「αの探求」で100万を1000万に〜井村俊哉さん

億り人に聞く!100万円を1000万円にする3ヶ条/ 井村 俊哉日興フロッギー編集部

「いつかは資産1億円!」とは思うけど、さすがに億は現実的じゃないかも。でも1000万なら……!? そこで「100万円で株を始めて1000万円を目指すために必要な3ヶ条」を億り人さんに教えていただきます! 第1回は資産15億円超の井村俊哉さん。「キャリアも学歴も関係ない! これをやれば1000万円!」の3ヶ条とは……?

達成感があったのは「億超え」より「1000万超え」


こんにちは! 井村さん、「1000万円を目指すための3ヶ条」を教えていただけますか? 正直「億」は私にはちょっと遠すぎる目標で……。


いいですよ! 僕自身も、まさか億という金額に到達できるなんて夢にも思っていませんでした。株を始めて間もないころ、「株で1億円稼いだ人がいる」と聞かされても「おばけがいる」と言われるのと変わらなかった。


おばけですか!(笑)


そのくらいリアリティがありませんでした。実は僕がいちばん達成感があったのは資産が1000万円に達したとき。奥さんに「ほら!」って口座の数字を見せた記憶があります。


そうなんですね! とはいえ、1000万円も簡単な目標ではありません。どうすれば1000万円に到達できるでしょうか?


100万円はなんとか用意していただかないといけないですが、今日は「これをやりきれば個別株投資で100万円が1000万円になる!」という3ヶ条を作ってきました。3ヶ条を「鉄の意志」で守り続ければ誰でも1000万円までいけます。守り切れれば、ね(ニヤリ)。

第1条 自分だけのαを探すべし


気になるような怖いような……いったいどんな3ヶ条なんでしょうか。


これです!


この3つを日々のルーティンに取り入れて、何があっても必ずやり抜くんです。順番に説明していきましょう。


ひとつ目は「自分だけのα(アルファ)を探すべし」。いきなりすみません、「α」ってなんでしょうか?


「平均よりも秀でた部分」ですね。株式投資なら日経平均やTOPIXなどの指数に連動した投資信託へ長期投資すると平均的なリターンが得られます。指数の平均リターンが年7%だとすれば、それを上回る部分がα(超過利益)です。「平均じゃ物足りない! もっと利益がほしい!」と思ったら自分に何か秀でた部分がないといけないですよね。

これがαです


たしかに……! なんとなく「指数より儲けたい!」と願ってるだけじゃだめですね。


個別株投資をするなら、まずは「自分は平均の上を行くんだ!」という意志、覚悟が必要です。インデックス投資なら市場平均のパフォーマンスがとれる。つみたてをすればバリエーションやタイミングを考えなくていい。そうではなく個別株に投資をするということは、マーケット参加者より秀でた何かが必要なんです。


個別株投資を選ぶというのは何たることかよく理解できました。


でもインデックスも万能ではなくて、構成銘柄にはバラツキがあります。いい会社、悪い会社、成長企業、衰退する会社――。それを品定めせず、まとめ買いするのがインデックス投資です。


ひとつひとつ品定めして、いいものだけを厳選して買うのが個別株投資なんですね。


とくに最近はみんながインデックス投資に流れる「インデックス至上主義」の風潮もあり、「本来評価されるべき会社があまり評価されていない」といったことも目立ちます。なので、「αを取るんだ!」という自覚を持って投資すれば、平均を上回ることもできる。ミソは「αの取り方は人それぞれ違う」ということです。


井村さんの決算分析をはじめ、www9945さんなら「街角ウォッチ」、テスタさんならトレード――。フロッギーに出てくださった個人投資家の皆さんもそれぞれの「武器」を持っていました。それがαの源泉なんですね。


僕ならば「マーケットがつけた値段(株価)には間違いがある」という前提のもと、「本来は100億円の価値があるのに50億円で取引されているような銘柄」を決算書や開示情報などから見抜くことでαを生み出しています。でもテスタさんのαはまったく違うし、桐谷さんは株主優待にαを見出していますよね。αの取り方は投資家によって全然違うんです。

「ワクワク」がポイント! 億り人のマネをしてみつけよう


どうしたら「自分のα」が見つけられるんでしょうか?


いろんなやり方を試してみること、そして、向いてないことを止めることですね。実は、僕も昔は短期トレードしていたことがありました。


井村さんにデイトレードのイメージはまったくありません。意外すぎます。


僕には向いていませんでした……。毎日コツコツ取引して半年で200万円積み上げて、ところが翌日に一度のポカで全部失ってしまうことがある。あのときの神経の死に方たるや……脳の神経がプチプチ死んでいく音が聞こえるんですよ。

プチプチ……


それは辛そうですね……。


本当に辛くて深夜ひとりで近所を徘徊していましたもん。そこにワクワクするような気持ちはありませんでした。だからポイントのひとつは「自分がワクワクできるやり方かどうか」。デイトレードは僕には合わなかったですが、決算書はワクワクしながら読めた。自分が興味を持てる、モチベーションが高まるものに取り組むことですね。


どんな方法が自分に合うかはわからないから、いろんなやり方を試して探す、ということですね。フロッギーにはいろんな億り人さんの投資手法が載っています。こうしたものを参考にするのはアリですか?


