三千円の使いかた

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

ハウツー本ではなく連作短編小説ですが、お金や節約にまつわる情報量の多さときたら。読みながらメモを取りたくなること請け合いで、最後はホロリともさせてくれる。一粒で二度おいしい1冊です。

三千円で人生が決まる? 金言たっぷりの節約小説

三千円のお金を「いかに使うか」で人の個性や人生が表れるーー、タイトルは登場人物のセリフから来ています。お金を貯めたい独身の妹とがっつり貯金している子持ちの姉、老後の資金が不安でならない50代母と、老後まっただ中で不安どころではない祖母。都内在住のとある一家、それぞれの「お金の困った」を描く本作はよい意味で既視感だらけでした。「それそれ! 自分も一緒」とうなずく人はきっと多いはず。

特にいい味を出しているのが、冒頭のセリフをはじめ文字通りの(?)金言てんこ盛りな70代の祖母でしょう。銀行の金利優待キャンペーンに目を光らせ「あっちの口座、こっちの口座」と動かすことに精を出す。「買い物をしなくてもお金を動かすだけで高揚感を得られる」という心境は投資家でなくとも膝を打ちたくなりそうです。はたまた、家計簿の生みの親・羽仁もと子に心酔し、劇中でその歴史まで語り出す場面も(これがまた、なるほどと感心)。「お金の悩みがある時こそ家計簿をつけてよく考えることが大切」のフレーズは家計簿が続かない人にこそ刺さりそうです。

ともあれ、お金関連ネタは家族小説として読んだことがないくらいに多いです。格安SIMやポイ活などの節約情報に始まり、長期積立投資や中古住宅のローン事情、奨学金の借金問題や熟年離婚のお金勘定まで。この手のノウハウは小説自体の展開を不自然にしかねないのですが、そこは作家の力量か、違和感ゼロでグイグイと引っ張ってくれる。主人公の女性たちの前向きな自助力にも爽快感あり。投資にせよ、日常の節約術にせよ、仕事にせよ、今日も頑張ってお金を貯めるぞ! そう思える本です。