円安+新車不足で「中古車」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「中古車」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する16銘柄の平均上昇率は6.0%と、米国のインフレが落ち着くとの観測から大幅に続伸した東証株価指数(TOP完IX、2.2%上昇)を上回りました(8月12日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

アップルインターナショナル、円安で業績を上方修正

中古車関連株が買われるきっかけになったのが、1996年から東南アジア諸国を中心とした中古車輸出事業を手掛けるアップルインターナショナルの業績の上方修正でした。8月5日に2022年12月期の売上高が従来予想の1.5倍、営業利益が3.6倍になりそうだと大幅な業績の上方修正を発表しました。

アップルは上方修正について、為替相場が急激な円安に変動し海外の中古車輸出事業が予想以上に好調に推移したのが主因と説明しました。日銀が金融緩和策の継続を鮮明にしているため、円はドルだけでなく、幅広い通貨に対して売られています。円安が進めば現地通貨建てでみた売上高が横ばいでも、円に換算すると増加することになります。円安の恩恵を受けるとの見方から海外への輸出を手掛ける銘柄を中心に中古車関連株が買われています。

中古車需要の高まりで価格は上昇基調に

半導体などの部品不足によって新車の納期が長期化しており、即納可能な中古車の需要は高まっています。新車の供給が滞っているため販売台数は減少していますが、価格は上昇基調です。中古車オークション最大手のユー・エス・エス(USS)によると7月の中古車の出品台数は前年同月に比べ1割近く減少した一方で、成約車両の単価は2割強上昇しました。中古車需要の強さも関連銘柄への物色を誘っているようです。

中古車輸出、国内で買取・販売も【アップルインターナショナル】

上昇率首位の「 アップルインターナショナルは国内の一般客からの買取やオークションで仕入れた中古車を海外の輸入業者に販売する中古車輸出事業と、「アップル」ブランドで展開する国内の中古車買取・販売事業が2本柱です。自動車の普及余地のある東南アジア諸国を中心として多国間の貿易ルートを構築し、自動車市場の流通の活性化と収益拡大に取り組んでいます。

ニュージーランドからオーストラリアに事業拡大【オプティマス】

上昇率2位の「 オプティマスは日貿・ジャパントレーディングとして創業し、1989年に中古車輸出事業を本格開始しました。日本での中古車の仕入れからニュージーランドでの販売や自動車ローン事業までを一貫して手掛けているのが特徴です。2019年にはオーストラリアの中古車ディーラーの株式を取得し、オーストラリアで事業を展開しているほか欧州への展開など新市場の開拓にも取り組んでいます。

世界150カ国以上に向けて中古車を輸出販売【トラスト】

上昇率3位の「 トラストは中古車輸出事業のほか、レンタカー事業、南アフリカでの海外自動車ディーラー事業の3つを手掛けています。中古車輸出ではディーラー向けの輸出に加え、ウェブサイトを通じて個人にも販売しており世界150カ国以上の納入実績があります。中古車輸出業界の競争激化を受けて、優良顧客の獲得や異なる販売経路を持つ国内外の企業との業務・資本提携を進めていく方針です。

SUVに特化した中古車販売店で成長【グッドスピード】

上昇率4位の「 グッドスピード日本国内で多目的スポーツ車(SUV)に特化した中古車の買取・販売店を展開して成長してきました。取り扱い車種はミニバンやメルセデスベンツなどにも拡大しています。中古車業界は小規模店が乱立しており、シェアの拡大を目指して1店舗に10億円以上の投資を必要とする大型店舗の新規出店を加速させる方針です。

米国、オーストラリアに店舗を展開【IDOM】

上昇率5位の「 IDOMは「ガリバー」ブランドの中古車買取チェーン最大手。買い取った中古車を中古車業者に販売していましたが、2014年以降は小売店舗の出店を進めています。海外では米国とオーストラリアに複数の店舗を展開しています。中古車取引の透明性を支援し、自動車販売店の課題解決を目指すプラット・フォーム事業をオーストラリアで、ウーバーのドライバーに日本の中古車を貸与するフリートマネジメント事業をアフリカのタンザニアで展開しています。

新車供給体制の正常化が焦点に

急速に進んだ円安は中古車輸出にとっては追い風ですが、新車の供給体制が正常化しない限り販売台数の大幅な増加は難しい状況です。2022年1〜6月の中古車の輸出台数は前年同期に比べ1.8%減りました(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ)。一方で新車の供給体制が正常化すれば、即納できる強みから高まっていた中古車への需要が減退する可能性もあります。円安の持続性も含め、新車の供給体制が正常化する時期を見極める必要がありそうです。