省エネの力強い味方「パワー半導体」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「パワー半導体」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する23銘柄の平均上昇率は10.7%と、ウクライナ情勢や原油高への過度の警戒感が後退し大幅高となった東証株価指数(TOPIX、6.1%上昇)を大きく上回りました(3月18日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい5銘柄とその背景について解説します!

資源価格上昇で電気料金引き上げ

ロシアのウクライナ侵攻により、火力発電に使う原油や液化天然ガス(LNG)の価格が上昇しています。このため、東京電力ホールディングス、中部電力、九州電力、東北電力、北海道電力の電力5社は5月に電気料金を引き上げる予定です。電気料金はエアコンを多く使う夏場まで上がり続ける可能性も高まっています。

省エネで「パワー半導体」に脚光

電気料金の引き上げなどで、あらためて省エネルギーや再生可能エネルギーの利活用が注目されています。その切り札の一つとして脚光を浴びるのが「パワー半導体」です。一般的に半導体というと、マイコン(CPU)やメモリなどがイメージされますが、それとは少し役割・性質が異なります。パワー半導体は、電気を交流や直流に変換したり、電圧を変えたりできる省エネルギー技術部品です。

従来、パワー半導体の素材にはSi(ケイ素)が使われていましたが、より高性能で省エネに優れるSiC(炭化ケイ素)が注目されています。経済産業省は2021年10月にSiCなどを使った次世代パワー半導体の実用化と普及拡大を進める方針を打ち出しています。2030年までに省エネ50%以上の次世代パワー半導体で日本企業が世界市場シェア4割(1.7兆円)を獲得する目標を掲げました。

次世代技術の開発プロジェクトを推進【Mipox】

上昇率首位の「 Mipox 」は半導体素子の材料となるウエハーの研磨加工サービスを手掛けています。2月25日、同社が参画している研究テーマ「次世代パワー半導体に用いるウエハー技術開発」が、NEDOが公募していた「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」に採択されたと発表しました。

同社は、2月10日に、2022年3月期の純利益見通しを従来予想から4億円上回る13億円に上方修正しました。上方修正は2021年11月に続き今期三度目です。半導体関連の受託研磨サービスなどが好調で、売上高の見通しも三回上方修正するなど業績の拡大が続いています。

中国子会社が設備増強【フェローテックホールディングス】

上昇率2位の「 フェローテックホールディングス 」は3月16日に中国子会社の増資を発表しました。同子会社では、パワー半導体の絶縁放熱基板を製造しており、新工場の建設など生産能力の増強を目的としています。会社側は「パワー半導体事業の成長スピードに鑑みるとさらなる能力増強が必要」との見解を示しています。

会社側は2022年3月期の業績見通しを純利益が前期の2.8倍の235億円、売上高が37%増の1250億円になると予想しています。主力の半導体製造装置関連事業が好調なほか、パワー半導体基板の需要拡大が続いていることから大幅な増収増益を見込んでいます。

「パワー半導体」多くの日本企業が強み

そのほかにも2月14日に海外企業からパワー半導体向けSiC材料の切断加工装置で大口受注を獲得したと発表した「 タカトリ 」や、パワー半導体などの製造装置が好調で3月10日に発表した2021年8月~22年1月期決算で純利益が前年同期の2倍、売上高が28%増えた「 サムコ 」、パワー半導体世界最大手の独インフォニオンなどに材料のSiCウエハーを長期供給する契約を結んでいる「 昭和電工 」も買われています。

資源価格の上昇による電気料金の引き上げだけでなく、足元では東京電力管内の火力発電所の稼働休止などによって電力が逼迫しており、エネルギーの効率利用が急務となっています。電力を無駄なく効率的に利用するうえで中核的な役割を果たすパワー半導体は引き続き注目されそうです。