会計士が教える! どんどんお金が貯まる「最強の貯金術」

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

この記事は、日本FP協会東京支部、東京都金融広報委員会、東京証券取引所が主催するオンラインイベント「コロナ後のマネー・家計・人生 ~未来を切り開く新・資産形成術~」(2022年3月5日開催)から一部を抜粋して作成しています。

みなさん、こんにちは! 公認会計士、税理士の山田真哉です。今回は、ライフプランニングにまつわる話をしたいと思います。ライフプランニング、いわゆる人生設計は、家族構成や収入・支出、住まい、老後の過ごし方など、様々な要素で変わってくるんですが、いずれの要素にも関係するのは「お金」です。ということで今回は、お金の貯め方など、「お金」とどう向き合えば良いのか、会計士の視点からお話ししたいと思います。

「お金」にできる3つのこと

そもそも「お金」というのは、3つのことしかできません。

①加えること
②減らすこと
③動かすこと

加えるというのは「労働」です。働けるうちに働いて、お金を稼ぎましょう、ということですね。減らすというのは「消費」です。いかに支出をコントロールするかがポイントになってきます。そして動かすこと、これは「投資」です。

投資というと、株とか投資信託を買いましょうって話になりがちですが、投資は「自分への投資」と「他人への投資」の2つに分かれます。「自分への投資」は、たとえば自分で焼肉屋をやって儲けるというのもアリだと思いますが、ズバリ僕は「勉強」だと思っています。自分の時間という大事な資産を切り取って勉強することは、最大の利回りを得るチャンスになるんじゃないかと思っています。

一方「他人への投資」は、自分で焼肉屋をやるより、他人に焼肉屋をやってもらった方が儲かる、というパターンです。いわゆるオーナーになるってことですね。まあ焼肉屋に投資する方は多くないと思うので、だいたい株や投資信託に投資をすると思うんですが、これには、他人に任せた方が確実に成長するという前提があります。

広く言うと、「他人への投資」は世界に対してお金を預けることだと思うんですが、これまでの統計上、基本的に世界経済は成長しています。世界経済成長率というのがあるんですが、だいたい年率3~5%なんですね。自分が1年間で3〜5%成長するのは難しいけど、他人に任せれば、だいたい3~5%成長すると。こういう理屈です。なぜ世界は成長しているかというと、世界人口は増えていて、技術革新が起きているからですね。

お金が貯まる最強の方法は「天引き」

ところで皆さん、FIRE(ファイア)という言葉を聞いたことがありますか? FIREとは、Financial Independence,Retire Earlyの頭文字をとった言葉で、経済的自立と早期リタイアのことです。

FIREを実現するには色んな方法がありますが、ざっくりいうと、とにかく節約して貯蓄して、それを投資に回す。そして利回り4%くらいの運用でやっていけるようになれば、あとは貯金の取り崩しで悠々自適な生活ができるっていう話です。

2~3年くらい前から日本でFIREが流行り始めたんですが、このとき「この話、どこかで聞いたことあるな」って思ったんですね。で、思い出したんです。本多静六さんの『私の生活流儀』という本の中に「貯蓄なくして投資なく、利殖なし」と、書いてあったんです。

つまり、貯金がないと、そもそも投資できないし利益を増やすことはできないよねと。だから、まずはどうやって貯金するかを考えよう、ということを本多さんが言っていたな、と思い出したんです。本多さんは、明治から昭和初期にかけての投資家で、今で言うウォーレン・バフェットみたいな、億万長者になった方です。

そんな本多さんの本の中で、貯蓄を増やす公式が2つ紹介されています。

①収入ー支出=貯蓄
②収入ー貯蓄=支出

収入から支出を引いた残りを貯蓄に回すパターンと、収入から先に貯蓄分を引き、残りを支出に回す、というパターン。貯蓄には、この2つの方法があるんですが、どちらの方が、お金が貯まりやすいと思いますか?

