脱炭素へ 次世代の航空燃料「SAF」に熱視線

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、脱炭素に向けて注目される合成燃料に関するニュースの裏側についてご紹介します。

合成燃料の実用化をリードする航空業界

自動車レースのスーパー耐久に、「 日産自動車 」がCO2を実質排出しないカーボンニュートラル燃料(廃棄食品や木材チップなどを原料とするバイオ燃料)のフェアレディZで参戦しました。同レースには、「 トヨタ自動車 」が水素エンジンのカローラで参戦し、脱炭素レースの様相を見せました。

「日産は、自動車レースの中でもスーパーGTを主戦場にしている。来期からスーパーGTがカーボンニュートラル燃料を採用すると発表しており、走行データを取る実験走行のためにスーパー耐久に参戦した」(モーター誌編集者)。

ただ、こうした合成燃料の実用化は、自動車より航空機の方が一歩先を行っています。航空機は、他の交通機関に比べて二酸化炭素の排出が多く、また電気自動車のように重い電池を乗せて飛ぶのが難しいという事情があるからです。IATA(国際航空運送協会)は、2021年の年次総会で2050年に温室効果ガス実質ゼロの目標を採択しました。そして各国に「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」と呼ばれる、石油由来ではないバイオ燃料への切り替えを求めています。

日本でSAFに積極的なのは「 ANAホールディングス 」です。2019年には「 三井物産 」と共同で、SAFを使ったデリバリーフライトを実施。2021年9月には、SAFを使用した貨物便を日本通運、近畿エクスプレス、郵船ロジスティクスと飛ばしました。

JALとANA タッグを組むも 課題は「高価格」

2022年3月にはANAと「 JAL 」が、「 日揮HD 」やSAF製造メーカーのレボインターナショナルら14社と、SAFの商用化・普及を推進する有志団体「アクト・フォー・スカイ」を設立しました。

「この手の技術推進でANAとJALが組むことは珍しい。正に呉越同舟でカーボンニュートラルを乗り越えねばならないという強い意志を感じさせた」(航空業界担当記者)。

2022年4月には「SAF導入促進に向けた官民協議会」が立ち上がり、国内産のSAF製造に向け、国も動き始めています。

現状は大手企業中心の動きとなっていますが、6月23日にはホンダジェットを持つ「 ホンダ 」が米国のSAF規格支援団体への加入を発表。また、「 ユーグレナ 」は昨年同社製のSAFをホンダジェットで使用したことを公表しています。

次世代の航空燃料として注目されるSAFですが、やはり価格の高さが課題と言えるでしょう。IATAは、従来のジェット燃料より2~4倍高いSAFの単価を引き下げるため、各国政府に支援が不可欠と訴えています。

(出典:日本証券新聞)