コロナ第7波にピーク観測 「旅行」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「旅行」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する20銘柄の平均上昇率は3.2%と、好業績銘柄への買いなどから小幅に反発した東証株価指数(TOPIX、0.4%上昇)を上回りました(8月5日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

「第7波」、ピークを超えたとの声も

新型コロナウイルスの感染拡大は「第7波」で急拡大していますが、一部の民間予想ではピークを越えたとの見方が出ています。「第7波」が収束に向かうことで、政府が実施を見送った「全国旅行支援」などの需要喚起策が導入されるとの思惑が関連銘柄への物色を誘っているようです。

「全国旅行支援」で関連企業に恩恵

2020年の感染拡大の「第1波」後に政府が導入した需要喚起策「Go Toキャンペーン」では、国内旅行を補助する「Go Toトラベル」や飲食費を補助する「Go Toイート」などが、関連する企業に恩恵をもたらしました。

現在、県民が県内や隣接する都道府県に旅行・宿泊する際、各都道府県が国の支援をもとに補助金を給付する「県民割」が行われています。「全国旅行支援」はこれを全国に拡大するものです。

当初は7月前半の実施を予定していましたが、観光庁が7月14日に県民割を延長する一方で「感染状況を見極める」として全国旅行支援の実施延期を決めました。「全国旅行支援」が実施されれば、「Go Toキャンペーン」のときのように関連企業にプラスとなることが期待され、市場での関心も高いようです。

飲食店への予約増加で恩恵【ぐるなび】

上昇率首位の「 ぐるなび 」はインターネットサイト「ぐるなび」を通じた飲食店などの情報を提供。スマートフォンなどで飲食店への注文が完結するモバイルオーダーや食関連事業者への食材受発注サービスを強化しています。「全国旅行支援」によるネット予約件数の増加と、それによる収益回復が期待されています。

早割りで秋の旅客需要を取り込みへ【西日本旅客鉄道】 

上昇率2位の「 西日本旅客鉄道 」は、傘下のJR西日本ホテルズで、県民割などの延長を受け、ホームページでエリア別の対象ホテルを案内するなど割引適用に積極的です。三連休が3回ある9〜10月の旅客事業を取り込むため、期間限定の早期予約による座席の割引キャンペーン「WEB早得21」を発売しています。

旅行で地域活性化にも貢献【阪急阪神ホールディングス】

上昇率3位の「 阪急阪神ホールディングス 」は都市交通や不動産、旅行、国際輸送など幅広い事業を手掛けています。6月には傘下の阪急交通社がナビタイムジャパンとプラットフォーム「NICHER TRAVEL(ニッチャートラベル)」を始めました。このプラットフォームは、「旅を介して、地域の活性化や人々の交流に貢献する」ことを目指しています。

他社との連携を相次ぎ開始【エアトリ】

上昇率4位の「 エアトリ 」は、アプリ「エアトリ」を展開。「エアトリ」では、国内外の航空券の比較・購入や、新幹線・ホテルなどの予約が可能です。7月には日本航空のホームページ上で傘下のホテル予約サイト「エアトリ国内ホテル」の掲載を開始。また、ホテル・航空券の料金比較・予約サイトを運営するトラベルブックとも連携し「エアトリ国内・海外ホテル」の掲載を始めました。「全国旅行支援」実施をにらんだ布石を次々と打っています。

新たな旅行商品を展開予定【ANAホールディングス】

上昇率5位の「 ANAホールディングス 」は、9月から「はこだて西部まちづくりRe-Design」と共同で「ANA meets ART”COM”」と題した地域創生の実証実験を始めます。函館市に4名のアーティストを派遣し、滞在中に制作したアート作品の展示会を開催。アーティストが体感した函館を追体験できるような新たな旅行商品を展開する予定です。なお、8月1日に発表した2022年4〜6月期決算は、旅客需要の回復を受けて最終損益が4〜6月期としては3年ぶりに黒字に転換しました。

「全国旅行支援」開始のタイミングが焦点に

東京都の新型コロナへの新規感染者数は8月8日まで3日続けて前週の同曜日を下回っています。減少傾向が継続するかどうかは不透明ですが、感染者の急増局面は過ぎたようにみえます。旅行関連銘柄にとっては、導入が見送られた「全国旅行支援」がいつ始まるのかが焦点になりそうです。