ツイッター買収 経営陣がマスク氏の提案に応じた理由

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、イーロン・マスク氏による米ツイッター買収に関するニュースの裏側についてご紹介します。

投資家締め出し、伸びしろ追求へ

米EV(電気自動車)大手テスラのイーロン・マスクCEOが、総額440億ドル(約5.6兆円)で米ツイッターを買収すると発表しました。そのうち210億ドルを自己資金で賄うとのこと。

買収の意図をマスク氏は、「言論の自由は民主主義の基盤であり、ツイッターは人類の未来に不可欠な問題が議論されるデジタル公共広場だ」とし、投稿管理・制限がどんどん強まっているツイッターを、規制のない何でも書き込める場にしていく意思を示しています。

にわかに注目される「ツイッター関連株」

それに対して複数の人権団体が、ヘイトスピーチが横行すると懸念を表明しています。そんなこともあって、ネット炎上や風評被害対応を行う「 エルテス 」や、ネット監視の「 イー・ガーディアン 」「 アディッシュ 」といった会社がツイッター関連銘柄と言われるようにもなりました。

「マスク氏のツイッター買収では、この表現の自由と人権の問題がクローズアップされているが、ポイントとしてもう一つ、上場廃止にも注目したい」(ITジャーナリスト)。

ツイッターのようなテック企業は、技術開発投資の負担が大きい傾向があります。その中でツイッターは、その収入のほとんどが広告収入ですが、ツイッターは英語で280文字、日本語なら140文字までしか書き込めないので、短時間で読むことができます。そのため広告が目に入る時間も短く、宣伝効果が低いと評価されているのが現状です。15~30秒程度の動画広告を流せるユーチューブと比べれば、ツイッターの宣伝効果の低さは察しがつくところ。広告収入に限界があり、開発負担がかさむため、赤字決算も多くありました。

経営陣がマスク氏の買収に応じた理由

「そうした業績に投資家筋は注文を付け、短期で利益を上げるよう求める。それがツイッターの悩みだったが今回、マスク氏は上場廃止を掲げた。それにより短期の成果を求めず、じっくりとツイッターのビジネスモデル再構築を図れる。経営陣がマスク氏の買収に応じた理由がそれだ」(前出・ジャーナリスト)。

マスク氏としては数年掛けて態勢を整え、その上で再上場を狙うということなのでしょう。月間利用者数を見ても、フェイスブックは25億人、ユーチューブは20億人、インスタグラムが10億人という規模の中、ツイッターは3億人規模と1ケタ違います。ツイッターの弱点でもあるが、見方を変えれば伸びしろがあるということ。マスク氏の狙いはこんなところにあるのではないでしょうか。

マスク氏の登場でツイッターにスポットが当たり、そのつぶやきも騒がしくなりそうです。

(出典:日本証券新聞)