サイバー攻撃への警戒高まる! 「セキュリティ」関連株が上昇

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株式市場で「セキュリティ」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する37銘柄の平均上昇率は10.3%と、ロシアのウクライナ侵攻を巡る先行き不透明感が高まり下落が続いた東証株価指数(TOPIX、1.7%下落)に対して「逆行高」となりました(3月4日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい「セキュリティ」関連銘柄を紹介します!

サイバー攻撃の激化に警戒感

仕入れ先のシステム障害により国内全14工場の稼働停止を決定--。トヨタ自動車の2月28日の発表は、ウクライナ情勢に神経をとがらせる市場参加者に新たな衝撃を与えました。取引先の小島プレス工業が「ランサムウエア(身代金要求ウイルス)」によるサイバー攻撃を受け、部品供給を管理するシステムが影響を受けたためでした。

攻撃者は現時点では不明ですが、ウクライナに侵攻したロシアは武力攻撃とサイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド戦争」を展開していると言われています。米欧日による経済制裁の強化を受けて、攻撃対象を制裁参加国に広げる可能性も指摘されており、供給網を狙ったサイバー攻撃が激化するとの警戒感が広がっています。

ランサムウエアによる被害は4倍超

ランサムウエアによるサイバー攻撃は増加しています。警察庁によると、2021年後半(2021年7~12月)の企業・団体等におけるランサムウェア被害の報告件数は85と前年同期の4倍超に急増しました。被害企業・団体の内訳は中小企業が過半数を占め、業種別では製造業が全体の4割弱にのぼっています。

サイバー攻撃対策は本業の収益には直接つながらず、「コスト」として認識されがちです。このため、防御策の見直しやソフトウエアの更新などが遅れ、セキュリティ対策が十分でない企業が多いようです。しかし、今回のトヨタの生産停止のニュースを受け、セキュリティ対策の必要性が改めて認識され関連銘柄が買われています

ガバナンス強化やセキュリティ対策を支援【GRCS】

上昇率2位のGRCS「 GRCS 」は2021年11月に東証マザーズに上場。企業向けにリスク管理のコンサルティングとシステムを提供しています。ガバナンス(企業統治)とリスク、コンプライアンス(法令順守)、セキュリティの課題解決を支援するのを目的とし、それぞれの頭文字を社名としています。

大口顧客の取り引き先比率が高まったことなどから、2021年11月期の売上高は前の期に比べ23%増の17億円、営業利益は約5倍の1億円と大幅な増収増益となりました。2022年11月期の会社側の見通しは19%増収、55%の営業増益。既存の大口顧客との取引拡大などが収益拡大に貢献する見通しです。東証の市場再編でコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が改訂されるため、コンサルティングの需要が高まるとの期待も買いを誘っています。

web会議の普及で、セキュリティ強化続く

そのほかにも2月28日に日本郵政グループの新サービス「JPショールーム」向けに無人化店舗システムを提供すると発表した入退室管理システムなどのセキュリティーシステムを提供する「 セキュア 」、サイバーセキュリティ教育を手掛ける「 グローバルセキュリティエキスパート 」、セキュリティ監査やコンサルティングなどを提供している「 ブロードバンドセキュリティ 」も買われています。

テレワークやウェブ会議の普及など、私たちの仕事や生活のインターネットへの依存が増えれば増えるほどサイバー攻撃の脅威は高まります。技術の進歩とともに、サイバー攻撃の方法や対象も多様化しており、企業がセキュリティ対策を強化する動きは続きそうです。新たな脅威に対応できる技術があるかどうかが成長を左右することはありそうですが、今後もセキュリティ関連銘柄への高い関心は続くでしょう

GRCS(9250)は記事執筆時点で金融商品取引所の日々公表銘柄に指定されています。