もはや「投資をしないこと」がリスクの時代です【前編】

THEOで学べるロボアドのすべて/ 山辺 僚一

運用者数11万人超えのAI搭載ロボアドバイザー「THEO[テオ]」。おまかせ投資サービスは投資初心者の支持も厚い。「投資をしないことが逆にリスクにつながる時代。日本人の資産を守り、インフレに負けない購買力をつける、そんな価値観を啓蒙していきたいですね」。株式会社お金のデザイン山辺僚一代表取締役社長に話を聞いた。

「THEO」で「守る投資」「任せる投資」を啓蒙したい

――「THEO」は2016年にスタート。ユーザーの6割近くが投資初心者とのことですが、どんな想いが出発点になったのでしょうか。

コンセプトは「守る投資」と「任せる投資」です。「THEO」は投資の基本を実践するサービスですが、同時にこの2つの価値観を拡げていきたいと考えています。資産形成のあるべき姿はどこに住んでも、何十年経っても、同じ生活水準を保てる金融資産を構築すること。タンスに100万円を入れておくとします。さて十年後、その価値はどうなるか?

いま100万円で買えるものが、10年後には買えなくなってしまう可能性もありますよね。デフレの時代は物の値段が下がっていきましたから「何もしない人が勝つ」と言われていましたが、今後もそうとは言い切れない。「投資をしない」選択がもはやリスクになる時代です。

AI搭載ロボアドバイザーによる投資一任運用サービス「THEO」

昨今は「今、持っている資産をいかに減らさないか」を目的に投資される方が増えていますが、リスクを取って購買力を守るというのが、「THEO」がスタート当初より着目していた視点でもあり、価値観でもあります。資産価値を守る、つまり、ひとりひとりの購買力を維持するために長期分散型の地道な運用スタイルを行っています。

また、「任せる投資」の意図ですが、投資というのは非常に手間がかかるものです(笑)。日経新聞を読んで、たくさんの分析レポートを読んで、経済金融の知識を培ってご自分で投資されている方もいらっしゃると思います。

ですが、全員が全員、そうした高度で積極的に投資することへ興味があるわけではないでしょうし、仕事をして家事をしてと個々の生活に忙しい。そんな中で「投資のために長時間割けますか?」という素朴な疑問もありました。

投資をしないことがリスクになるとはいえ、投資することのハードルが高すぎるかなとも感じていまして。多忙な日々を過ごす中で、誰かに任せる投資があっていい。
「THEO」では株式や債券、金や不動産など世界の70の国・地域にわたり、2万銘柄以上に分散投資しています(2022年7月時点)。また各ポートフォリオ(金融商品の組み合わせのこと)は、最大30種類のETFで構成されています。毎月自動でリバランス(資産の再配分)をしますが、リバランスは自分でやるとなると大変な負担がかかる。

リバランス:時間の経過とともに相場が変動することで、当初決定した資産配分が変わっていきます。そこで、定期的にその資産配分の比率を当初の計画どおりに修正を行うこと

たくさんの選択肢の中から投資すべき証券を選ぶのはもちろん、その比率を考え、購買後は日々の値動きに目を光らせる。当初の資産配分もズレていきますからそのたびに調整し、長期間管理するとなると大変な労力になる。そうしたことのすべてを「THEO」にお任せくださいと。お客様に手間をかけさせない、負担をかけない、が本サービスのモットーでもあります。

AIの力で、プライベートバンクのようなサービスを民主化

――「THEO」は日本初のロボアドバイザーでもあるわけですが、このようなサービスを利用して投資するメリットは、どんなところにあるのでしょうか?

ロボアドバイザー(ロボアド)の本質はカスタム性です。資産運用したいという人が10人いれば、10通りのソリューションが提供されるのがロボアドなんです。投資の難しさのひとつに、「問題の個別性」があると思います。

要するに、お金の悩みとひと口に言っても10人いれば10人違う。ある人は住宅ローンがあるなかで、老後資金も準備したい。ある人は独身で、賃貸住宅にお住まいで、将来の留学資金を貯めたいーーなど。お一人おひとりの状況と目的が違うのに、提供するサービスはほぼ同じという現状がありました。
本来ならば、プライベートバンクのように、お客様をよく知った上でポートフォリオを作成するのが望ましいのですが、なにしろコストが高くつく。これまで一部の富裕層や機関投資家に限られていたようなカスタムなサービスを、テクノロジーやAIの活用で民主化できないか? コストを下げて提供することはできないか? そうした課題を克服したサービスが「THEO」です。

