カップめんで健康に!? 世界の食を支える日清食品HD

ここが狙い目! 日興ストラテジー・セレクション/ 日興フロッギー編集部岡田 丈

今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。8月号では国内即席めんトップ企業の「日清食品ホールディングス(HD)」が新たに仲間入りしました! 早速、日清食品HDの投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。

即席めんのパイオニア「日清食品HD」

調理をしたくないときや、買い物に行けないとき、家計がピンチのとき……。買い置きできて、簡単・手軽に食べられる即席めんは、あれば助かる食品です。コロナ禍ではこれらの即席めんの特徴が世界中で認められ、なんと世界総需要が過去最高となりました。

そこで注目したいのが、今回仲間入りした「 日清食品HD 」です。同社は、1958年に世界初のインスタントラーメンである「チキンラーメン」を、1971年には世界初のカップラーメン「カップヌードル」を発売。即席めんのパイオニア企業です。

非即席めん事業や海外展開にも注力

日清食品HDは、日清食品や明星食品を子会社に有する国内即席めんのトップシェア企業です。「チキンラーメン」「カップヌードル」以外にも、2021年に45周年を迎えた「どん兵衛」および「UFO」など、数々のロングセラー商品を手がけています。

即席めん以外にも、さまざまな事業会社を有しています。たとえば、「行列のできる店のラーメン」を主力ブランドに持つ日清食品チルド、乳酸菌飲料「ピルクル」を主力ブランドとする日清ヨーク、「ぼんち揚」でおなじみのぼんちなど。2020年にはスナック菓子大手の湖池屋を連結子会社化し、飲料・菓子などで構成される非即席めん事業を強化しています。

加えて同社は中国、アメリカ、ブラジルを中心に、様々な国や地域で事業を展開しています。国内市場が成熟しているなか、同社は海外事業にも力を入れ、2022年3月期の海外売上高比率は29.7%となりました。2030年度には、実質的な利益のポートフォリオを約45%に拡大することを目指し、今後も推進する計画です。

現代社会の食の課題に向き合う「完全栄養食」

摂取量や摂取の仕方にもよりますが、即席めんやスナック菓子は健康面で不安視されることがあるのは否めません。先進国などを中心に飽食によるオーバーカロリー、偏食による栄養失調などの新たな健康リスクが増している昨今においては、なおさらかもしれません。

そこで同社は長年培った技術力を活かし、「完全栄養食」という新たな分野に取り組んでいます。これは、見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、たんぱく質などがコントロールされ、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素をバランスよく摂取できるものです。

2021年5月に発表した「日清食品グループ中長期成長戦略」によると、同社は既存事業コア営業利益(※)の5~10%を継続的にこの新規事業への投資に充てる方針です。中長期的にも、「食」の分野における新ビジネスに積極的に取り組む姿勢を示しています。

(※)営業利益から、減損等のその他収支影響や連結時円換算為替影響に加え、積極的先行投資を行う新規事業の損益を控除した管理指標

2022年5月には、このコンセプトのもと作られた「完全メシ」シリーズを発売。

これにより、インスタント食品を敬遠してきた健康志向の消費者を、新たな顧客層として獲得することも期待できます。今後の業績成長ドライバーの1つとして、新規事業にも注目していきたいですね。

商品力と経営力で2023年3月期は営業増益の見込み

小麦をはじめとした原材料価格高騰による影響は、同社にとっても例外ではありません。2022年3月期は売上収益が5697億円(前期比12.6%増)となったものの、営業利益は466億円(同16.1%減)となりました。

しかしながら、米州を中心とした値上げによってコスト上昇分を吸収できることなどを理由に、同社は2023年3月期の増収増益を見込んでいます。

もともと即席めんは生活防衛の面で受け皿になりやすく、インフレ耐性があります。それに加え、同社の「チキンラーメン」や「カップヌードル」といった強いブランド力、タイムリーに値上げを実施できる機動力、新規事業の推進を考えると、今後のさらなる業績拡大が期待できそうですね。

人生100年時代に向けて食を進化する

世界で初めて即席めんを世に送り出し、数々のロングセラー商品を世界中に届けている「日清食品HD」。人々の食と健康のために、美味しさ、手軽さはそのままに、栄養バランスの良さを加えた「完全栄養食」の開発・販売も推進しています。国内トップ企業の強みを活かし、新規顧客層の獲得、さらなる業績拡大に期待がかかる同社をこれからも応援したいですね。

2022年8月号では、ダイセキが除外となりました。子会社であるダイセキ環境ソリューションの業績不振に伴い、2023年2月期の業績計画を第1四半期(3−5月)の決算発表時点で下方修正しました。ダイセキが手がける産業廃棄物処理の成長性に変化はないものの、子会社の業績不振が長引くリスクを懸念しました。