iDeCo(イデコ)は年末調整が必要? 所得控除を受けるといくら戻るのかを解説

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iDeCo(イデコ)に加入している方は、年末調整や確定申告によっていくら税金が戻ってくるのでしょうか。「どういうこと?」が口癖のことこさんは、FP(ファイナンシャルプランナー)に教えてもらうことにしました。

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iDeCoは年末調整で所得控除を受けられる!

まずはiDeCoで支払った掛金で、所得税や住民税が安くなる仕組みについて解説します。

iDeCoの掛金は全額が所得控除対象~年収500万円なら約55,000円分の税負担が減る!~

iDeCoの掛金は、所得控除の一種である「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。支払った掛金と同じ金額だけ、課税所得が減り、そのぶん所得税や住民税が安くなります。

所得税や住民税は、以下の計算式で求める「課税所得」に所定の税率をかけて計算します。

「課税所得=給与所得(給与収入ー給与所得控除)ー所得控除」

所得控除の額は、配偶者・扶養家族の有無や生命保険の加入状況などによって変わります。つまり利用できる所得控除が多いほど課税所得が減り、所得税や住民税が安くなります。

たとえば、毎月23,000円のiDeCoの掛金として支払った場合は、年間で276,000円(23,000円×12ヵ月)が課税所得からさらに差し引かれます。

ポイントは、住民税の負担も軽減できるところです。iDeCoの掛金を拠出した年の所得税だけでなく、次年度の住民税も軽減されます。

それではここで、iDeCoに加入すると実際にどれくらいの節税効果があるのか確認していきましょう。以下の条件で試算します。

●職業:会社員
●年収:500万円(うち賞与80万円)
●iDeCoの掛金:毎月23,000円(年間276,000円)

【図①】年収500万円の会社員がiDeCoに加入し、毎月23,000円掛金を支払ったときの節税効果

結果は上の表のようになりました。モデルケースは会社員の方なので、12月の給与で27,600円分の所得税が戻り、翌年の住民税の額が27,600円減額されます。

所得税と住民税あわせて年間で約55,000円の税負担が減ります。単純計算ですが10年間でおよそ55万円節税でき、とても節税効果が高いと言えます。

自営業の方は、会社員よりも毎月の掛金の上限額が高いため、節税効果がより高くなりやすいです。たとえば課税所得が500万円の自営業の方が、毎月68,000円の掛金を支払ったとすると、所得税と住民税あわせて年間で約245,000円、10年間で約245万円節税できる計算になります。

ただしiDeCoに加入した際の節税効果は、個人の年収だけでなく配偶者・扶養家族の人数、生命保険の加入状況など、さまざまな要因で変化します。たとえば住宅ローン控除が使える方であれば、それだけで所得税が全額戻ってくる場合もあります。このように、iDeCoに加入しても思うように節税効果が得られない場合もあるため、注意しましょう。節税効果を正確に確認した場合は、税務署に相談してみましょう。

そもそも年末調整とは?

会社員や公務員の方が、iDeCoの所得控除を受けるには、年末調整で申告をしなければなりません。

年末調整とは、従業員の所得税を精算する制度です。会社員や公務員は、本人の代わりに勤務先が所得税を国に納めます。そのため勤務先は、従業員の給料から毎月所得税を源泉徴収しています。

源泉徴収した所得税の金額は、年始時点での従業員の状況を元にした概算金額で、実際の所得税は、その人の年間の収入によって変わります。年末になるまで年収は確定しないため、源泉徴収した所得税の金額と実際の所得税の金額が一致しないことがあります。

また勤務先は、従業員が加入している生命保険や、1年の途中で起こった扶養家族の変更までは把握できません。正しい所得控除の金額を計算するために、年末時点での状況を従業員に申告してもらう必要があるのです。

そこで、年末調整を行って従業員に状況を報告してもらい、正しい所得税の金額を再計算します。所得税を多めに源泉徴収していた場合は、従業員に返します。

iDeCoへの加入状況や支払っている掛金の額などについても、従業員が申告しなければ勤務先は把握できないため年末調整時に申告をする必要があるのです。

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とってもシンプル! 年末調整に必要となる書類と手続き方法

年末調整には「面倒」や「難しい」というイメージがあるかもしれませんが、iDeCoに関する申告は、とても簡単です。

3ステップで簡単にできる!

iDeCoの所得控除を利用するためには、年末調整時に以下の手順で申告が必要です。

1. 勤務先から受け取る「給与所得者の保険料控除申告書」を記入
2. 国民年金基金連合会から送られる「小規模企業共済等掛金払込証明書」の原本を添付
3. 期限内に担当部署に提出