めちゃくちゃいいと思います! いろんな人が実体験を話してくれているから、参考になりますよね。試してみてワクワクしなければ違うやり方でやってみる。そうやって「自分だけのα」を探すのが1ヶ条目です。

第2条 αを得るための苦行を設定すべし


2ヶ条目が「αを得るための苦行を設定すべし」。


苦行と言われると、腰が引けてしまいます……。


マーケットの平均を上回るためには苦行、修行が必要です。僕の例で言うと、発表される決算など適時開示情報(上場企業が証券取引所を通じて開示する重要な情報)はすべて目を通します。


「すべて」ってどのくらいあるんですか?


この間の月曜日には600社くらいの決算発表がありました。業績修正やM&Aもあわせると優に1000通を超える開示が出てきたんです。それを全部、当日中に見るのが僕の苦行。その日は15時から始めて23時、24時くらいには終わりました。


それを必ず毎日やるんですね。たしかに苦行です。


風邪を引いても忙しくても必ずやり切るのがルーティン。もっと言うと、適時開示に載っていない情報にも目を通しています。中期経営計画の策定、株式取得、月次売上――こうした大切な情報を適時開示情報として出さず、自社のホームページだけで更新する会社があるんです。


適時開示情報なら東証のTDネットなどを通じて、その日発表されたものをすべてチェックできます。でも自社ホームページでの更新だと、全上場企業をチェックするのは難しくないですか?


なのでキーワードを指定すると、関連する更新情報をメールで通知してくれるサービスを使っています。「中期経営計画」や「株式取得」「M&A」、それに僕が最近監視している資源銘柄に関連する「天然ガス」や「LNG」「石炭」といったワードも登録しています。こういう便利なサービスはありがたく活用させてもらっています。

「やった感」だけではダメ! アウトプットすべし


そういえば今日もいらっしゃるとき、スマホで情報を見ていましたよね。


今日の開示情報を見ていたんですが、その中で「 エフティグループ 」という会社の開示に引っかかっていました。子会社の株を、子会社の代表取締役が社長を務める別の会社へ譲渡するというんです。でも肝心の譲渡価格が書いていなかった。「どうして? 事業や業績にどんな影響が?」と考えながら歩いていました。


情報を読むだけでなく、業績への影響を想像するんですね。でもたくさんの会社の情報を一度に見ていると忘れてしまいそうです。


そこもポイント。「苦行としてやったことは必ずアウトプットすべし」です。アウトプットしないと忘れてしまって「やった感」以外、何も残らないことが往々にしてあります。


井村さんにとってのアウトプットは?


僕は気になった情報は「Evernote」にメモしています。この銘柄メモに情報を積み上げ、磨き続けることが日々の苦行の一つです。


Evernoteならパソコンからでもスマホからでもアクセスできるので通勤途中にも作業できそうです! Evernoteにはどんな感じでメモしているんですか?


銘柄ごとにファイルを作っています。今は1500社くらいありますね。例えば、これは「 THK 」という機械部品メーカーのメモです。昨年11月の業績修正で「世界的な物流事情や輸送運賃の上昇に加え鋼材価格の上昇、及び輸送機器事業における半導体などの部材不足による自動車の減産や鋼材価格の上昇などにより、売上収益、各利益項目について前回予想を下回る見込みとなりました」とあった箇所をコピペしてEvernoteに貼りつけています。

出所:THK 2021年11月11日 業績予想の修正に関するお知らせ


どうしてこの文章を?


この銘柄に限らず「業績修正の理由」を銘柄メモに格納することが多いんですが、どういう変化が起こると業績が上下するか端的にまとまっているからです。この文章を読むと、主に自動車産業の動向に業績が左右されること、また、原材料高や輸送費を直ちに価格転嫁できてはいない可能性が読み取れます。反対に自動車産業が挽回生産を実施し、価格転嫁が通ればTHKの業績が一気に向上するかもしれない、ということですよね。


増益や減益の「理由」から、何が業績を向上させる要因なのか、見つけるんですね!


