。読後感も爽やかな良書です。