円安メリットで再評価 「自動車」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「自動車」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する8銘柄の平均上昇率は4.2%と、小幅に反発した東証株価指数(TOPIX、0.5%高)を大幅に上回りました(4月22日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい5銘柄とその背景について解説します!

一時129円台!20年ぶりの円安水準

円の対ドル相場は4月に一時1ドル=129円台まで円安・ドル高が進み、2002年4月以来20年ぶりの安値を付けました。米国の中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)が物価上昇への対策として金融政策を引き締め始めました。一方、日本銀行は金融緩和を維持する姿勢を鮮明にしており、日米の金利差が広がるとの観測から、円売り・ドル買いが出やすくなっています

5割強を輸出する自動車業界

日本の自動車メーカーは度重なる円高に対応するため、外国為替相場の影響を受けにくい現地生産を進めてきました。とはいえ、依然として日本の自動車業界は輸出産業であることに変わりはありません。日本自動車工業会によると、2021年の乗用車の生産台数は662万台で、このうち5割強の337万台が輸出されました。

円安局面では海外での価格競争力が強まるうえ、為替差益も発生します。2022年3月期末の円相場は121円63銭で、21年3月期末から11円近い円安・ドル高でした。5月中旬から本格化する自動車メーカーの決算発表では、強気の2023年3月期見通しが示されるのではとの期待から自動車関連株が買われています。

国内生産の8割強を輸出【SUBARU】

上昇率首位の SUBARU は2021年に国内生産47万台のうち約8割にあたる39万台を輸出しました。

2022年3月期の会社予想営業利益は、5月の期初時点では2,000億円(ドル円為替前提108円)。しかし、半導体不足や新型コロナウィルス感染症拡大による生産調整などから、第2四半期決算発表時に1,500億円(同110円)、第3四半期決算発表時に1,000億円(同112円)と前期比2%減予想に下方修正されました。それでも、会社側の為替前提は保守的と受け止められ、円安による業績へのプラス効果が期待されているようです。

対ユーロなどでの円安が業績を押し上げ【マツダ】

上昇率2位の マツダ は、第3四半期決算発表時に、2022年3月期の営業利益を前期比9.3倍の820億円と従来予想から170億円上方修正しました。

メキシコ工場への生産移管を進めたマツダにとって、円の対ドル相場の下落は減益要因となる一方、ユーロ、オーストラリアドル、カナダドル、英ポンドなど米ドル以外の通貨に対する円安が増益要因となっています

5月の決算発表に注目

そのほかにも、2021年4~12月期決算で円安が474億円の増益要因となった 日産自動車 や、円安が2021年4~12月期の営業利益を323億円押し上げた スズキ 、4月26日に2022年3月期の営業損益が従来予想を170億円上回る870億円の黒字(前の期は953億円の赤字)になったもようだと発表した 三菱自動車工業 も買われています。

半導体不足や新型コロナウィルス感染症拡大などの影響による生産動向とともに、5月中旬から本格化する決算発表で開示される今期予想が注目されます。