じつは、②の方が貯まります。これはいわゆる「天引き」という制度ですね。

本多さんは、埼玉県の貧しい農家に生まれて、苦学して東大の教授になった方なんですが、教授だからお金持ちになったというわけじゃないんですね。当時の日本は、外国人の先生に沢山お給料を払っていて、日本人の教授はお給料が少なかったんです。でも教授だっていうことで、本多家一族がみんな本多さんを頼るわけです。本多さんは十数人を養わなければならず、このままだとずっと貧乏だ、と思ったわけです。

そこで、本多さんは「4分の1天引き法」を始めました。収入の4分の1を強制的に天引きし、そのお金には一切手をつけず、残りの75%で生活するという方法です。給料前は、あわやひえしか食べられず、周りの人が「大変じゃないですか?」と聞いたそうです。すると、本多さんは「とにかく(天引きを)やれ。やってから考えろ」と。そういう話が残っています。

そうして、本多さんは貯めたお金を投資に回して増やし、それを研究費に充てていきました。その研究で明治神宮や日比谷公園など、日本各地の植林設計に携わったことから、本多さんは、のちに「公園の父」とも呼ばれています。ちなみに、教授をしている間に貯まった莫大なお金(現在の価値で100億以上!)は、東大を退官するときに匿名で全額寄付しています。こんな方が昭和の初期にいらっしゃったんですね。

このように、天引きが貯まりやすいというのは、本多静六さんも実体験から仰っていますし、古くは仏教の経典にも書いてあるそうです。それが本当かどうかは分からないんですけど、天引きは最強だ、というのは昔からよく言われています。結局のところ、天引きの何が良いかっていうと、収入から強制的に引くことによって「残ったお金で何とかやりくりしよう」と頑張るので、結果的に自然とお金が貯まるところですね

なので、お金がなかなか貯まらないという方は、まず強制的に天引きをやってみるのは、方法のひとつとしてアリなんじゃないでしょうか。

「会計センス」を身につけて支出をコントロールしよう

とはいえ、天引きできるお金がない、支出が減らせないって方もいると思います。そういう方に是非お伝えしたいのが、「会計センス」を上げる方法です。会計センスがあれば、支出をコントロールすることができます。

たとえば街中で、

「限定7割引」
「本日ポイント5倍」

こんな言葉を見かけたことはありませんか? こういうフレーズに心を動かされる人は、会計センスがありません。逆にセンスがあれば、この文言をみても、ふーん、結局得じゃないよね、と損得をパッと瞬時に判断することができます。会計センスというのは、そういうものだと思っていただいてOKです。

では具体的に、クイズを解きながら会計センスについて考えてみましょう。

まずは、1問目。

Q:コスト削減をしたいです。次の2つのうち、どちらがお得でしょうか?
①1000円のものを500円で買う。
②101万円のものを100万円で買う。

①は半額、②は1%弱の値引きということで、1番の方がお得感がありますが、正解は②です。今回の目的はコスト削減です。①だったら500円の節約、②だったら1万円の節約になります。なので、コスト削減が進むのは②です。②の方が手元に残るお金が多いですよね。

ポイントは、「お得感」ではなく「お得」を考える、そして「パーセンテージ」ではなく「絶対額」で考えるということです。これが会計センスの第一歩です。これを「金額重視主義」と、私は勝手に呼んでいます。

つまり、いかに利益を残すか、ということなんですよね。パーセンテージで見ると結構惑わされるんです。母数が違いますからね。なので、会計の判断、経営の判断、投資の判断の際にも、いかに額が残るか、というのを気にするようにしていただければと思います

とはいえですよ、この問題、101万円のものを100万円で買っても、あんまり得した気がしないぞと。その気持ち、よく分かります。というのも人間は、金額が大きいと感覚がマヒするんです。つまり101万円でも、100万円でも、あんまり変わらないかなと。

よく車を買う時に、200万の車を買って月1万のオプションを付けると、車の清掃をしますよって話、ありますよね。200万円の支払いに追加で1万円だから、つけちゃおうかな、ってなったりしますけど、月1万でも2年間でトータル24万円になりますからね。24万円でも、すでに200万円払っていると、24万も、たいしたことないって気になっちゃうんですよね。

一方で、僕はカップヌードルとか好きなんですけど、基本は148円以下で買いたいんですよね。できれば120円で。168円だと絶対買わないです。168円で買ったら負けって思うんですけど、とはいえ20円くらいの差じゃないですか。でも20円でムキになって、もう今日は絶対ここで買わない、ってなるんですよね(笑)。

