コロナ規制緩和で需要回復? 「引っ越し」関連株が上昇

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株式市場で「引っ越し」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する5銘柄の平均上昇率は5.9%と、東証株価指数(TOPIX、2.1%高)を大幅に上回りました(5月6日までの5営業日の騰落)。今回は引っ越し関連の5銘柄と株高の背景について解説します!

3月は物流大手2社の取扱個数が増加

4月6日に、ヤマトホールディングスが発表した3月の小口貨物取り扱い実績は1億9400万個と前年同月に比べ7.0%増えました。また、4月8日にSGホールディングスが発表した3月の宅配便などの取扱個数も1億3200万個と前年同月に比べ2.0%増えました。物流大手2社による3月の実績が好調だったことから、引っ越し関連銘柄に物色が向かいました

今年の春は、3年ぶりに緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行動制限がありませんでした。企業がこれまで抑制していた引っ越しを伴う人事異動を再開させており、4月に入社した新入社員などの配属による引っ越しの需要も見込めそうです

梱包用段ボールの材料、3年ぶりに価格上昇

コロナ禍でリモートワークが定着するなど、新しい働き方が広がり、郊外への移住が増えていることも引っ越し需要を支えるとみられます。日本経済新聞によると、通販向けの需要拡大が続いたうえ、引っ越し向けの需要増加などを背景に、段ボール箱の材料になる「ライナー」の取引価格が3年ぶりに上昇しました。

4月の売上高が好調な滑り出し【サカイ引越センター】

上昇率首位の「 サカイ引越センター 」が5月6日に発表した2022年3月期決算は、売上高が前年比3.5%増の1039億円、営業利益が同3.1%減の108億円でした。売上高は単価上昇・件数増加により好調だった一方、外注費や賃料などが負担となったようです。

ただ、会社側は23年3月期の売上高を前年比2.6%増の1065億円、営業利益は同1.1%増の109億円を見込んでいます。また、同日発表した4月の月次売上高(速報)は前年同月比6.6%と好調な滑り出しとなっており、順調な業績推移が期待されます。

自動車販売や物品販売なども展開【セイノーホールディングス】

上昇率3位の「 セイノーホールディングス 」は、物流事業が売上高全体の7割を占めています。そのほかにも、新車や中古車を販売する自動車販売事業や、主に燃料・紙を販売する物品販売事業も手掛けています。物流事業では鉄道輸送を活用するなど、ドライバーの不足や燃料高に直面する中で効率と収益性の向上に取り組んでいます。

会社側は、2022年3月期の売上高を前年比2.5%増の6070億円、営業利益は同20.1%増の295億円と予想しています(決算発表予定日は5月13日)。燃料高や車体不足の影響で、自動車や物品販売事業は苦戦したとみられますが、主力の物流事業が大幅な増収増益となり全体の収益を押し上げたもようです。

今期の見通しや売上動向を要チェック

そのほかにも、4月15日に固定資産売却に伴う特別利益を2022年12月期第2四半期に計上すると発表した「 NIPPON EXPRESS ホールディングス 」、4月28日に発表した2022年3月期決算で営業利益が前年比53.1%の大幅増益となった「 SGホールディングス 」、5月2日に自社株取得を発表した「 ヤマトホールディングス 」も買われています。

国内の引っ越し事業は好調な一方、物流事業は原燃料、為替、景気などグローバルな経済動向の影響を受けやすい側面もあります。決算発表で示される今期の見通しや、月次で開示される売上動向などが注目されそうです