株式市場で「メタバース」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する14銘柄の平均上昇率は7.9%と、値ごろ感などに着目した買いで反発した東証株価指数(TOPIX、0.7%高)を大きく上回りました(5月20日までの5営業日の騰落)。今回は、メタバース関連で株価が上昇した主な銘柄と株高の背景について解説します!
ソニーも参入!目標は「10億人とつながること」
メタバースとはmeta(超越した)とuniverse(世界)を組み合わせた造語で、インターネット上に創られた仮想空間を意味します。自分のアバター(分身)を操作し、仮想空間内で移動したり他の参加者と交流したりできます。米フェイスブックが2021年10月に社名を「メタ・プラットフォームズ」に変更すると発表したこともあり、新たな成長分野として注目されています。
5月18日、ソニーグループが経営方針説明会で、「10億人と直接つながる」という長期目標の達成にメタバースを活用する方針を掲げました。ゲームのライブサービスやスポーツ、音楽などの分野で仮想空間を活用し、新たなライブエンタテインメント体験を創出する方針です。国内の主力企業が事業展開を表明したことで、メタバース関連銘柄への関心が高まっています。
リアル会場の熱狂を仮想空間で再現【IMAGICA GROUP】
映像制作サービスなどを展開する「 IMAGICA GROUP 」の子会社は、3月にファッションイベント「東京ガールズコレクション(TGC)」のメタバース空間を株式会社W TOKYOと共同プロデュースしました。TGCのリアル会場の熱狂を3次元の仮想空間で再現し、メタバース関連銘柄として注目されています。
5月13日に発表した2022年3月期決算は、劇場公開作品が増加したことで主力の映像制作サービス事業などの収益が回復し、営業損益は34億円の黒字(前の期は10億円の赤字)に転換しました。23年3月期は9.7%の増収、5.3%の営業増益を見込んでいます(会社予想)。業績の回復基調が続くとの見通しも好感されたようです。
メタバースのルール作りを主導【KDDI】
「 KDDI 」は2020年5月に渋谷区公認の配信プラットフォームとして「バーチャル渋谷」を開設し、ハロウィーンやクリスマスのイベントを開催するなど、メタバース事業を積極的に展開しています。2022年4月22日には東急など4社共同でメタバースに関するガイドラインを公表するなど、メタバースの運用や利用指針の整備でも主導的な立場を担っています。
5月13日に発表した2022年3月期の売上高は、5兆4467億円と前の期に比べ2.5%増、営業利益は1兆605億円と2.2%の増益でした。23年3月期は2.1%増収、3.7%の営業増益を見込んでいます(会社予想)。高速通信規格「5G」の推進や、注力するDX(デジタルトランスフォーメーション)、金融、エネルギーを中心に成長を続け、コストの効率化も進める方針です。
年成長率40%超、2030年には市場規模200兆円
そのほか、「 凸版印刷 」 は、現実空間を仮想空間に再現し、商談や協調作業などができるメタバースサービス基盤「ミラバース」を2022年4月から提供。「 ソニー グループ 」は、米ゲーム大手バンジーの買収や人気ゲーム「フォートナイト」で知られる米エピックゲームズに追加出資するなど、メタバース事業の基盤を着々と構築しています。
カナダの調査会社エマージェン・リサーチは、メタバースの世界の市場規模が年間平均で43.3%成長し、2030年には1兆6071億ドル(約205兆円)に達すると予想しています。新たな事業分野を目指して参入・展開を始める企業から目が離せません。