みなさんこんにちは! 公認会計士・税理士の山田真哉です。
先日、確定申告の手続きで、こんな質問をいただきました。
「確定申告を間違えていた場合、故意ではなくても罪になることはありますか?」
今回は、この質問にお答えする意味も含め、確定申告でやってしまいがちなミスと間違えてしまった場合の対処法をご紹介したいと思います。
確定申告における3つのミス
まず、確定申告でのミスには3つのパターンがあります。
②税金を払い過ぎたというミス
③払う税金が少なかったというミス
このようなミスに気付いたとき、みなさんはどうしますか?
じつは、確定申告の提出期限(毎年3月15日)までは、何回でも出し直しすることができます。これを「訂正申告」というんですが、基本的に3月15日までなら、何を間違えても、何度出し直しても、一番最後に提出したものが採用されます。
では、3月15日を過ぎてからミスに気付いた場合は、どうしたら良いでしょうか?
①の税額が変わらない場合は、何もせず放置するか税務署に電話する、という手段になります。②の税金を払い過ぎた場合は、「更正の請求」というものを行えば、税金が戻ります。そして③の払う税金が少なかったというのは、ある意味、脱税と同じですから「修正申告」を急いでやったほうが良いです。
税金額が変わらない場合は、税務署へ電話でOK
まず、①の税金の合計額が変わらない場合ですが、あとで紹介する「更正の請求」や「修正申告」といったものが、できません。法律上できないんですね。なので、科目を間違えたり、家族の名前や住所を間違えたりしたけど、納める税金の合計額は変わらない、という場合は、もうそのまま放置してもいいのですが、できれば税務署に直接電話してください。そうすれば、税務署の方が直してくれたり、「じゃあこういう書類を出してください」といったアドバイスをくれます。
実際に僕の会計事務所で今年起きた話なんですが、「最近引っ越したけど、引っ越し前の税務署にe-Taxを送っちゃった」というケース。しまった……と思ったんですが、引っ越し前の税務署に電話したら、税務署の方が「じゃあ新しい住所の方に送っておきますね」と言ってくれて、解決しました。
こんな感じで、税金の合計額が変わらない場合は、税務署が柔軟に対応してくれます。
「更正の請求」で払い過ぎた税金が戻ってくる
続いて、②の税金を払い過ぎた場合は、「更正の請求」を行うと税金が戻ります。たとえば、医療費控除やふるさと納税を申告し忘れてしまった、あるいは金額を少なく書いてしまった場合などは、5年以内に更正の請求を行えば税金が戻ります。この更正の請求は、あくまでも所得税の手続きになるんですが、後日お住まいの市区町村から住民税について連絡があります。そこで住民税が戻ってきたり、これから払う住民税が安くなったりします。
5年以内というのは、確定申告の提出期限から5年以内です。仮に今、2022年3月31日だとしましょう。そうすると、2021年分の確定申告は2022年3月15日が提出期限なので、5年以内で対象になります。2020年分の期限は2021年3月15日で、これも5年以内ですね。こんな感じで2019年、2018年とさかのぼっていき、2017年分は2018年3月15日が期限で対象ですが、2016年分は2017年3月15日期限で5年を過ぎているので対象外、と数えます。
ちなみに、確定申告後に昔の経費が出てきた場合は、更正の請求をせずに、今年の確定申告の経費に入れるという方法もあります。そもそも更正の請求は、税金を取り戻す制度なので、税務署が厳しくチェックするんですね。このため更正の請求をすると「なんかちょっとおかしいな、じゃあ税務調査入ろう」ってことで、税務調査が入りやすいというのが、やはりあるんですよね。
なので、税務調査が入るくらいなら、しれっと今年の経費に入れちゃおうっていう考え方があります。そんなことしていいの? と思うかもしれませんが、経費の申告が遅れるのは、単に前の年に多めに税金を納めているということなので、さほど税務署は怒らないですね。まあスルーです。
