3000万人の投資家を生み出す「仕組み」を発明したい【後編】

THEOで学べるロボアドのすべて/ 山辺 僚一

運用者数11万人超えのAI搭載ロボアドバイザー「THEO[テオ]」。おまかせ投資サービスは投資初心者の支持も厚い。「投資をしないことが逆にリスクにつながる時代。日本人の資産を守り、インフレに負けない購買力をつける、そんな価値観を啓蒙していきたいですね」。株式会社お金のデザイン山辺僚一代表取締役社長に話を聞いた。
もはや「投資をしないこと」がリスクの時代です【前編】を読む

かつてない投資家層を開拓した「THEO+[テオプラス] docomo」

――前編で「新しい投資家3000万人」のお話をされていましたが、「THEO+[テオプラス]docomo」の利用者は従来の金融サービスにはいなかったタイプだそうですが。

これまでとは違ったビジネスモデルになるという確信はあったのですが、期待以上でしたね。NTTドコモさんと提携した「THEO+[テオプラス] docomo」は「THEO」と同じ、「守る投資」「任せる投資」ですが、両者はお客さまのタイプは大きく異なります。

dポイント経済圏の中で新たな投資家を生み出した「THEO+[テオプラス] docomo」

「THEO+[テオプラス] docomo」は、単体の投資サービスではなく、dポイント経済圏の一つの要素としての投資サービスです。dカードやd払いを使い、dポイントを貯める。そんなドコモユーザーの方々に、日常の延長線上で投資を始めていただけるようになりました。

さらに日常で使えるdポイントと「THEO」で投資することを繋ぐ「dポイント投資」というサービスも展開しています。日常に投資サービスが溶け込み、生活と投資が重なることで、自然と運用をスタートした。かつては考えられなかった新しい流れで、われわれにとってもワクワクする挑戦になっています。

「貯蓄から投資へ300兆円」を目指すなら仕組みが必要

――以前はユーザー獲得や口座管理まで一貫して行ってきましたが、現在は複数の企業と提携し、お金のデザインはプロダクトデザインと投資オペレーションに事業を集中しています。これも新しいビジネスモデルの一環でしょうか。

おっしゃる通りですね。独自の競争優位性を持っている企業と相互補完的につながっていき、シナジーを生み出したい。そうした考えもあってNTTドコモはじめ、SMBC日興証券など、現在、多数のパートナー企業との協業を進めています。

われわれは投資家を増やす仕組みを作りたいんです。商材を作るのなら自分たちだけでもできますが「貯蓄から投資へ300兆円」「新しい投資家3000万人」という規模を目指すのであれば、商材だけではなく、社会の仕組みがないと難しい。どんなに良い投資商品だとしても、3000万人が一つの商材に行き着くのは考えづらいですからね。

一つ一つの商材を営業していく在り方を否定するつもりはまったくありませんが「THEO+[テオプラス] docomo」のような仕組みが社会に求められているのではないでしょうか。投資と個人を繋ぐ架け橋のような仕組みで、投資の価値をお伝えする方法もあるのではないかと。

もちろん、仕組み作りは商材とは違い「営業がんがんやります」とか「広告をどんどん流します」などの起爆剤だけでギアが上がるものではありません。社会の中にいかに多く投資家との接点を作っていくか、日々の生活と投資を重ねられるか。地道な努力が必要です。

dポイント経済圏との連携だけでなく、iDeCoやNISAのような制度との関わりや、様々な金融サービスへの付帯などもおもしろい。例えば、住宅ローンには「金利を多めに払ったらがん保険が付く」サービスがありますけど、それと似たような投資サービスがあってもいい。サービスの複層化でさまざまな可能性が考えられると思うんです。

究極は「質問しないロボアド」でカスタム性を上げていく

――昨秋にはESG投資(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと)を導入するなど、「THEO」の内容そのものも進化しています。今後の事業展望を。

「THEO」は今あるモデルが完成形だとは思っていないんですよ。ライバルは預金だと申し上げましたが、将来的に類似サービスとの競合を意識する時がやってくるとしても、現在の機能で競うというより今後の進化で競っていきます。

まずは、より高度化したカスタム性を実現すること。今は年齢や年収、金融資産額など5つの質問を元にポートフォリオ診断をしていますが、その情報量では「その方の個性を表現しきれているか?」といえば、難しいわけです。そこで、今年初めに「THEOリスク調整機能」という、追加情報をポートフォリオに反映させるサービスを始めました。

