コロナ乗り越え受注好調!「総合重機」関連株が上昇

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プラント、橋、航空機といった大型の構造物を製造する「総合重機」関連銘柄が、株式市場で買われています。QUICKが選定する6銘柄の平均上昇率は3.3%と、欧米の金融政策への警戒感などから大幅安となった東証株価指数(TOPIX、2.7%安)に対して「逆行高」となりました(5月13日までの5営業日の騰落)。今回は総合重機関連の上昇率上位5銘柄と株高の背景について解説します!

2022年3月期の純利益、3.5倍に

5月13日までに出そろった大手6社(住友重機械工業、三井E&Sホールディングス、日立造船、三菱重工、川崎重工業、IHI)の純利益は合計で2315億円と前の期の3.5倍に拡大しました。前の期は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う航空機需要の減退で航空機エンジン部門などが不振でしたが、ワクチン接種の進展とともに欧米を中心に航空機の運航が再開し、航空機エンジンの需要も持ち直しました。

業績の急回復が確認できたうえ、今期も実質的には増益基調が続くとの見通しを好感した買いが優勢になっています。

国内の産業機械受注額は9カ月連続で増加

日本産業機械工業会によると、2月の国内の産業機械受注額は2312億円と前年同月に比べ17.6%増えました。前年同月を上回るのは2021年6月以降、9カ月連続です。政府が新型コロナ対策として行動制限を課さない方針を明確にしており、国内の製造業・非製造業ともに設備投資を進めています。コロナ禍からの回復が長期にわたり鮮明なことも、買い安心感につながっているようです。

環境部門が好調で増益続く【日立造船】

上昇率首位の「 日立造船 」が5月11日に発表した2022年3月期決算は、環境部門で大型受注を獲得したことなどから売上高は4418億円と、前の期に比べ8.1%増。ドイツの会社を連結子会社としたことに伴う特別利益の計上もあり、純利益は78億円と85.5%の大幅増となりました。

23年3月期の売上高は、売電事業が減少する一方で新設する脱炭素事業が伸び、前期からほぼ横ばいの4400億円。海外のごみ焼却発電設備の売上増なども寄与し、純利益は26.6%増の100億円を見込んでいます(会社予想)。

航空機エンジン好調【IHI】

上昇率2位の「 IHI 」が5月10日に発表した2022年3月期決算は、売上高にあたる売上収益が前の期比5.4%増の1兆1729億円でした。欧米を中心に国内線や短距離の国際線の運航再開が広がり、航空機エンジンのスペアパーツの販売が回復。賃貸用不動産の売却で280億円の利益を計上したこともあり、純利益は5倍の660億円と過去最高を更新しました。

2023年3月期の売上収益は、10.8%増の1兆3000億円、純利益は39.5%減の400億円を見込んでいます(会社予想)。半導体不足に伴う自動車生産の減少で前期に苦戦したターボチャージャー(過給機)や、航空機エンジンのスペアパーツの回復が続くと見込んでいますが、不動産売却益がなくなるためです。ただ、マーケットでは増収基調に変化はないとの見方が広がりました。

脱炭素関連の需要や円相場の動向に注目

そのほか、「 住友重機械工業 」は建機、モーター、プラスチック加工機械の好調で、2022年3月期の純利益が441億円と前の期比64.6%の大幅増。「 三井E&Sホールディングス 」は、不採算子会社の売却で2023年3月期の最終損益が218億円の赤字から20億円の黒字に転換するとの見通しを開示。「 三菱重工業 」は、固定費の削減や材料高騰を受けた値上げで2023年3月期の純利益が前期比5.7%増の1200億円と2期連続で増益となる見通しを公表しています。

総合重機関連では、エネルギー事業に深くかかわっている企業も多く、今後は水素やアンモニアといった脱炭素に対応したタービンなどの需要が強まっていく見通しです。また、輸出比率が比較的高いため、円安・ドル高は収益の押し上げ要因になります。回復基調の国内受注や円相場の動向を注視しつつ、収益拡大が続くかどうか見極めたいですね。