感染急拡大で巣ごもり消費の思惑も 「ネット通販」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「ネット通販」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する54銘柄の平均上昇率は4.9%と、米国の大幅利上げ観測の後退などから大幅に続伸した東証株価指数(TOPIX、3.3%上昇)を上回りました(7月22日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

全国の新規陽性者数、初の20万人台に

7月に入ってから新型コロナウイルスの感染拡大が「第7波」に入り、新規陽性者数が急増しています。前週同曜日比で倍増する日が相次ぎ、7月23日には全国の新規陽性者数が20万937人と初めて20万人を超え第6波のピークの倍近くに達しました。

しかし、日本政府は新たな行動制限について否定的です。もっとも、沖縄県が7月22日から会食について「4人以下、2時間以内」で開くよう求めるなど、独自の行動制限を導入する例も出てきています。個人の判断で外出を控える例が増える可能性もあり、巣ごもり消費の反動減への警戒感から売られていたネット通販関連銘柄に見直し買いが入っています。 

2021年のネット通販支出は6%増

家計のネット通販への支出はコロナ禍で着実に伸びています。総務省の家計消費状況調査によると、二人以上の世帯のネット通販への支出額は2019年に40万円台に乗せ、20年はほぼ前年並み、21年は前年比で6%増えました。

5月までの月次でみても22年以降は前年同月を一貫して上回っています。4月は前年同月比11.0%増、5月は17.8%増と力強い伸びが継続中です。政府が行動制限に踏み切らなくても、巣ごもり消費の反動減は限られるとの思惑がじわりと広がっているようです。

2022年12月期は売上高・利益とも最高更新見通し【ゴルフダイジェスト・オンライン】

上昇率首位の「 ゴルフダイジェスト・オンライン 」はゴルフ用品販売やゴルフ場のネット予約サイトの運営のほか、ゴルフレッスン店舗の運営なども手掛けています。2018年に子会社化した米ゴルフレッスンチェーンのゴルフテック・エンタープライゼスが米国のゴルフ人口の増加を追い風に成長を続けています。

2022年12月期は売上高が前期比16%増の460億円、営業利益が23%増の21億円とともに21年12月期の過去最高を更新する見通しです(会社予想)。米国ではコロナ禍でゴルフを始めた初心者ゴルファーの4割強がゴルフを続けているといいます。密を避けるスポーツとして国内でもゴルフ人口が増えるとの思惑が広がっているようです。

テレビCM抑制で赤字幅縮小【ココナラ】

上昇率2位の「 ココナラ 」は専門知識や得意なことなどのノウハウといった個人のスキル(技能)をインターネットで売買するサイト「coconala」やビジネス目的に特化した「coconala Business」、法律トラブルを抱えた利用者と弁護士をつなぐ「coconala法律相談」を運営しています。7月15日に会社が発表した2022年3~5月期決算は売上高にあたる営業収益が9億9900万円と前年同期比37%増、営業利益は5500万円と16%増えました。

会社側は決算発表と同時に2022年8月期の業績予想を上方修正しました。売上高は36億5000万円から38億2000万円へ、営業損益は12億9000万円の赤字から5億8000万円の赤字へ引き上げられています。マーケティングの強化などで流通高が順調に推移している一方、テレビCMの抑制などで収益が改善する見通しです。業績の順調な進捗を好感した買いを誘いました。 

米ハイテク株の戻りも追い風に

そのほかに上昇している銘柄と、その背景は以下の通りです。

第3位の「 北の達人コーポレーション 」はオリジナルブランドの健康美容商品や美容家電などをネット通販で販売しています。7月15日に会社が発表した2022年3〜5月期決算で売上高が21億300万円、営業利益が3億7100万円と会社計画(20億3900万円、3億3900万円)をともに上回ったのを受けて見直し買いを誘いました。

第4位の「 ファーストリテイリング 」はカジュアル衣料品店「ユニクロ」や「ジーユー」の店舗を国内外で展開しているほか、ネット通販も手掛けています。会社が、7月14日に2022年8月期の売上高が2兆2500億円、営業利益が2900億円と従来予想(2兆2000億円、2700億円)を上回りそうだとの見通しを発表したのが好感されました。

第5位の「 ラオックス 」は家電量販店や免税店を展開しインバウンド事業で成長しましたが、新型コロナ禍で事業の抜本的な見直しを迫られました。2022年6月には通販サイトを傘下の「シャディギフトモール」に統合しました。2022年12月期の売上高は600億円と前期比12%の減収見通しですが、営業損益は2億円の黒字と、前期の28億4600万円の赤字から回復する見通しです。

新型コロナ感染拡大の第7波では加速度的な新規陽性者数の増加に歯止めがかかっておらず、先行きの不透明感が増しています。政府が行動制限を課さなくても、個人が外出を控えるなどすればネット通販の利用が増加するとの思惑が広がりやすくなっています。

先週は米株式市場でハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数が3.3%高とダウ工業株30種平均(2.0%高)を上回る上昇となりました。これまでは、米金融政策の先行き不透明感から成長率の高いネット通販株などが売られやすい地合いでしたが、反転の兆しがあるようです。この米ハイテク株の戻りも、日本のネット通販株にとって追い風になっています。コロナ禍の国内ネット通販需要に加え、米株式相場の動向にも目配りしていきたいですね。

※北の達人(2930)、ココナラ(4176)、ラオックス(8202)は、記事執筆時点で証券金融会社の注意喚起銘柄に指定されています。