みなさんこんにちは! 公認会計士、税理士の山田真哉です。
前回は、「損益通算」や「譲渡損失の繰越控除」で税金を取り戻す方法をご紹介しましたが、今回は株の配当金の確定申告で税金を取り戻す方法について、お話ししたいと思います。
知らなきゃ損! 株の確定申告で税金を取り戻そう【前編】を読む
今回の話で私が対象としているのは、以下の両方に当てはまる方です。
・上場株式投資の運用をしている方
(※NISAやiDeCoは、もともと非課税で税金がかからないので、今回は対象外です)
まず、前回の簡単なおさらいですが、株を保有している場合、配当金や売却益といった利益には税金がかかります。この税金は「分離課税」といって、内訳は所得税が15.315%、住民税が5%、合計で20.315%の税率です。
運用手続きの際に「源泉徴収ありの特定口座」かつ「株式数比例配分方式」にしておけば、証券会社が税金の手続きを代行してくれて、税金を引いた後の金額が証券口座に入るので、べつに確定申告はしなくても大丈夫です。
まるっきりお任せできるので、この方式にしている方も多いかと思います。
ただし、です! 配当金を受け取った場合、年収1000万円以下の方であれば、確定申告をした方がいいんですよ。なぜか? じつは配当金に関しては、所得税15.315%、住民税5%の「分離課税」を選択しなくてもいいというルールがあるからなんです。このルールをうまく活用すれば、税金を取り戻すことができるんですよ!
「総合課税」を選ぶと税金が戻る!
株や投資信託の売却益は、確定申告で「分離課税」しか選べないんですが、配当金は「分離課税」もしくは「総合課税」のどちらかを選ぶことができます。総合課税というのは、毎月会社からもらうお給料など、他の収入と合計して税率を出す仕組みで、所得に応じて所得税率が変わります(住民税は一律10%です)。
所得が330万円を超えた部分は所得税率が20%になるので、どちらかを選べるなら「分離課税」の税率15.315%のままの方が低くて良いじゃないか、と思うかもしれません。ところが、なんと、配当金に関しては、確定申告で「総合課税」を選ぶと、所得税率から10%引くことができるんです(これを「配当控除」と言います)。
つまり本来は所得税率20%なのが、配当控除で10%引けるので、20%から10%を引いて、配当金は10%の所得税率で計算して良い、ということなんです。
ということは、すでに証券会社が代行して納税してくれた15.315%の税金を、10%で計算し直すことになるので、差し引き5.315%の所得税が戻ってくるというわけです。
所得税率が5~10%(所得330万円以下)なら、配当控除で全て引いて、税率は0%になります! 先に納税した15.315%の所得税が全て戻るんです。これはデカイと思います。
なぜこんな仕組みになっているかと言うと、そもそも配当金というのは、会社が「法人税」を支払った残りを、株主が配当金として受け取っているんですね。「法人税」で税金を引いて、さらに配当金を受け取った時に税金を課すという「二重課税」の構造なんです。そこで、二重に税金を引くのはわるいから、10%くらいは引いておきますよ、ということで「配当控除」ができたんですね。
ちなみに所得330万円は、年収にすると、だいたい500万円後半~600万円前半です(扶養控除など、控除される金額によって個人差があります)。だいたい年収1000万円以下の方は、確定申告で総合課税を選ぶと配当控除が使えて、配当金の所得税が戻ることが多いです。
会社員の方は「源泉徴収票」を見ると、自分の所得がいくらなのか分かります。源泉徴収票の「給与所得後の金額」から「所得控除額の合計額」を引くと、自分の所得が分かるので、気になった方はチェックしてみてください。
住民税の確定申告は……?
ところで、住民税はどうなるの? と思ったみなさん。そうです。配当金にも住民税はかかるんですが、住民税の扱いには注意点があります。
どういうことかと言うと、さっきの所得税と同じように、住民税も「総合課税」を選んで確定申告をすると、住民税が10%になってしまうんです。所得に関係なく一律10%です。
「分離課税」なら住民税は5%だったのに、わざわざ「総合課税」を選んで確定申告をすると10%になって、逆に5%増税になるわけです。
じゃあどうすればよいのかというと、所得税は「総合課税」で確定申告をして、住民税は、証券会社が代行して納税してくれた「分離課税」の5%のまま何もしない、つまり住民税は確定申告をしなければ良いんです。
そんなことして大丈夫なの? と思うかもしれませんが、安心してください。実際に確定申告書の2枚目に「特定配当等の全部の申告不要」という欄があるので、そこに丸をするだけで「住民税は申告不要」という手続きが適用されます。
e-Tax(インターネットで確定申告ができるシステム)で手続きする場合も「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部について、住民税で申告不要としますか?」という項目で「はい」を選択するだけでOKです。
令和5年以降の税制改正に注意!
最後に、今後の税制改正について少し触れておきたいと思います。今回ご紹介した“所得税は確定申告をして「総合課税」を選択、住民税は確定申告しない”という「美味しいとこどり」ですが、じつは今後廃止される予定になっています。
具体的には、所得税を確定申告して「総合課税」を選択したら、住民税も確定申告して「総合課税」を選択してください、という風に法律が変わることが税制改正で明言されてしまいました。
令和3年分の確定申告と、来年の確定申告までは変わらないんですが、早ければ令和5年分の確定申告から廃止になるので、今後の税制改正の動きには注意が必要です。
確定申告にチャレンジ!
というわけで、今回は配当金の確定申告で税金を取り戻す方法をご紹介しました。ご自身の1年間の運用を振り返ってみて、「税金が戻るかも」と思った方は、ぜひ確定申告をしてみてください。また、確定申告の書類の書き方などは、僕の動画でご紹介していますので、気になった方はチェックしていただければと思います。
それでは今回は、このへんで! ば~いば~い!