20歳の自分に教えたい お金のきほん

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

お金を増やす大前提は正しい知識を持つこと。「経済」「投資」「税金」にまつわる素朴な疑問と池上彰、このタッグは最強だったと実感する1冊でもあります。

池上さんの肉声が聞こえてきそう?
「今さら聞けない疑問」をわかりやすく

本書は、今さら聞けない系の経済本の中で「もっともやさしく、もっともわかりやすい」1冊かもしれません。

「円高・円安ってどういうこと?」「日経平均株価の平均って何?」などの基本にはじまり、「一生で一番多く納める税金は?」「電気料金の明細の見方」といった家計に関連しそうな話まで。最新のデータや池上流の雑学を盛り込みながらの解説なので「そんなこと、知ってるよ」という大人にも楽しめます。

たとえば、生涯の納税額トップ3は消費税、住民税、所得税という内訳。平均的なサラリーマンはこの3つを合わせて5000万円以上(!)払うのだそうです。

うち2000万円強を占めるのが消費税で、使い道は医療などの社会保障費限定。そもそも少子高齢化を見越し1989年に導入された消費税ですが、30年前からあるわりに状況は悪くなる一方のような……。そんな疑問も湧くところ、年間の国民医療費に驚愕します。1990年当時、日本の国民医療費は年間20.6兆円でしたが、2019年には倍以上の43.6兆円に! 高齢化とともに税率がどんどん上がってきた背景が見えてきます。

また、興味が広がりそうな「つながりネタ」を取り上げるのが池上さんらしいところ。75歳以上の高齢者が1年間に医療機関を受診する平均回数(約33回)であったり、救急車1回の出動にかかる税金(約4万5000円)であったり。「金額を知ると真剣に考えたくなる」とあるように、医療費の現状が身近になる構成です。

もちろん、扱うのは税金に限りません。株式の仕組みやFX、NISAなど投資の基礎も、彼の言葉で語られるから腑落ちしやすい。「NISAはアベノミクスから始まった」といった話に、当時の政治ニュースを思い出す始末でした。

肉声がそのまま聞こえてきそうな文体は、経済ジャンルが苦手な人にもハードルを低くしてくれます。通勤途中に流れるように読めるのも本書の魅力の一つでしょう。