インフラ輸出の柱に! 「遠隔医療」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「遠隔医療」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する16銘柄の平均上昇率は3.0%と、利益確定目的の売りに押され3週ぶりに下落した東証株価指数(TOPIX、1.9%下落)に対して「逆行高」となりました(4月1日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい5銘柄とその背景について解説します!

新型コロナの新規感染者数、「第7波」の兆しも

3月21日、政府は病床使用率の落ち着きや、変異型「オミクロン型」の重症化率が低いことなどを背景に、新型コロナ対策の「まん延防止等重点措置」を約2カ月半ぶりに全国的に解除しました。

しかし、国内の新規感染者数は、2月上旬をピークとした減少傾向は反転し、足元では増加に転じ「第7波」の兆しが出ているとの見方もあります。さらには、海外では、中国上海でロックダウン(都市封鎖)が行われるなど、依然として安心できる状態にはありません。

「3密」回避、マスク着用、手洗いなど個人でできる感染拡大に向けた取り組みはもちろんですが、発症後の患者さんや医療従事者の方々の間で進められる、安全で効率的な医療体制の構築も世界的に望まれるところです。

インフラ輸出で「遠隔医療」を新たな柱に

そういったなか、「経済産業省は日本企業によるインフラ輸出を後押しする」と一部で報道されました(3月15日付日本経済新聞)。政府は、「インフラシステム海外展開戦略(令和3年6月改定版)」で、海外でのインフラ受注額を2025年までに34兆円(20年比4割増)にする目標を掲げています。

報道によると、特に遠隔医療やドローンによるエネルギー施設の点検などをその新たな柱にするとしています。特に、距離が離れた場所にいる患者さんと医療機関の間で、インターネットなどを利用して行われる医療行為である遠隔医療は内外でニーズが大きいと考えられます。

国内で第7波の懸念が出てきていることや、海外でロックダウンが行われていることに加え、「遠隔医療」をインフラ輸出の柱の一つにすると報道されたことで関連銘柄を物色する動きが広がっています。規制緩和による普及の後押しも、市場の関心を集めています。

医療機関のDX支援で共同事業を検討【メドピア】

上昇率首位の「 メドピア 」はインターネット上の医師・薬剤師向けコミュニティサービスを中心とした「集合知プラットフォーム事業」などを手掛けています。3月22日には医薬品卸のアルフレッサホールディングスの子会社と医療機関のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する共同事業の検討を始めたと発表し、業績拡大への期待を誘いました。

2022年9月期の純利益は前期比36%増の17億円、売上高は41%増の105億円と大幅な増収増益を見込んでいます。コロナ禍をきっかけに需要が拡大している製薬会社の医薬情報担当者(MR)と医師をオンラインで結びマーケティングを支援する事業や企業向けの健康管理クラウドサービスが好調で、成長が続く見通しです。

4月からオンライン診療システムの販促を開始【メドレー】

上昇率2位の「 メドレー 」は日本最大級の医療介護求人・転職サイト「ジョブメドレー」の運営やオンラインによる診療・服薬指導の仲介などを手掛けています。3月3日には4月からのオンライン診療報酬の初診料などの引き上げを受け、自社のサービスが手薄な地域を中心に関連システムの導入料を無料にする販売促進策を本格化すると発表しました。

2022年12月期の業績見通しは売上高が前期比35%増の139億円、営業利益が23%増の9億円と大幅な増収増益を見込んでいます(新収益認識基準ベース)。ジョブメドレー事業の成長が続くほか、オンライン診療事業も順調に成長すると見込んでいます。

オンライン初診は4月から恒久化

そのほかにも、病院向けウェブ型電子カルテシステムなどを手掛けるソフトマックスや、オンライン診療プラットフォームから顧客に最適なサービスを提供するオプティム保有する大規模診療データベースの患者数が順調に延びている「メディカル・データ・ビジョン( MDV )」も買われています。

遠隔医療に強みを持つ日本企業に海外で活躍するチャンスが訪れるとすれば、世界的に存在感が高まるとともに、さらなる業績拡大も期待されます。

また、国内では、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急対策として承認された初診からのオンライン診療は、4月に恒久化されています。初診料などの報酬も引き上げられ、一段の普及に期待がかかります。

話題豊富な「遠隔医療」関連株は、今後も折りにつけ市場で注目を集めそうです。

※メドレー(4480)は記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。