そうです。投資家仲間と情報交換していて「THKはどう?」と話題に出たときにもメモを見れば「あそこは自動車の生産と価格転嫁のタイミングがポイントだよね」なんて話せます。

Twitterで「分析のアウトソーシング」


Evernoteにレーティング(格付け)のメモもありますね。


僕、海外メディアの記事を日々10〜20くらい読み漁っていますが、投資情報系では、証券新聞や株式新聞を読んでいます。証券会社のレーティング情報がいち早く載っているのもお気に入りのポイント。気になる銘柄については、レーティングと同時に出てくるアナリストレポートも取得して読んでいます。

カエル先生の一言

SMBC日興証券は、レーティングやアナリストレポートを無料で公開しています。口座をお持ちの方はどなたでもご覧いただけますのでぜひご活用ください。
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ツイッターはどうですか?


ツイッターにはめちゃくちゃ助けられています。自分の3割はツイッターでできているといっても過言じゃないほど。海外の投資家やアナリスト、その道の専門家の情報が取れますし、銘柄分析を呟いている人もいます。全銘柄を自分で分析するのは不可能なので「この人はしびれる分析をするな」という人をフォローし、いい分析はコピペしてメモしておくんです。分析のアウトソーシングですね(笑)。


適時開示情報、IR情報、海外メディア、アナリストレポート、ツイッター――。いろんな情報源を見ているんですね。


大変ですが、これを3年続ければ1000万円稼ぐスキルが身につくのではないですかね。割とガチでそう思っています!

第3条 リスクを取りPDCAを回すべし


3ヶ条、残るひとつは?


3ヶ条目は「リスクを取りPDCAを回すべし」。


PDCAは「プラン(計画)→ドゥ(実行)→チェック(評価)→アクション(改善)」の4つのサイクルで業務を改善していく方法ですね。


まずリスクからいくと、「ほんのちょっとだけムリ」をして投資する。リスクを取りすぎてはいけませんが、ほんのちょっとだけ負荷をかけて投資すると尻に火がつく。それがモチベーションになります。「開示資料、1年分読んだしこんなもんで……いや頑張って3年分読もう!」というように自然と調査に熱が入ります。


「なくなってもいいや」と思う金額だと、関心も薄れてしまいそうですもんね。


PDCAは仕事で使っている人もいると思いますが投資でも同じです。投資のアイデア、ストーリーを組み立てて、リスクを取って実行する。儲かっても損をしても結果を検証し、改善する。投資の成果だけでなく苦行、日々のルーティンも自分にフィットするようにPDCAを回して改善していくんです。


続けているうちに企業の変化にも敏感になりそうです。


定点分析していると「好調」と書かれていたのが「極めて好調」に変わったなと気づけたりする。そうしたら、その会社のIRに電話して聞いてみるんです。「極めて」ってどのくらいですか? と。今まで得てきた情報が自分の中で咀嚼され1本のストーリーにつながる瞬間が出てきます。


そうやってストーリーが見えてきたら、上級者になった自分を実感できそうですね。


株を取引していると必ず損をする場面があり、メンタルが傷つくことがあります。それに耐えてPDCAを回し続けることでレジリエンス(心の回復力)が鍛えられていく。それは仕事のストレスを減らすことになるかもしれませんよね。


たしかに! 苦行に耐えるくらいにメンタルを鍛えられれば、仕事上のストレスにも耐えやすくなりそうです。


株式投資ってドラゴンボールに出てくる「精神と時の部屋」のようなものですよね。


地球の何倍もの重力がある修行部屋ですよね。


精神と時の部屋で修行している間はとても大きな負荷がかかります。でも、それに耐えて時と精神の部屋から外へ出たときには強くなった自分を実感するはずです。

会社員のαは自分の勤務先にあり!?


これから始めようという人に、最初はこんなやり方で、というヒントはありますか?


兼業の人でもサクッと取りやすいαもあるんです。仕事しながら投資する兼業の人なら自分の業界のことを一般の投資家よりも知っていますよね。


たしかに! 私も証券業界のことなら普通の人よりは詳しいと思います。


半導体メーカーに勤める人なら自分の業界に詳しいはずですし、半導体業界に特化して銘柄を調べαを取る。仕事にかぎらず趣味でもいいですよね。釣りが死ぬほど好きな人なら「 シマノ 」や「 グローブライド 」といった釣り具メーカーに特化して研究してもいい。キャンプ好きな人なら「 スノーピーク 」のことはアナリストよりも詳しいかもしれない。


趣味を投資に活かすと銘柄を調べるのもワクワクしそうです。


今回はあえて苦行という言葉を使いましたが、苦行も続けるとだんだん楽しくなるし、苦しいか楽しいかは考え方でも変わります。「10円安い卵を買いに遠くのスーパーへ行く」と考えるとつらいですが、「隣町までウォーキングする、そのついでに安い卵を買う」と考えれば楽しくなりますよね。


井村さんもやっていることはとても大変そうなのに、株の話をするときはとても楽しそうですよね。苦行を苦行と思わず楽しみながらやっているのを感じます。私もその域に達するくらいに楽しめるようになりたいです。今日はありがとうございました!

スノーピーク(7816)は記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。