人間って、細かい金額を気にしがちなんですが、そこを排除するのが「会計センス」です。なぜなら、金額が大きいほど節約効果も大きいわけですから、カップヌードルの168円、148円はさておき、高い買い物をするときほど、気をつけましょうということです。何となく伝わりましたでしょうか。

では、クイズ2問目です。

Q:同じような商品が並んでいます。どちらがお得でしょうか。
①定価1000円ではなく、特価800円
②定価700円

問題文を良く読んでいただければと思いますが、同じような商品が並んでいるんだったら、安い方が良いよね、ってことです。なので正解は②です。ただ人間というのは、どうしても「値引き」とか「特別」に弱いんですよね。お得よりも「お得感」を重視しがちですし、金額が大きいとマヒしますし、値引きとか特別といったフレーズに非常に弱い生き物なんです。

もうちょっと専門的な話でいうと、一般の方の視点では「アンカリング効果」というものが働いています。でも会計センスは、金額重視主義です。昔僕が出した本のタイトルでもあるんですが、『2000円の弁当を3秒で安いと思わせなさい』これがアンカリング効果です。船の碇(いかり)のことをアンカーというんですけど、そこを基準に考えてしまいがち、ということです。

普段よく買うお弁当って、だいたいコンビニとかだと500円前後じゃないですか。だから500円前後にアンカーが置かれるので、アンカリングの基準で言うと2000円の弁当ってめちゃめちゃ高いわけですよ。で、アンカリング効果というのは、そのアンカーを変えることなんです。

たとえば、2000円の弁当っていうと高いですけど、駅弁だったらどうでしょう? 駅弁っていうと、アンカーが1000円くらいになるんです。さらに、2000円の駅弁の横に4000円の駅弁、それから9800円の駅弁を置いたらどうでしょう? 2000円、4000円、9800円っていくと、2000円の弁当って安いんじゃない? って一瞬思いますよね。なぜなら、4000円にアンカーが置かれるからです。これがアンカリング効果です。

つまり、アンカー次第で気分が変わるので、さっきの車の例だと、200万にアンカーが置かれるので、1〜2万は安いと思ってしまう。カップヌードルで言うと、150円くらいにアンカーが置かれるので、168円は高くて買えない、みたいなことになるわけです。

こういうアンカーを打破する方法としては、やっぱり金額重視主義です。あらゆる「感情」を排除して、「勘定」で考える思考法です。これをやることで、人はアンカリング効果から脱出することができます。つまり金額重視主義では、自分は月々3万円貯金しようとか、月1万円の交際費の中でやりくりしようとか、「自分のお金」を基準にするんですね。そうすることで、なんかお得かも、といった感情から脱することができます。

ということで、さっきの

「限定7割引」
「本日ポイント5倍」

というフレーズを改めて見ると、いかがでしょう?

うちの近くのスーパーは、雨の日だとポイントが5倍になるんです。普段は200円で1ポイントなんですね。それで、普段はそんなに高いお肉は買わないけど、雨の日だから今日は1000円くらいのお肉を買っちゃおうかな、みたいな。

そうすると、普段は5ポイントだけど、今日はポイント5倍だから、なんと25ポイント! ……ってどうでしょう? ポイントだと、多い気がしますけど、1ポイント1円ですから、結局20円分しか安くなっていないんですよ。円換算をすると、あれっと思うわけです。ポイントみたいに単位を変えちゃうと、人って惑わされますからね。基本は円換算で考えると、お金が貯まりやすくなります。

ちなみに単位の話で言うと、広告で「タウリン1g配合」って見たことあります? たぶん、世の中の広告では「タウリン1000㎎配合」って言うんですよ。1gと1000mgって同じなんですけど、表現を変えることで、めっちゃタウリン多い! って思っちゃうんですよね。こんな風に、世の中には色んなトリックがありますから、ぜひ単位を変えるクセはつけておくと良いと思います。

ということで、ここまでのお話をまとめると、会計センスのポイントは3つです。

会計センスとは
・お得感という「感情」ではなく、お得という「絶対額」を考える
・自分のお金を基準に考える「金額重視主義」
・単位で惑わされない(円換算で考える)

会計って、そもそも人を冷静にさせるツールなんです。皆さんの中に、家計簿をつけている方もいるかもしれませんが、そういう会計のツール自体は、人を冷静にさせることができます。感情で動くことほど、損をしますし、失敗します。

