今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。7月号では世界有数の農業機械メーカー「クボタ」が新たに仲間入りしました! 早速、クボタの投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。
世界の食料問題を解決!「クボタ」
めん類、パン、しょうゆ、食用油等々ーーこのところ、さまざまな食料品価格が上がり、日々の支出が増えたという方は多いのではないでしょうか。値上げの主な理由は、輸入農作物価格や燃料費の高騰です。食料自給率が38%(2019年、カロリーベース)である日本では、仕方のないことかもしれません。
農産物価格の値上がりの背景の一つに、ロシアによるウクライナ侵攻が挙げられます。世界の穀倉地帯であるウクライナが危機的状況にあることによって、世界的な食料需給の問題も浮き彫りとなっています。こうした状況下にて世界各国で食料自給を目指す動きが広がるなか、注目したい企業が今回仲間入りした「 クボタ 」です。
世界の営農を支援する農業機械メーカー
クボタは食料・水・環境といった、人々の生活に欠かせない分野で事業を展開している、世界有数の農業機械メーカーです。
1890年に鋳物メーカーとして創業。以降、高い鋳物・計量技術を活かして、水道用鋳鉄管、産業機械用エンジン、建設機械、農業機械など事業分野を広げてきました。現在では主力の農業機械および農業関連商品、エンジン、建設機械で構成される機械事業が売上全体の84.9%(2021年12月期)を占めています。
主力が農業機器まわりの同社ですが、日本だけを事業領域としていると農地面積が限られ、事業発展に限界があります。それを見越し、同社は早いうちから積極的に海外展開し、北米やタイをはじめ世界で強固な販売網を構築。機械事業の海外売上高比率は70.8%(同)と高くなっています。
なおも同社の海外での販売網拡大への取り組みはとどまることがありません。新興国などでの将来的な機械化ニーズの高まりを見据え、2022年4月にインドで農機大手エスコーツ社を子会社化。さらに世界最大のトラクタ市場であるインドでも確固たる販売網を構築することで、今後のさらなる成長に期待がかかります。
「スマート農業」で100億人の食を支える存在へ
農業においては、作業の省力化や効率化が喫緊の課題となっています。国連の推計によると、2015年時点で73億人だった世界人口は、2030年までに85億人、2050年には97億人に達することが予測されています。必然的に水や食料の需要増加が考えられますが、農業従事者は世界全体で減少傾向をたどっています。つまり、将来的な労働力不足と食料需給に対する懸念が強まっているのです。
こうしたなか、同社は農業の省力化や効率化といった課題を解決する「スマート農業」の分野で存在感を高めています。スマート農業とはロボットやAI(人工知能)などの先端技術を活用した農業のことです。農業機械の自動化に加えて、農作業記録や降水量、日射量などのデータを活用しながら作業を効率化させたり、多収・高品質・無駄の削減などを実現します。
また、2014年にパソコン、スマートフォンと農機をクラウドで結び、農業全般に及ぶ細かな情報を一元管理できる「クボタ スマートアグリシステム(KSAS)」、2016年にオートステアリング対応のトラクタを提供開始。スマート農業の先陣を切っています。
さらには自動車メーカーの技術を採り入れた遠隔監視による農機の完全無人化、他社提供システム・アプリとのデータ連携(オープン化)を進める計画もしています。スマート農業のニーズが増加を続けるなか、同社のさらなるシェア拡大も期待でき、今後の成長が楽しみです。
中期経営計画を前倒しで達成する見込み
同社は長期ビジョン「GMB2030」で、“命を支えるプラットフォーマー”を掲げ、その土台として2025年12月期までの中期経営計画を策定しています。中期経営計画では2025年12月期の売上高目標を2兆3000億円としていますが、2022年12月期の売上高を2兆4500億円と計画しており、中期経営計画最終目標を3年前倒しで達成する見込みです。
一方、営業利益は2025年12月期の目標3000億円に対し、2022年12月期は2500億円と控えめの計画です。これは競争激化や先行投資を理由としたものですが、中期経営計画のなかでも利益率の向上を掲げており、利益率の高いアフターサービスの強化を図っています。北米を中心として海外で強固な販売網を考慮すると拡大余地は大きいとみられます。今後の業績にも注目し続けたいですね。
世界の人々の命を支える
130年以上にわたり食料・水・環境といった人々の生活に欠かせない分野で事業を展開している「クボタ」。世界人口の増加に伴う食料需給や農業労働者不足を背景に、農作業の省力化や効率化を実現できるスマート農業分野で存在感を発揮しています。スマート農業ニーズ増加の波に乗り、同社のシェア拡大も期待できます。世界の人々の命を支えることを使命とし、活躍を続ける同社を応援したいですね。