私も、何度か過去の経費を入れたパターンで税務調査を受けたことがありますが、その点を指摘されたことは一度もありません。
税理士としてオススメするというわけではないですが、そういう手もあることは、知識として持っておくと良いと思います。
ただ、これが「経費」ではなく「売上」の話ならば要注意です。「去年の売上が漏れていたので、今年の売上に入れます」というのは、本来なら去年の売上に対して納めるべき税金が今年にずれ込んだ、つまり税金を納めるのが遅れたということなので、税務署は激おこです! これはもう、絶対にしないでください。この場合は、あとで紹介する「修正申告」を行ってください。
住宅ローン控除1年目は、必ず確定申告をしよう
住宅ローン控除がある方は、1年目に必ず確定申告が必要なんですが、申告し忘れた方は要注意です。確定申告そのものを未提出だったら、5年以内に「期限後申告」というものをすれば住宅ローン控除が使えます。しかし確定申告は提出したけど、住宅ローン控除を申告し忘れたという場合は、更正の請求ができません! 1年目に申告していないとダメっていうのが、住宅ローン控除のルールなんですね。
じゃあどうするかというと、税務署長宛に嘆願書というものを作って送るしかないです。ただ、嘆願書を送ったからといって、控除の手続きをしてもらえるとは限りません。ですので、住宅ローン控除を受ける方は、1年目に絶対忘れずに確定申告をしましょう。
税金が少なかったら、早急に「修正申告」を!
それから、③の払う税金が少なかった場合は、「修正申告」を急いでやったほうが良いです。たとえば、確定申告後に支払調書が届いて売上の漏れが見つかったので、売上を増やさないといけない、あるいは配偶者の年収が100万だと思っていたら実際は200万で、配偶者控除から外さなきゃいけない、といった場合ですね。
こういう間違いが起きたら、5年以内でしたら修正申告ができます。ちなみに6年以降は時効になるので、まあ無かったことになる、ということですね。
ただ、このミスが5年以内だったら急いだほうが良いです。5年で時効と言いましたが、悪質だった場合は、7年間までさかのぼられることもあります。
加算税や延滞税がかからないケースも
修正申告をしたら、払っていなかった税金も納めるんですが、その際は当然ペナルティがあります。まず「過少申告加算税」といって、実際に納める税金にプラスで最大15%分を罰金として払います。ただし、税務調査が来る前に自主的に修正申告をしていれば、なんと0%になります。罰金が無くなるんです。だから修正申告って急いだ方が良いんです。税務調査が来ますよって通知があった時点で、この過少申告加算税がついてしまいますから、自分で気づいたら、早めに修正申告をした方が良いです。
税金が少なすぎるのは分かっていたけど、ずーっと放置してました、といったような悪質な場合は「重加算税」が課されることもあります。こちらは、実際の税金にプラスで35%分を納めないといけません。このあたりは、故意ではなく間違えたのか、故意でやったのかで差がついています。
それから、税金を納めるのが遅かった場合は「延滞税」がつきます。税金を納める期限から2ヵ月以内は年2.4%、それ以降だったら年8.7%の延滞税がつきます(令和4年の場合)。
ただし、納める必要のある税金が1万円未満だったら切り捨てになります。仮に税金が9999円だったら延滞税は0円です。さらに、延滞税が発生しても1000円未満は切り捨てになるので、少額のミスの場合は延滞税がつかないということも覚えておくと良いと思います。
まとめ
今回は確定申告でやってしまいがちなミスと対処法をご紹介しました。とくに、税金を払い過ぎた場合の更正の請求は手間がかかりますし、税務調査を受ける可能性も出てきます。なので、手続きにかかる労力と戻ってくる税金の額を考えて、やるかどうかの判断が必要です。一方で修正申告は、分かった時点で早めにやった方が良いと思います。更正の請求や修正申告のやり方については、僕の過去の動画で解説していますので、気になった方はご覧ください。
では、今回はこの辺で! ば~いば~い!