円安で大儲け!? 外貨を円に替えるときの注意点

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

みなさんこんにちは! 公認会計士・税理士の山田真哉です。最近、急激に円安が進んでいますよね。円安ということは、今持っている外貨を円に替えれば儲かる! ……と思いきや、確定申告しないと脱税になってしまうケースがあるんです。今回は、外貨預金の外貨を円に替えるときの税金の扱いや注意点などについて、解説していきたいと思います。

外貨預金を円に戻すときの「落とし穴」

1年ちょっと前まで、為替レートは1ドル=105円でした。たとえば、1万ドルを外貨預金していたら、当時の為替レートで円換算すると105万円だったわけです。それが2022年7月1日現在で1ドル=135円になっているので、1万ドルの外貨預金は円換算で135万円になるんです。このタイミングで外貨預金を解約して円に戻したら、30万円の利益が出ると思いますよね!?
ところが、そこには色んな落とし穴があるんです。日本の法律では、何かで儲かったら必ず税金がかかります。もちろん例外はありますが、99%税金がかかります。なので、外貨預金についても、利益が出たら当然税金が発生します。

まず、外貨預金をする段階では無税です。外貨預金の手続きだけなら何も儲かっていないですからね。その後、外貨預金をしている間の「利息」に対しては税金がかかります。でも、税率は一律20.315%で源泉徴収されるので、みなさんの口座には、既に税金が引かれた後の利息が入ってきます。

問題なのは、外貨預金を円に戻すときです。円に戻す時に利益が出ると、税金が発生して、さらに確定申告をする必要があるんです。

順番に説明すると、まず引き出す金額から、元の預金金額を引きます。そこから円に戻すときの手数料(※)を引きます。そうして残った利益に対して税金がかかります。

※通貨は、両替するたびに両替手数料がかかります

引き出す金額-元の預金金額=A
A-両替手数料=B
Bに対して課税

先ほどの1万ドルの外貨預金の例でいくと、1ドル=135円の時に外貨預金を円に戻す場合、まず135万円から最初に払った105万円を引きます。そこから両替手数料を引きます(今回は、円からドルにしたときに1万円、ドルから円にしたときに1万円、合計で2万円の両替手数料がかかったとしましょう)。

そうすると、135万円-105万円-2万円=28万円の利益になります。この28万円に対して税金がかかります。

135万円-105万円=30万円
30万円-2万円=28万円
28万円に対して課税

この28万円の利益は「為替差益」と呼びます。為替差益に対してかかる税金は「雑所得・その他」という扱いになるんですが、どれくらいの税金がかかるのかは、その人の所得によって変わります。

たとえば、給与年収が700万円の会社員の場合は、所得税と住民税の合計で30.42%の税率になります。なので、為替差益の28万円に30.42%をかけて、8万5200円の税金が発生します。

つまり、手元に残る利益は、28万円-8万5200円=19万4800円。なんと、年収700万円の会社員の場合は、利益が3分の2になってしまうんです。

さらに、確定申告も必須です。でも、確定申告って面倒くさいですよね。普段からやっている方だったら良いですけど、確定申告をこのためだけにやりたくない、という方、朗報です!

確定申告をしないで済む方法

確定申告は、その年の1月から12月までの1年間の所得の合計額で計算する、ということをまず覚えておいてください。これを踏まえた上で、会社員の方の場合は、給料や退職金以外の「その他の所得」が年間20万円以下ならば、確定申告をしないで良い、というルールがあります。この「その他の所得」には、為替差益も含まれます。

年金をもらっている方は、年金が400万円以下、かつ年金以外の所得が年間20万円以下だったら確定申告の必要はありません。専業主婦や学生など、扶養家族になっている方の場合は、すべての所得の合計が48万円以下だったら、こちらも確定申告が不要です。確定申告をしなくて良いということは、税金を払わなくて良い、ということです!

ただ、これらの条件を満たしていたとしても、寄付金控除や医療費控除があって、確定申告をしなくてはいけない人は要注意です。この場合は、為替差益の分も含めて確定申告をしないと脱税になります。何らかの事情で毎年確定申告をしている人は、今回の外貨預金での為替差益を確定申告しない、というわけにはいきません。

いやあ、僕は確定申告しなきゃいけないんだけど、この円安での儲けは申告したくないな……という方、さらに朗報があります!

他の損失と相殺する手段も

じつは、為替差益を確定申告しないで済む方法はあります。為替差益は、所得税でいうところの「雑所得・その他」という扱いになると言いました。なので、「雑所得・その他」の他の損失と、外貨預金の利益を相殺すれば良いんです。

たとえば、他の銀行でやっている外貨取引や副業の赤字、暗号資産、仮想通貨の赤字などですね。これらの損失と為替差益で相殺できれば、確定申告に含めなくて済みます。仮に、外貨預金で30万円の利益が出たとしても、仮想通貨で30万円損を出していれば、これで相殺ということです。

なお、株の損失や国内FX業者によるFX(外国為替証拠金取引)の損失は、「雑所得・その他」の扱いではないので相殺できません。株やFX(国内業者の場合)は、20.315%の税率になります。

外貨建て生命保険を解約した場合は?

ちなみに、僕は10年くらい前から外貨建ての生命保険に入っています。毎月毎月、ドルで保険料を払うものですね。円よりドルの方が金利が高いので、解約した場合に返戻金がたくさん戻りますよ、と知り合いのFPさんに言われて入った保険です。

この保険を今解約すると、円安の効果も上乗せされて、けっこう儲かっているんですよ。外貨建て保険を解約した場合は、利益が年間50万円までだったら無税になります。この場合の利益は「一時所得」と言うんですが、他の一時所得と合算して年間50万円までだったら無税です。なので、ちょうど利益が50万円になるように保険を解約するという手はあるかと思います。

通貨を替えたときに税金は発生する

今回はドルの話をしましたが、ユーロや豪ドル、ウォンといった、他の通貨の場合でも、円に戻した時に利益が出たら、為替差益として税金がかかります。さらに言うと、ドルからユーロに交換した時点で利益が出ていたら、税金がかかります。

つまり、円に戻したら税金がかかるわけではなく、通貨を交換したら税金がかかると思っておくとよいでしょう。なので、1万ドルを三菱UFJから三井住友の口座に移しただけなら無税です。この場合、ドル自体は他の通貨に変わっておらず、両替とは見なされないからですね。

今回は、外貨の取引で利益が出たときの税金についてお話ししました。円安で儲かった人は、まだ12月まで時間はありますので、確定申告をするか、あるいは確定申告をしないで済む方法があるか、ぜひ検討してみてください!

それでは今回はこのへんで! ば~いば~い!