節約と資産運用で早期退職を目指す「FIRE(Financial Independence,Retire Early)」。47歳で資産1億円の「FIRE」を達成したおけいどんさんに、その投資法や節約法を解説してもらいます。あなたの「人生の選択肢」を広げる新連載が始まります!
何が起こるかわからないからこそ、人生に選択肢を
みなさん、はじめまして。
私、おけいどん(漢字では「桶井 道」)と申します。
このたび、ご縁があって日興フロッギーで連載を持たせていただくことになりました。
私は22歳で会社に入社してから、コツコツと貯金や株式投資を行ってきました。年収500万円に満たないごく普通の会社員でしたが、47歳で資産1億円に到達し、2020年秋に会社を退職しました。いわゆる「FIREの達成」です。
私は、お金があるだけ”人生の選択肢”があると思っています。定年まで会社員として働き続けることが、必ずしも人生の選択肢ではないということです。私は今「好き」を仕事にしています。
残念ながら、成熟国となった日本では預貯金だけでは将来的に厳しいという現実があります。労働者の給与は伸びず、金利が実質0なので、預貯金ではお金は増えないばかりか、インフレによって現在進行形でお金の価値は目減りしてしまうからです。
それに、今は元気に働いて給料がもらえていたとしても、人生は何が起こるか分かりません。途中でケガをしたり、病気になったりして、仕事が続けられなくなるかもしれません。親の介護で仕事を休むことも考えられます(私は介護休職の経験があり、現在進行形でも介護をしています)。
前置きが長くなりましたが、この連載では、FIREを達成した私なりに、投資や節約のこと、FIREのテクニックなどを発信していきます。みなさんの「人生の選択肢を増やすヒント」になれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
FIREってなに?
そもそもFIREとは、「Financial Independence,Retire Early」の頭文字をとったもので、日本語では「経済的自立と早期退職」と訳されます。
ここでいうFIREは、資産家や高給取りが若いうちに大金を稼ぎ、さっさと引退して悠々自適に暮らす、というものではありません。普通の会社員が株式や不動産などの資産運用で資産と不労所得を作り、60歳の定年を待たずに退職する、というものです。前出のとおり私も、最高年収が500万円に満たない、普通の会社員でした。
FIREは、はじめに米国でムーブメントが起こり、2020年頃から日本でもその言葉がよく使われるようになりました。関連書籍も出版され、新たな人生の選択肢として浸透してきています。
おけいどんにとっての「経済的自立」とは
では、FIREにおける「経済的自立」とは、どういう状態を指すのでしょう? 私が考える定義は、「必ずしも働かなくとも人生100年を生き抜くお金が準備できた状態」のことです。
100年を生き抜くお金は、資産額だけを考えると相当な額が必要になります。一時期「豊かな老後を過ごすために2000万円が必要だ!」という試算結果が話題になったこともありました。でも、大切なのは、キャッシュフローです。入ってくるお金(=不労所得)から出ていくお金(=生活費)を引いて、プラスになる状態を作ることが何より大事だと思っています。そのためには、株式投資から得られる配当金が必要不可欠です。
キャッシュフローがプラスであれば、通常の生活では資産の取り崩しが起こらないので、資産額のハードルが下がります。資産の取り崩しが起きるのは、ライフステージでの大きな出費のみになってくるわけですね。例えば、自家用車の購入、老人ホームの入居費用などです。
私の場合、保有している株式の配当は、2022年の見込み額で手取り180万円(月平均15万円)あります。加えて、単行本出版や執筆など「好き」を仕事にした収入もあり、すべての収入を合計すると月40万円ほどになります。この40万円から生活費を引き、残った額を投資に回して配当金を増やすことで、資産の取り崩しに備えています。
早期退職を決心した理由
そんな私が47歳で会社員生活にピリオドを打った理由は、4つあります。
1つ目は、資産が1億円に到達し、お金の準備ができたことです。非正規でゆるく働くことは視野に入れつつも、残りの人生は会社員として働かなくても、生活できると試算しました。