ライバルは預金。「貯蓄から投資へ」シフトできれば国力も上がります

――「THEO」のスタート以来、日本でもロボアドバイザーの参入が相次ぎましたが、競合対策は考えていますか。

差別化は特に意識したことがありません。というのも、他社のロボアドバイザーと競合する以前の話で、まだ現時点では、われわれのライバルは預金だと思っているんですよ。

日本における個人の金融資産の総額は約2000兆円あります(2021年末時点、日銀発表)。ですが、その半分は預貯金で株や信託などの証券投資は全体の15%程度しかありません。一方、アメリカの個人金融資産の中で株式・投資信託の構成比は約50%、ヨーロッパも国によってばらつきはあるものの、おおむね平均30%ほど。

「貯蓄から投資へ」というスローガンはこれまでずっと日本で提唱されてきましたけど、どのくらいの貯蓄が投資にシフトすればそれが達成されたといえるのか。僕自身はだいたい300兆円ほどの規模だと考えているんですね。アメリカのように約半分が証券投資となるのは少し多い気がしますが、預金300兆円が投資に動けば、ヨーロッパとほぼ同じバランスになります。
これだけの資金がシフトすると何が起こるか。インフレや円安が進むなかで「個人の購買力を維持する」ことは大切です。国や自治体などパブリックなものに助けを求めるにも限度があり、結局は自分の資産は自分で守る「自助」が求められる。

日本人は「投資より貯蓄」という価値観が強いわけですが、「貯蓄から投資」がインフレや円安から将来の生活を守る。そして、それが十分な規模であることも重要です。結果的に自らの「購買力を守る」ことにもつながるんですね。

一方、「貯蓄から投資」は個人の課題というだけでなく、国を主体とした場合は、国力維持につながります。少々仰々しい感じになるんですけど、要は富を生み出し続ける力、GDPを生み出す力のことですね。

昨今、金融所得税についてさまざまな議論がなされていますが「税率を上げる」一択ではなく、「課税できる金額を増やす」というアプローチだってあるんですよ。

単純に、投資される金額が倍になれば課税できる金額も倍になります。全体のパイが広がることで、今の税率を1%も動かすことなく、税収が倍になる可能性もあるということ。その資産が今どうなっているかというと、預金貯蓄として銀行口座に眠っているだけです。

そのお金に働いてもらおう、そして税収を増やそう、という発想です。マクロな視点で見ると、貯蓄から投資へのシフトはこの国にとって、貴重で大きな成長戦略にもなり得ると考えています。

――老後2000万円問題以降、日本人の投資に対する関心は高まっている印象もあります。現場の感覚としてはいかがですか。

意識の高まりは感じています。金融庁のレポートが議論のきっかけとなり、また様々な新しい投資サービスの登場もあり、投資がより注目されていると感じます。投資家層も徐々に拡大しつつあると思いますが、300兆円の「貯蓄から投資」がゴールだとするとまだ道半ばですよ。
現在、日本の投資家層は高齢者に偏っています。300兆円というのはこの方たちの投資額が倍になればいいという話ではない。それでは結局、一部の人しか身を守れないことになってしまいますからね。

幅広く国民が自ら生活を守る。そのためには、300兆円という金額の規模だけでなく、2000~3000万人規模の新たな投資家層拡大も同時に達成すべきだろうと思っています。とはいえ、20代、30代の方で「いま、100万円の預金があるから投資しよう」という方は少ないはずです。

では、どこから投資するの? といえば、多くの方は、給料から毎月5000円なり、1万円なりを毎月積み立てていくことになるでしょう。つまり、給料が減るようなことになれば投資に回そうとは思わない。結局は企業が収益性を守り、給料を守り、国はそれをサポートし、富を生み出す力を維持する必要がある。

投資家が増えることは企業の資金調達にも影響してきますし、結局は、巡り巡ってすべてがつながっていくわけです。いずれの主体からみても、「貯蓄から投資へ」お金が動くことは大きな意味を持っています。では、どうやって「貯蓄から投資へ」のシフトを加速するか。後編ではその点についてお話したいと思います。

》THEO[テオ]について詳しく見る