暑い夏で需給逼迫! 「電力供給サービス」関連株が上昇

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株式市場で「電力供給サービス」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する27銘柄の平均上昇率は3.7%と、国内外の景気減速に対する警戒感などから大幅に反落した東証株価指数(TOPIX、1.2%下落)に対して「逆行高」となりました(7月1日までの5営業日の騰落)。今回はそのなかでも上昇率の高い「電力供給サービス」関連5銘柄と株高の背景について解説します!

経産省、初の「需給逼迫注意報」を発令

経済産業省は東京電力管内で6月27日の電力需給が厳しくなる見通しになったのを受け、26日に初めての需給逼迫注意報を発令しました。

カエル先生の一言

「需給逼迫注意報」は翌日の電力需要に対する供給の余力(予備率)が5%を下回る見通しになると発令されます。2022年3月22日に東北電力・東京電力管内で電力需給が逼迫した反省を踏まえて導入されました。当時の電力逼迫の背景には、①2022年3月16日に発生した福島県沖地震の影響で東北・東京エリアで計14基の火力発電所が停止し、3月22日時点でも停止中の施設が多数存在したこと、②真冬並みの寒さで電力需要が強まったことなどがありました。

足元、東京都では7月2日まで9日連続で最高気温が35℃以上の猛暑日となり、エアコンなどの需要の増加が追い打ちをかけました。注意報は6月30日に解除されましたが、政府は7月1日から9月末まで全国に節電を呼びかけるなど、需給の逼迫は続く見通しです。

東電、12カ月連続で電気料金を値上げ

東京電力ホールディングスによると、8月分の電気料金は標準的な家庭の1カ月あたりの料金で7月比247円高の月9118円となりました。値上げは12カ月連続で、2021年8月分と比べ3割強の高水準です。

値上げの主因は原油や天然ガスなどエネルギー価格の上昇ですが、電気料金の引き上げで、電力供給サービス企業は収益悪化を避けられるとの安心感が広がっています。電気代の高騰は私たちの家計に厳しいことですが、電気料金の上昇で、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電事業の採算も改善するとの見方から「電力供給サービス」関連銘柄の上昇が目立っています。

インフラファンド子会社化で2023年12月期は黒字に【リニューアブル・ジャパン】

上昇率首位の「 リニューアブル・ジャパン 」は、再生可能エネルギーの普及を目的に2012年に設立されました。2017年8月には東急不動産と再生可能エネルギー事業で資本業務提携し、2019年にJXTGエネルギー(現ENEOSホールディングス)、2020年に関西電力とも同分野で資本業務提携しています。

同社は、6月24日に東証インフラファンド市場に上場していた日本再生可能エネルギーインフラ投資法人へのTOB(株式公開買付)が成立したと発表。あわせて、決済資金の調達などで費用が発生するとして2022年12月期の最終損益が6億円の黒字から16億5000万円の赤字になる見通しを開示しました。一方、発電所を開発して売却する事業モデルから、発電所を保有して継続的な売電収入を得るモデルへの転換で2023年12月期の最終損益は7億5000万円の黒字(参考値)に転換するとしています。

原発再稼働への思惑も【東京電力ホールディングス】

上昇率2位は「 東京電力ホールディングス 」でした。電気を売買する日本卸電力取引所(JEPX)が公表しているスポット取引価格(24時間平均、翌日受け渡し)は、6月下旬にかけて騰勢を強めました。6月30日には1キロワット時46.03円と、5月末時点に比べ2.3倍に膨らみました。発電企業の筆頭として、短期的な値動きの良さに着目した買いを誘った面があるようです。

原子力発電所の再稼働を巡る思惑も、東電への注目度を高めています。主要7カ国首脳会議(G7サミット)閉幕後の28日に岸田文雄首相が記者会見で、原子力発電所の再稼働について「審査の迅速化を着実に実施していく」と発言しました。運転を停止している原発の再稼働が実現すれば、発電コストが大きく下がるとの期待を誘いました。

そのほか、2023年3月期の営業利益が前期比26%増の1100億円になると見込んでいる 電源開発(Jパワー) 」や、6月24日に電話などで営業を代行する「インサイドセールス」を手がけるブロードバンドコネクションを3億円で買収すると発表した ラストワンマイル 」、大手電力会社以外で電気を小売する新電力会社の Eインフィニティ 」も買われています。

今後の電力需給や卸売価格の動きに注目

季節外れの猛暑到来に伴う電力需給の逼迫と電力卸売価格の急騰に端を発した「電力供給サービス」関連銘柄の上昇ですが、卸売価格の上昇の恩恵を受けるのはJEPXに対して売る電力の方が多い銘柄に限られます。

3月には東証マザーズに上場していたホープが新電力子会社の破産手続き開始の申し立てを決めました。発電設備を持たない新電力は調達価格の急騰に対し価格転嫁が間に合わず、収益悪化に直面しています。各社の発電能力や原発再開を巡る動きを見極めて、投資対象を見極めたいですね。