株式市場で「非鉄金属」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する14銘柄の平均上昇率は0.9%と、ロシアによるウクライナへの侵攻を受け大幅安となった東証株価指数(TOPIX、2.8%下落)に対して「逆行高」となりました(2月25日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい「非鉄金属」関連5銘柄とその背景について解説します!
ロシアがウクライナへ侵攻
日本時間2月24日、ロシア軍がウクライナの軍施設へミサイル攻撃を開始、その後、ウクライナ国内に侵攻するなど戦線が拡大しました。こういったロシアの軍事行動に対して、米欧日など多くの国がロシアに対する経済制裁を発動しました。
例えば、半導体などハイテク製品のロシアへの輸出規制。また、米欧日カナダや欧州連合(EU)は、国際決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの銀行を排除すると表明しました。
パラジウムや小麦などの国際商品相場が上昇
一方、経済制裁の発動・強化を受けて、ロシアが高い生産シェアを持つパラジウムや小麦などの国際商品相場には上昇圧力がかかっています。
チタンは航空機の材料などとして多く使われていますが、そのチタン製品の原材料であるスポンジチタンや中間品であるインゴットの世界最大手はロシア企業のVSMPO-アビスマです。ロシアがSWIFTから締め出されれば国際送金が事実上できなくなるため、ロシア産品の輸出入は困難になります。こういったことから、チタンをはじめ、銅、ニッケルなどの開発・精錬などを手掛ける銘柄にはロシア産品の代替需要を見込んだ買いが入っています。
スポンジチタンの需要に回復期待!【大阪チタニウム】
上昇率1位の「 大阪チタニウムテクノロジー 」は1952年に日本で初めてスポンジチタンの工業生産に成功。スポンジチタンやインゴットに加え高純度チタンなど高機能材料も手掛けています。
コロナ禍による停滞から、欧米を中心に経済活動が再開し、それに伴いスポンジチタンの需要が段階的に回復しています。また、為替相場が円安で推移していることもあり、会社側は2月4日に2022年3月期の売上高を従来予想の240億円から270億円に上方修正、営業損益 の赤字幅を34億円から28億円に修正しています。業績が戻り歩調なうえ、ロシア産品が出回らなくなれば需要回復がさらに進むとの期待から買いが入っているようです。
銅など非鉄金属のリサイクル需要高まる?【黒谷】
上昇率3位の「 黒谷 」は銅や銅合金を中心とした非鉄金属のリサイクルを専業とする国内唯一の上場企業です。非鉄金属のスクラップを購入し、選別・加工したうえで次の製品に再生しています。特に腐食に強く、大型船舶スクリューに加工されるアルミニウム青銅インゴットの製造では世界的に大きなシェアを占めているもようです(会社HPより)。
会社側は2022年8月期の売上高は前期比2%増の631億円、営業利益は74%減の8億円を見込んでいます。営業減益は2021年5月に銅の価格が大幅上昇したことで営業利益が拡大したことの反動減が背景です。一方、2021年9〜11月期の売上高は前年同期比55%増の202億円、営業利益が2%増の4億円と順調な滑り出しでした。業績の順調な推移に加え、ロシア産の銅の輸出が難しくなれば当社の銅リサイクル需要が高まるとの思惑も買いを誘っているようです。
くすぶる非鉄金属の需給ひっ迫の思惑
そのほか、チタン設備修繕計画の見直しや円安を受け、会社側が2022年3月期の営業利益を従来予想から3億円上回る50億円になりそうだと発表した「 東邦チタニウム 」、銅・ニッケル価格の上昇や鉱山売却で2022年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比2.6倍の2480億円になると会社側が見込む「 住友金属鉱山 」、銅を主原料とする金属粉末事業が電子部品向けなどに好調で2022年3月期の連結営業利益が20億円と前期比で67%増えると会社側が見込んでいる「 日本精鉱 」も買われています。
ロシアは2018年にウクライナ情勢を巡り米欧日などが発動した経済制裁への対抗措置として、チタンの輸出削減などを検討した経緯があります。
米欧日による経済制裁が及ぼす影響も含め、ロシア産の非鉄金属の供給が細るとの警戒感はくすぶりそうです。制裁の影響が明らかになるには時間がかかるほか、ウクライナ侵攻がいつまで続くのかも含め非鉄金属関連銘柄には折に触れて物色の矛先が向かいそうです。