2つ目は、会社員としての自分に納得したことです。営業成績トップを取り社長表彰を受けたことや、米国大手企業と単独で取引成立したこと、3年間誰も契約できなかった案件を半年程度で契約できたこと……。逃げるように辞めるのではなく、会社員として、やりきった想いがありました。
3つ目は、自営業を営む父親が衰えてきていて、父の仕事を手伝いたいと思ったからです。私が退職してから分かったのですが、父は難病にかかっていました。よって、父の代わりに代表代理として働いて、業務を終わらせたり、同業者に引き継いだりしながら、廃業へと導きました。振り返ると、なかなかハードでしたが、会社員時代の知識や経験が活かせる業務だったので、即戦力として親孝行できました。
4つ目は、自身の内臓の持病が40代を前に悪化したことです。体調を考えると、60ないし65歳まで会社員として働き続けられるのか、不安がありました。
お金の準備ができたとはいえ、私は早期退職を決心するまで、たくさん悩みました。不安だらけでした。でも、すべてを解決してからにすると、いつまでも退職できず定年を迎えてしまうかもしれません。最終的には、自分の価値観や人生観、生き方などと照らし合わせて、決心しました。
FIREを目指す人は、さまざまな悩みや問題に直面すると思います。そのときは人生で何が大切か? 何を優先するのか? 何を取り、何を捨てるのか? それらとの相談になるでしょう。全てを取るのは難しいと思います。人生は取捨選択の連続ですからね。
ゴールを見据えて、ブレない投資を!
ちなみに、私の現在の資産は約1億2000万円になっています。内訳は、現預金が2200万円、日本国債が1000万円、保険が1300万円、投資が7500万円です。前出のとおり、2022年の配当金は180万円(年間・手取り)の見込みです。
FIREを目指す上で大切なのは、人生も資産運用もゴールベースで考えることだと思っています。私は、60歳でシニアマンションに入居すること、資産を1億5000万円、配当金を240万円(年間・手取り)にすることをゴールに設定しました。このゴールに到達するために、どう資産運用するかを常に考えています。
資産運用のゴール……資産1億5000万円、配当金年間240万円
老後までの目標を見通すにはまだ早いという20代、30代の方なら、10年後のことでもいいでしょう。少し大きな目標を設定してみてください。目標が決まったら、1年間ごとの目標に切り分けて、それを念頭に資産運用していきます。そうすれば、株安になったり為替が変動したりしても、それはノイズであり、ブレずに投資ができるでしょう。
資産運用は、時間と複利を味方にすることが重要です。コツコツ貯金と投資の両方ですね。レバレッジをかける(編集部註:借入を利用し、少ない資金を大きく動かすこと)などして飛び級を狙うのは危険だと思います。そこには落とし穴が多数あり、そのひとつひとつが深いからです。まずは、つみたてNISAやiDeCoなど、コツコツ投資できる非課税制度を利用すると良いと思います。その上で、まだ資金繰りに余裕があれば、ボーナスが出たときなどに、スポット(編集部註:好きなタイミング)で買うのも良いでしょう。
人生の選択肢は確実に増える
冒頭でもお話しましたが、私は現実主義なので、お金があるだけ人生の選択肢があると思っています。お金で避けられる不幸、お金で解決できる問題はあると考えます。よって、お金への想いはかなり強いほうです(笑)。なので、この先も60歳に到達するまでは資産運用を継続して、資産額1億5000万円は最低目標として、2億円にチャレンジするつもりです。
投資信託やETFなど、手間がかからない金融商品が多くある今は、FIREやセミリタイアの再現性が以前より高まっていると思います。お金の目途がつけば、必ずしも、会社員として働く人生がすべてではありません。
次回からは、具体的な運用の内訳、個別株の銘柄分析法、投資の出口戦略(投資の終活)、初心者向けのETFおよび投資信託の紹介、FIREを達成するための実践プラン、FIRE前に何を悩み・どう解決したかなど、お話ししていきます。
人生の目標に向かって、ともに前進しましょう!
・お金があれば人生の選択肢は増える
・FIREとは「経済的自立と早期退職」
・キャッシュフローがプラスになる仕組みで「経済的自立」を目指す
・退職のタイミングは自分の価値観や人生観と照らし合わせよう
・ゴールベースで目標を決め、ブレない投資をしよう