「相手が自分を“意識している”確率を、数学的に推測してみる」を読む
春は気温の変化が不安定ですね。少し遅くなりました。久しぶりの連載です。にしても本当に気温の上がり下がりがめまぐるしい日々で、変化する気温を乗り切るのに、ちょうどいい服の組み合わせが問われる毎日……。もしかしたら株価の世界も同じかもしれません。今回の自由研究は、そんなめまぐるしく変化する株価のリスクを少しでも減らす“株の組み合わせ”について考えてみます。
株価のリスクとリターンとは
このお話に入る前に、そもそも株価における「リスク」と「リターン」というのはなんなのか、前提が分からないことには話が進まないですよね! ……そんなこともないですか? 数理系の世界に肩まで日々浸かっている身としては、「言葉の定義をはっきりさせてからお話を始める」ことが染みついており……。
というわけで、この記事では、株価における「リスク」を「明日明後日に株価が大きく変化すること(変動・分散)」として、「リターン」は「明日明後日に平均的に期待される利率(期待値)」だとします。すると、下図の例で示した青線のように、「今日より大きく値上がりするわけじゃないけれど、その値上がり率がある程度確実な場合」はローリスク・ローリターン、その逆はハイリスク・ハイリターンとなります。
2つの株を組み合わせてみる
さて、今回の自由研究の目標は、「2つの銘柄を組み合わせて、いちばんローリスク・ハイリターンになる理想的な株の配分を探してみよう」というものです。気温の変化が激しい日々に厚手のジャンパー1枚では調整が利かないように、1銘柄ではその企業の状況だけで株価の騰落率(値上がり率・値下がり率)が左右されてしまいます。春の三寒四温を乗り切るシャツとパーカーと薄手のダウンのような、いい組み合わせを株でも探してみましょう!
では今回も具体的に幾つかの銘柄をもとに株価の自由研究をしていこう! ……と思うのですが、記事の上とはいえ特定の銘柄を「ハイリスク・ハイリターン」や「ローリスク・ローリターン」と呼称するのは(勝手ながら)少し憚(はばか)られました。なので、今回の自由研究では、
・とある「ローリスク・ローリターン」な株B
というふたつの株を、皆さんの心の中で自由に用意してみてくださいませ。少し分かりにくくはなってしまうのですが、心の中で選んでもらったこの2銘柄を何円ずつ持つと良いのか探してみようと思います。下の図のように視覚的にお話を整理すると、左上が「ハイリスク・ハイリターンな株銘柄A」、右下が「ローリスク・ローリターンな株銘柄B」、そしてこのふたつを上手く組み合わせて、右上のローリスク・ハイリターンな組み合わせを目指します。
ローリスク・ハイリターンの作り方
少し余談なのですが、このお話を考えだしたとき、僕のアタマの中では「株Aと株Bを何円ずつと配分を変えたところで、(下の図みたいに)間をつなぐように変化するだけじゃないの……?」と思っておりました。線の上を変化するだけならばあまりローリスク・ハイリターンの理想形にはなりませんし、これではあまり面白くない(旨みがない)ですよねえ。
ただ安心してください、実は、2つの株の組み合わせだけで、真っ直ぐ結ぶよりも「ローリスク・ハイリターンの理想形」に近づく方法があるんです! これに気づいた時あまりに面白かったので、この面白さが少しでも読者のみなさんに伝わったら嬉しいなあと思い、今回の記事にしてみたわけです。
では、どうすれば理想形になるのか? という気持ちを抑えてまず一旦、上図のようにならない理由を探ってみたいと思います。そもそも上図のように「株Aと株Bの配分で、間をつなぐように変化する」のは、実は「株Aと株Bの株価の上がり下がりのタイミングが同じ場合」にだけ成り立つ話なんですね。そうです、隠れた前提条件がいたわけです。やっぱりお話を進めるには何事にも前提の確認が大切ですね。
ということで、では反対に「株Aが上がると株Bが下がるような真反対の組み合わせ(逆相関)」の場合、株Aと株Bの配分次第でどう変化するのかを示したのが下の図です。ドン!
どうですか! 真っ直ぐ結ぶよりも「ローリスク・ハイリターンの理想形」に近づいていますよね! これは、「期待リターンは株の分配比だけで決まるけれど、変動リスクは株同士の相性(相関性)次第で打ち消しあうことがある」ということです。もっと詳細に、株Aと株Bの相性次第で、このように変化するというのを図に起こしたのが次の通りです。株同士の相性(相関性)がかなり大切なことが伝わりますねえ。
少しだけ銘柄に触れてみる
折角なので最後に少しだけ、具体的な株銘柄同士の相性(相関性)について触れてみます。例えばいま僕の持っている「 商船三井 」について、あれこれ色んな企業との相関係数を調べてみたところ、同業種の「 日本郵船 」との相関係数が0.92(4月6日時点)と「ほとんどぴったり同じ値動き」をするようです。また調べた範囲では、例えば「 博報堂DYホールディングス 」との相関係数が0.12(4月6日時点)と、「ほとんど独立した値動き」をすることが分かりました。
現実的なお話、ほとんどの日本株がおおむね日本や世界の景気やニュースに沿った値動きをします。このため相関係数−1に近い「ほとんど反対の値動き(逆相関)」をみせる銘柄は珍しく、相関係数0に近い「ほとんど独立した値動き」の銘柄が見つかれば、十分良い組み合わせが期待できると思われます。
さて、今回もこの勝手気ままな自由研究にお付き合いいただきありがとうございました。今回は、最後に触れたいま僕の持っている商船三井と組み合わせが良い博報堂DYホールディングスの株を10000円分買いたいと思います。次回もよろしくお願いいたします。