決算書ナゾトキトレーニング

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

決算書をエンタメに! ファイナンス入門者と上級者の対話形式による本書は数字が苦手な人にこそ読んでほしい一冊。ビジネスへの解像度が一段上がり、見えてくる世界の変わる本です。

話題企業の決算書でナゾトキしながらファイナンスを習得!

タイトルの通り、一種ミステリーのような味わいを持つ本書。初心者の疑問から始まるつかみといい、問いの立て方も秀逸です。「5兆円の当期純利益を達成したソフトバンクグループ。すごいけど通信業ってそんなに儲かるものだっけ?」だとか「3兆円で買収されたSlack、でも300億の赤字企業らしい。いったい何が起こったの?」だとか。

前者の例に答えると、ソフトバンクグループは通信業だけにあらず、Yahoo!やアリババやZOZOのほか、Uber EatsやLINEなど誰もがよく知るサービスを経済圏に抱えています。日本企業過去最高の当期利益の大半は投資によるもの。ただ、「そんなこと知っているよ」という人にも役立つのが本書であり、ナゾトキ本番もその先にあります。

というのも、同グループの決算書は日本一複雑と言われているからです。「Uberとアリババ、それぞれの株価は利益にどう影響するか、わかる方はいますか?」。孫会長は決算説明会の時に質問したそうですが、正解者はたった1人でした。Uberの株が上がればグループ利益も上がりますが、アリババの株価変動には左右されない。利益への影響は投資スタイルの違いによるもので、そうしたビジネスの仕組みも1章かけて紐解いていきます。

このほか、先のSlackはじめ、「メルカリが大赤字でも絶好調の謎」や「世界初のESG経営エーザイは何がそんなにすごいのか」「電通の本当の値段は?」などタイムリーな企業や話題が並びます。決算書から儲けの仕組みを学び、生きた用語や知識を学ぶ。対話形式ゆえに読み進めやすく「会計は過去、ファイナンスは未来を見る指標」というフレーズも心に残る。熟読することで「決算書の立体的な読み方」を習得できるようになる、そんな一冊だと思います。