「給与所得者の保険料控除申告書」を記入するとき、書類右下の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」と書かれている部分にiDeCoで拠出した掛金(年額)を記入します。

また、「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、毎年10月から11月ごろに、国民年金基金連合会から送付されます。必ず送られてきた原本を添付してください。

年末調整で申告を行い勤務先での処理が無事完了すると、12月の給与支払時に余分に支払っていた所得税が戻り、翌年度の住民税が安くなります。

そして翌年1月ごろに、勤務先から支払われた給与の合計額と、勤務先が代わりに納めた所得税の金額が記載された「源泉徴収票」を受け取って、年末調整が完了します。

申告する際の2つの注意点

「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、手紙やハガキのような形をしているため、誤って捨てないようにしましょう。年末調整の際にiDeCoの所得控除を申告するには、原則として原本を提出しなければなりません。

原本を紛失した場合は再発行の手続きが必要です。再発行には時間がかかるため、届いたらなくさずに手元に保管しておきましょう。

また、年末調整の方法は勤務先によって異なります。企業によっては、専用の人事システムに入力して年末調整を行い、「給与所得者の保険料控除申告書」を記入しなくても良いところもあります。

そして年末調整の期限は、勤務先によって異なるためあらかじめ確認しておきましょう。場合によっては申告期間が1週間しかないこともあります。

年に1度しかしない年末調整は、慣れない作業で思うように進みません。事前に期限や手順を確認しておくことで「仕事が忙しくて気付いたら期限が過ぎていた」という事態を避けられます。

確定申告の方法も確認しておこう

気付いたら年末調整の期限が過ぎていた!」という方は、確定申告をしましょう。確定申告とは、源泉徴収や年末調整がない自営業やフリーランスの方が、1年間の収入と所得税の金額を計算して、所得税を国に納める手続きのことです。

確定申告でも税金が戻ってくる!

会社員や公務員の方は、年末調整で申告し忘れた控除がある場合や、医療費控除のような年末調整では申告できない所得控除を受ける場合、確定申告を行うことができます。

給与収入のみの方が確定申告でiDeCoの所得控除を申告するためには、「確定申告書A」に必要事項を記入、そして「小規模企業共済等掛金払込証明書」の元本と、勤務先からもらう「源泉徴収票」を添付して税務署に提出します。

「確定申告書A」は第1表と第2表に分かれており、記入する項目は以下の通りです。

●第1表:「小規模企業共済等掛金控除⑦」に年間で支払った確定拠出年金の額を書く
●第2表:「⑦小規模企業共済等掛金控除」の掛金の種類に「個人型確定拠出年金」、「支払掛金」と「合計」の欄に年間で支払った確定拠出年金の額を書く

【図②】確定申告書A 第1表

【図③】確定申告書A 第2表

その他の項目は、勤務先から配布される「源泉徴収票」を元に記入していきましょう。

ちなみに、自営業の方や2箇所以上から収入がある会社員の方がiDeCoの所得控除を申告するためには、「確定申告書B」を使用します。

確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロードして手書きで作成できますが、国税庁ホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成すると、金額を自動で計算してくれるため便利です。

確定申告の期間は、例年2月16日から3月15日前後です。税金が戻ってくる場合は、4月から5月ごろに指定の口座に振り込まれます。

まとめ
iDeCoは、掛金を支払って年末調整を行うことで、所得税や住民税が安くなります。
もし年末調整での申告を忘れてしまった場合でも、確定申告をすれば大丈夫です。
またiDeCoには、運用中や積み立てたお金を受け取るときにも税制上のメリットがあります。運用商品の選定をきちんと行うことで、老後の資金を効率よく貯められる可能性があります。
ただし、いくら税制上のメリットがあるからとはいえ、無理は禁物です。毎月の掛金は今の生活を圧迫しない範囲にとどめましょう。iDeCoの税制上のメリットを理解した上で、どれだけの掛金を支払っていけるのかを家族と相談して、iDeCoで老後の資金作りを始めてみてはいかがでしょうか。
※この記事は2020年1月22日に公開した内容を、2021年5月26日に更新して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

執筆:品木 彰(しなき あきら)
FP、保険・金融専門webライター。大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後、人材会社で転職コンサルタントとしての勤務を経て、2019年1月よりWebライターとして独立。 保険、不動産、税金、貯蓄術など幅広いジャンルの記事の執筆や監修を行なっている。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。