できるかぎり損をしない投資法とは

では最後に、お金を動かす「投資」についてお話したいと思います。投資って、いろいろありますよね。債券、投資信託、株式、外貨、不動産、仮想通貨……。こんなこと言うと、僕の信用は一気になくなりそうですけど(笑)、僕は昔、FXで5000万円を溶かしたことがあります。まあ失敗談は糧にできますからね。僕の失敗を踏まえた上で、できる限り損をしない投資について話したいと思います。

そもそも投資って、簡単に言うと、安く買って高く売れば儲かりますよね。そして、分配金などをもらうこともできます。で、これをやるだけでいいんです。ようは安く買って高く売れれば良い、生活に余裕があれば、ずっと分配金をもらっておけば良いよねと。こんな幸せなことはないです。

でも、損することもありますよね。たしかに、そうなんですけど、人類もバカではないので、できる限り損をしない方法を考えました。投資自体は何百年も前からあるわけなんですが、人類が発見したんです。それも結構最近に。20世紀の半ば、第二次世界大戦中に、これじゃない!? っていうのが決まるんです。

それが「長期・積立・分散」です。長期的に積み立てて、投資先を分散すればいいんじゃない、と。ベタなんですけど、これを人類が発見するのに意外と時間がかかっているんですね。発見してから70年とか、まだそれくらいなんです。では、長期的に分散して積み立てた実例を見てみましょう。

たとえば、1991年1月から毎月5000円を日経平均に投資したとしましょう。日経平均は、上場企業の中から業種などのバランスを考慮して選んだ225社の平均株価のことです。なので、日経平均に投資すること自体が分散になりますね。
さあ、これが30年後にどうなったでしょうか。

ちなみに30年で積み立てた総額は180万円(月5000円×12ヵ月×30年)です。この180万円がどうなったかというと……なんと341万円になってます! 利益は161万円ということで、1.9倍になりました。

なぜこうなったかというと、下がっているときにも買い続けているので、株価が少しでも戻ると、下がった時にたくさん買えていた分からどんどん利益が出るんですよね。株価は下がったり、上がったりと波があるので、長い目で見て、その波が戻った時に売れば良い、という感じです。この長期的に分散して積み立てる投資法を「ドルコスト平均法」と言います。

ちなみに下がっているタイミングで売ると、損します。ただ、冒頭で言いましたけど、世界成長率がだいたい3〜5%プラスなわけですから、基本的に、長い目で見れば右肩上がりなんですよね。日本みたいに30年間で元に戻るみたいなケースでもプラスになるというのが、この「長期・積立・分散」の不思議なところです。

いやあ、元に戻ったからでしょ。元に戻らなかった場合どうなるの? と思う方もいると思います。

では、もう1問。毎月1万円を10年間投資したとしましょう。それが40%下がって、80%までしか戻りませんでした。10年後、投資金額はどうなりますか?

この場合、積立総額は120万円(月1万円×12ヵ月×10年)ですが、なんと、評価額180万円になりました! 当然、これも6年目の下がっているタイミングで売ったら損して終わりですけど、8年目、9年目くらいでイーブンになって、10年目で1.5倍になると。これが人類が発明した、ドルコスト平均法というものです。

つまり、損をしにくい投資法は、長期的に積み立てて分散していく方法です。たとえ下がって、完全に元の株価に戻らなかったとしても、プラスになるタイミングはあります。そして毎月投資をするということが大事です。毎月ってことは、そう、天引き(自動積立)を使う方が多いと思います。天引きは、自然とお金が貯まるといいました。長期で分散して積み立てていく投資法なら、お金が貯まります。そして、結構高い確率で増える、というのが今回のお話でした。

まとめ

というわけで今回は、ライフプランニングを考える上で大切な「お金」との向き合い方について、お話しました。中でも投資は難しく思われる方もいるかもしれませんが、あくまでも仕組みの問題です。今一番有利な制度、もしくは一番自分に最適化された制度をいかに選択できるかで、投資の良し悪しは変わると思います。なので、これを機に、お金や投資の仕組みを勉強して、ご自身のライフプランニングに活かしていただけたら嬉しいです!

それでは、今回はこのへんで! ば~いば~い!