でも、単純に情報量を追求すれば良いわけでもないんです。表現するためには、お客様のことをさらに知っていく作業が必要になるわけです。でも、だからといって20も30も質問項目があると鬱陶しいじゃないですか(笑)。やっぱり5つくらいでイヤになっちゃうと思うんです。我々の目指す「負担をかけない」というコンセプトにも逆行します。
外部企業とのパートナーシップにも期待しています。考えているのは、将来的にパートナー企業の方々がお持ちのデータを活用すること。例えば「どこの株を持っていますか?」「どの投信を持っていますか?」等の情報は証券会社や銀行がお持ちです。企業間連携でそうしたデータがロボアドへ提供されていれば、わざわざお客さまご自身に再度お答えいただく必要はありません。究極的には「質問しないロボアド」が登場するかもしれません。

また、金融投資においてお客様の趣向は多様化しています。年齢も稼ぎも家族構成もまったく同じ、仮にそんなプロファイルの方がいたとしても趣味や関心まで同じとは限らない。ESGへの投資を通じて自己表現したいとか、自分の興味関心のある分野に投資したいというお客様もいらっしゃると思います。

現在の「THEO」は投資の基本である長期分散投資を実践しています。そのなかに日本の個別株だったり、投資信託があってもいい。今後の法整備と歩調を合わせながらですが、デジタル証券(ブロックチェーン(分散型台帳技術)で管理され、電子的に発行された有価証券のこと)がラインナップにあってもいいと思うんですよ。

お客様の属性などによるプロファイルのみで”教科書的に作る”ソリューションだと、良くも悪くも”空腹を満たすだけ”になる。そこをもう一歩進めて”食欲を満たせる”ロボアドにしていこうと、そんな進化の方向性も考えています。

金額の大小に関わらずお金を預かる緊張感は同じ

ーー山辺社長は投資の世界が長く、10兆円規模の運用をされた経験もお持ちです。「顧客の資産を運用する」プレッシャーとは日々どう向き合われていますか。

それはもう粛々と、ですね。社会に出て以来ずっと投資の世界に携わってきましたが、お客様の大切なお金をお預かりしている、そのプレッシャーは常に感じています。よく聞かれるのですが、プレッシャーに金額の大小はあまり関係がないんですよ。

機関投資家の資金10兆円とサラリーマンの100万円、どちらが緊張するかと聞かれたら実はどちらも緊張します。いくらであろうとその方の人生にとってかけがえのないお金です。1円だったとしてもお預かりするという責任は同じなので、それはもう着実に投資の基本を実践していくような毎日ですね。

――「THEO」は投資の基本を実践したサービスですが、改めて「投資で大切なことは何か」をお聞かせ願えますか。

これは10年前に聞かれたとしてもまったく同じで、基本はやはり「長期投資」「分散投資」「積立投資」の3つですね。あとは「自分のニーズを知ること」です。

目的意識が明確であればあるほど投資は成功しやすいと思いますが、ここでいう成功って必ずしもリターンで測れるものではないんです。それぞれのニーズもライフステージを積み重ねるごとに変化しますし、20代の時に考えるニーズと、30代、40代では異なってくる。家族ができて自宅を購入して、あるいは転職して、とライフスタイルが変われば、同じ人間でも投資のニーズは変わりますから。

長期・分散・積立が大事だといえば、教科書通りで面白くもなんともないかもしれませんが、いうほど簡単なことでもありません。市場というのは何かしら起こるわけで、気分のむらもなく、アクションのむらもなく、基本に忠実にコンスタントにやり続けることは難しい。だからこそ「THEO」のようなサービスが意味を持ってくるんですね。

人生100年時代といわれる中、資産寿命を延ばす重要性も増しています。生活の中に資産形成のアクションが溶け込み、誰もが資産運用できる社会を目指していきたい、そう考えていますね。

》THEO[テオ]について詳しく見る

【THEO GREEN】
https://theo.blue/lp/feature/theo-green/
投資家のニーズは、経済的リターンだけとは限らない。例えば、投資を通じて社会課題の解決に参加したい__。そうしたニーズには、「(経済的リターンに加えて)プラスαの価値」を提供することを目指す。その取り組みの一環として「THEO GREEN」というESG投資ができる機能がTHEOに追加された。
【THEOゴール投資】
https://theo.blue/lp/feature/theo-goal-investment/
投資家の投資目的も様々。例えば、若い世代は、老後資金の心配の前に、住宅の頭金、結婚や留学の資金などに向けた資金の必要性の方が具体的にイメージしやすいかもしれない。投資の目的の明確化は、「いまのアクション」を後押しし、不安の解消をサポートする。こういった進化を目指す第一歩として「THEOゴール投資」というサービスがある。