テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、岸田首相が力を入れる「デジタル田園都市」に関するニュースの裏側についてご紹介します。
光ファイバー計画目標を前倒しへ
総務省は3月29日、岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けたインフラ整備計画を公表しました。
光ファイバーについては、当初目標としていた「2030年までに世帯カバー率99.9%」を「2027年度末まで」に前倒しする方針。2023年度末の5G人口カバー率の目標も、当初の90%から95%に引き上げました。具体的には、新たな5G用周波数の割当や法改正による制度整備、補助金・税制措置による支援などを実施する予定です。
また、データセンターの6割程度が東京圏に一極集中している状況を踏まえ、今後5年程度で地方拠点10数ヵ所を整備していく見込み。さらに日本を周回する海底ケーブル(デジタル田園都市スーパーハイウェイ)を3年程度で完成させるとともに、海底ケーブルの終端である陸揚局の地方分散を促進します。
総務省(500億円)と経済産業省(526億円)の補助金により大規模データセンターは最大5~7ヵ所程度、陸揚局は数ヵ所程度が整備可能とのこと。本補助による整備を呼び水として、民間事業者による地方でのさらなるデータセンター整備も期待されます。
光ファイバー・5G関連に追い風か
あらためて関連銘柄をチェックしたいところです。注目の筆頭は、電線御三家の一角で世界2位の光ファイバーメーカーである「 古河電気工業 」。KDDI総合研究所らとマルチコアファイバーを用いた光海底ケーブルの研究開発にも取り組んでおり、3月28日には既存システムの7倍程度まで容量を拡大できる可能性が確認されたと発表しました。また、今回のインフラ整備計画の1つにある「Beyond 5G」、いわゆる6GについてもNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)の委託研究基幹課題を受託しています。
次点は「 ベイシス 」です。モバイルエンジニアリングサービスでは5Gなど通信インフラの構築から運用監視・保守までを担い、ドコモを除くすべてのキャリアから保守業務を受託しています。通信キャリアの旺盛な5G関連投資により、今2022年6月期第2四半期(2021年7~12月)は前年同期比43%増収、同68%営業増益と大きく伸長。ガス・電気業界におけるスマートメーター案件も想定以上の推移となり、四半期売上高は過去最高を更新しました。
5G向け計測機器の「 アンリツ 」や、基地局のインフラシェアリングで先行する「 JTOWER 」、海底ケーブル用光部品で世界トップシェアの「 湖北工業 」なども見逃せません。
今後の「デジタル田園都市国家構想」に関するニュースに注目していきたいですね。
(出典:日本証券新聞)