業績安心感で見直し買い!?「造船」関連株が上昇

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株式市場で「造船」関連株が買われています。QUICKが選定する9銘柄の平均上昇率は6.0%と、ほぼ横ばいの東証株価指数(TOPIX、0.0%安)を大幅に上回りました(4月15日までの5営業日の騰落)。その中でも上昇率の大きい銘柄とその背景について解説します!

2021年の船舶受注額は前年比2.1倍に

造船業界が好調のようです。日本船舶輸出組合が1月に発表した2021年の輸出船契約実績は、前年比2.1倍の1520万総トンに膨らみました。新型コロナウイルスのワクチン接種の世界的な進展に伴い、経済活動が再開。海上の荷動きが活発になりコンテナ船などの需要が回復しています。

また、日本政府は2021年11月に国際海運の温室効果ガス排出量について「2050年までに全体としてゼロ」を新たな目標に掲げました。これを背景に、LPG(液化石油ガス)燃料を採用し排気ガス中の硫黄酸化物(SOx) や二酸化炭素などの排出量を大幅に削減できる船や、石油の代替燃料の有力候補のひとつであるアンモニア運搬船などの需要が高まっています。これらは日本の造船需要を支えており、「造船」関連株の業績安心感につながっています。

30年度までにコンテナ船に約2.4兆円を投資へ

個別企業では、「 日本郵船 」と「 商船三井 」、「 川崎汽船 」が共同出資するコンテナ船事業会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」が3月23日に、2030年度までに200億米ドル(2.4兆円)以上の投資に踏み切ると発表しました。

ONEは新型コロナ禍の「巣ごもり需要」やその後の経済活動の再開で業績が急拡大しており、脱炭素の目標達成とシェア拡大の両立を目指しています。新造船需要が今後も継続的に高まるとの期待から、「造船」関連銘柄には収益拡大に期待した買いが入っています。

日本郵船からLPG燃料船を受注【川崎重工業】

上昇率2位の「 川崎重工業 」は、船舶のほかにも鉄道車両や航空機、発電機、二輪車、ロボットなどを手掛けています。4月18日には日本郵船から大型のLPGと液化アンモニア運搬船を受注したと発表しました。LPGを燃料とする新型船としては13隻目の受注となります。

同社は2月2日には、2022年3月期の営業損益を460億円の黒字と従来予想から60億円上方修正しています。前期の53億円の赤字から急回復する見通しです。コロナ禍をきっかけとしたアウトドアブームが追い風となり二輪車事業が好調なうえ、航空宇宙部門の赤字幅の縮小も利益を押し上げます。売上高は1兆5500億円と4%の増加を見込んでいます(会社予想)。

船舶エンジン国内トップ企業を傘下に持つ【三井E&Sホールディングス】

上昇率4位の「 三井E&Sホールディングス 」は、2021年10月に造船事業から撤退していますが、傘下の三井E&Sマシナリーは船舶エンジンの国内シェアが5割を超えるトップ企業です。3月31日には事業強化に向けて、IHI傘下のIHI原動機から船舶用の大型エンジンを買収すると発表しました。

一方で、持ち分法適用会社となった三井海洋開発については、海洋資源開発事業の洋上設備で修繕費が膨らんだ他、建造中の設備でも作業の遅延などが発生しました。関連する損失の計上で22年3月期の営業損益は40億円の赤字を見込んでいます(会社予想)。

環境負荷の低い次世代船の開発を注視

そのほかにも、「 三菱重工業 」や「 日本製鉄 」も買われています。三菱重工業は3月29日に合弁会社が、船舶にLNG(液化天然ガス) を供給する「LNGバンカリング船」の受注を発表、日本製鉄は大型コンテナ船向けの鋼材を手掛けていることなどが手がかりとなったようです。

コンテナ船やLNG輸送船などの需要は旺盛で、造船業界の活況はしばらく続きそうです。ただ、鉄鉱石や原料炭の価格は高騰が続いており、船舶の材料となる鋼材価格も上昇しています。環境負荷の低いアンモニアや水素を燃料とする次世代船の開発もテーマとして注目されそうです。

※名村造船(7014)は記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。