行動制限ナシが追い風! 「郊外型消費」関連株が上昇

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株式市場で「郊外型消費」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する29銘柄の平均上昇率は2.5%と、米金融政策の先行き不透明感の後退などから続伸した東証株価指数(TOPIX、0.3%上昇)を上回りました(7月15日までの5営業日の騰落)。今回は、「郊外型消費」関連で株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

全国ショッピングセンター売上高、5月は29.9%増

2019年以来、3年ぶりに緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行動制限がない中、全国的にショッピングセンターの売上高が回復しています。日本ショッピングセンター協会は、5月の全国ショッピングセンターの既存店売上高が前年同月比で29.9%増と発表。3月下旬にまん延防止等重点措置が解除されたのを受け、大幅な伸びとなりました。

足元で感染が急拡大し「第7波」に入ったとされますが、政府高官は「新たな行動制限は考えていない」と繰り返しており、人々が外出する機会が減る可能性は低そうです。郊外のショッピングセンターなどに出店する「郊外型消費」関連銘柄は、収益回復につながるとの期待から物色が向かっています。 

日銀の景気判断、7地域で引き上げ

日銀が7月11日に発表した7月の地域経済報告(さくらリポート)では、全国9地域のうち関東甲信越と東海を除く7地域で景気判断を引き上げました。行動制限の解除を受けて宿泊や飲食の客足が回復するなど、個人消費が持ち直しのが主因です。

コロナ禍で在宅勤務や地方移住など「新しい生活様式」が定着し、地方経済の活性化につながるとの期待も関連銘柄への追い風となっています。決算や月次売上高で成長期待を誘った銘柄も多く、株価の力強い上昇につながりました。

2023年5月期は先行投資で減益【大黒天物産】

上昇率首位の「 大黒天物産 」は、本社を構える岡山県を中心にディスカウントストア「ラ・ムー」や「ディオ」などを展開しています。7月6日に発表した2022年5月期決算は、売上高が2241億円でした。前期から適用した「収益認識に関する会計基準」を考慮せずに前の期と単純比較すると1%の増収で、営業利益はほぼ横ばいの85億円でした。

カエル先生の一言

「収益認識に関する会計基準」とは、国際会計基準(IFRS)に準拠した売上高の計上基準。従来は売上原価に計上していた販売奨励金やリベートを売上高から差し引いたり、保守契約などの「サービス」を一定期間にわたって計上するなど、売上高を「いつ」「どのように」計上するかを定めたものです。2022年4月に始まる決算期から適用されました。

23年5月期は売上高が前期比4.7%増の2346億円、営業利益は30.9%減の59億円になる見通しです(会社予想)。食品工場などを併設した「関西RMセンター」の稼働や25店の新規出店、5店の改装による初期費用により増収減益を見込んでいます。ただ、センター稼働に伴い高速多店舗出店が可能になることから、将来の成長に期待した買いを誘っています。

1806年創業のホームセンター【セキチュー】

上昇率2位の「 セキチュー 」は群馬県高崎市に本社を構え、関東甲信で「ホームセンターセキチュー」を運営しています。前身となった関口材木店は1806年創業の老舗で、1975年にホームセンターの1号店を開業しました。

6月30日に発表した2022年2〜5月期決算は、「収益認識に関する会計基準」を考慮せずに単純比較すると、売上高は76億円で前年同期比2.9%減、営業利益は4億円弱で18.9%減となりました。もっとも、営業利益は23年2月期の会社予想(6億円)の6割強の水準だったため、業績の順調な進捗を好感した買いを誘ったようです。

コロナ禍前の売上高回復が焦点に

そのほかに上昇している銘柄と、その背景は以下の通りです。

上昇率第3位の「 アクシアルリテイリング 」は、7月6日に6月の全店売上高が前年同月比2.7%増と2カ月ぶりに前年同月を上回ったと発表。同社は、北関東と北信越に食品スーパー「原信ナルス」と「フレッセイ」を展開しています。

第5位の「 キャンドゥ 」は、7月11日に6月の直営既存店売上高が前年同月比0.8%増と2023年2月期に入り初めて増加に転じたと発表

第4位の「 エフピコ 」は店舗は展開しておらず、食品トレーを製造する素材メーカーです。同社は、プラスチック食品包装容器などの素材であるポリスチレンの完全循環型リサイクルに向け、化学メーカーのDICと提携しています。DICは、7月6日にドイツのソフトウエア大手SAPと連携し、ブロックチェーン(分散型台帳)を使った廃プラスチックのトレーサビリティー(生産履歴の追跡)システムを構築する実証実験を始めると発表。これを受け、ポリスチレンの完全リサイクルに一歩前進したとの見方から、エフピコも買われています。

新型コロナの感染が急拡大していますが、重症化率の低さなどから政府は行動制限には後ろ向きです。世界の主要国を見渡しても、中国以外では行動制限を課している国はほとんどなく、個人の行動が制限されることはなさそうです。行動制限が個人消費にブレーキをかけていたのは統計などから明白で、今後も回復基調が続く公算が大きいと考えられます。焦点は、コロナ禍前の2019年の水準を回復し、その後も成長できるかに移りつつあります。各社の出店計画や物流網の整備といった成長戦略を注意深く探っていきたいですね。

※キャンドゥ(2698)は記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。