無償化や給付金も! 住民税非課税世帯のメリットとは

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

みなさんこんにちは! 公認会計士・税理士の山田真哉です。
物価が上がり続けていることから、政府は住民税非課税世帯を対象に、1世帯当たり5万円を給付することを明らかにしました。今回は、最近いろんなメリットが増えている「住民税非課税世帯」とは一体どういうものなのか、解説していきたいと思います。

日本の住民生活のルール

まずは、住民生活の大前提について見ていきましょう。

住民は、住んでいる地域のために住民税を毎年払うというのが大原則です。住民税は、収入から経費を引き、そこから控除を引いて残った「所得」に対してかかります。所得税も同じような仕組みですが、所得税の場合は、所得に応じて5%~45%と幅がある一方で、住民税の場合は一律10%になります。

厳密には、これにプラスで「均等割」といって、1人あたり5000円を上乗せした金額を住民税として払います。住民税の金額は、地域によって若干誤差はあるんですが、多くの自治体は10%+5000円と覚えても、そんなに問題はありません。

それから、住民税は基本的に前年の所得で計算するので、前年の所得が0円だったら住民税はかかりません。たとえば、2021年1月~12月の所得が0円だったら、2022年の住民税は0円になるということです。世帯全員が住民税0円の場合を「住民税非課税世帯」と呼びます。

住民税非課税世帯になると、住民税が払えないなら生活が大変だよね、じゃあ地域で援助しますよ、というのが、今僕らが住んでいる日本のルールです。

住民税非課税世帯のメリット

では、住民税非課税世帯へはどんな援助があるのか、いくつかご紹介します。

・国民健康保険料の減免
・NHK受信料の全額免除
(住民税非課税世帯かつ身体障害者手帳をお持ちの方がいる場合など)
・0歳児から2歳児の保育料無償化
・大学の無償化
・高額療養費の減額
・高額介護サービス費の減額 など

他にも、各種自治体ごとに色々なサービスが受けられます。とりわけ昨今大きいのが、国からの給付金ですね。2022年も9月いっぱいまで10万円の給付金が設定されていますし、この秋も、物価高騰により5万円の給付金が検討されている、という状況です。

そんなメリットがたくさんある住民税非課税世帯ですが、収入がいくらまでなら所得が0円になるのか、お話ししていきたいと思います。

給与収入の場合のラインは?

今回は、給与収入の方のケースを2つご紹介します。正社員や派遣社員、パート、アルバイト、いわゆる雇用契約の場合は、すべて当てはまります。

①収入100万円の単身者のケース

まずは単身者の場合ですが、仮に年間の収入が100万円だったとしましょう。この収入は、毎月の通勤手当などの必要手当は含みません。

給与収入の場合は「給与所得控除」といって、収入に応じて引ける経費の額が決まっています。たとえば、収入が100万円の場合は引ける金額が55万円となります。そこから控除を引いていくのですが、非課税になるかどうかの計算をするときは、一般的な社会保険料や寄付金、ふるさと納税、医療費、iDeCoなどは除外します(実際に住民税を払うときは、これらの控除も考慮するんですが、非課税かどうかの計算の時には入れません)。

では何を控除するかというと、これは地域によって定額で決まっています。たとえば、いわゆる大都市圏と呼ばれる「1級地」に住んでいる場合は、45万円です。なので、給与収入がちょうど年間100万円だった場合は、給与所得控除の55万円と1級地の場合の控除額45万円を引くと、所得が0円になり住民税も0円になります。つまり、単身者で1級地に住んでいる場合、住民税が0円になるには、収入が100万円を下回れば良いということです。

では、大都市圏以外の地域だったらどうでしょう? 日本では地域が1級地、2級地、3級地と、3つの区分に分けられていて、大都市が1級地、いわゆる中核都市が2級地、それ以外が3級地となります。

「3級地」に住んでいる場合は、控除は38万円です。なので所得ゼロになるのは、収入がちょうど93万円の場合になります。「2級地」の場合は、だいたい1級地と3級地の間くらいだと思ってください。

②収入が254万円で3人扶養家族がいるケース

扶養家族がいる場合は、計算が変わります。たとえば、給与収入が254万円で3人扶養家族がいるケースで見てみましょう。

収入が254万円だと給与所得控除は84万2000円となります。そして1級地に住んでいる場合は、171万円を控除として引くことができます。171万円となる計算式は、35万円×(本人+配偶者+その他扶養家族)+31万円です。今回の場合は、本人含めて4人家族なので、35万円×4+31万円=171万円となるわけです。

この171万円の控除を引くと、所得がマイナス1万2000円になるので、所得は0円になります(所得はマイナスの場合、0円とカウントします)。つまり、3人扶養して1級地に住んでいる場合、住民税が0円になるには、収入が254万円以下なら良いということです。

もし収入が255万円だったら、所得はちょっとだけ出てしまいます。まさにこれが、住民税非課税かどうかのギリギリのラインなんですよね。なので、人によっては、残業1時間多くやったばっかりに収入が255万円になって住民税非課税から外れた、という方もいると思います。

副業や副収入がある場合

住民税非課税世帯の計算は、他にも色んなケースがあるんですが、たとえば副業とか副収入がある場合は、確定申告の際の「合計所得」を見ないと計算ができません。収入から経費を引いたものを「合計所得」と呼びますが、合計という意味から分かる通り、給与収入や年金収入、個人事業主としての収入など、すべてひっくるめた所得が合計所得となります。

この合計所得から住んでいる地区ごと、扶養家族ごとに決まっている控除を引き、所得が0円だったら住民税非課税、というルールになります。なお、この合計所得には、たとえば相続で入ってきたお金などは住民税の合計所得には計算されません(相続で入ってきたお金は相続税を払っているため)。

また、株式などを特定口座で取引して確定申告を不要にしている場合も、合計所得には入りません。たとえば、確定申告不要制度を使って、配当金だけで生活している人は、住民税非課税の可能性が高いですね。配当金と少しのお仕事で生活できる方は、住民税も非課税なので、いろんなサービスも受けられて、まさに究極のFIRE、という人もいるわけですね。

住民税非課税のはずでも、漏れている可能性に注意

ここまでお話ししてきて、「あれ、私は収入少ないけど、住民税非課税になっていないな」と思った方がいるかもしれません。給付金の通知もこないし、おかしいな、と思っている方、じつは、この住民税が非課税になるかどうかは、基本的には自己申告制度によるものなんです。

会社員の方は、会社の年末調整で知らせてくれたり、公的年金収入だけの方は、年間400万以下だったら確定申告不要という制度がありますので、その場合はいいんです。ただ基本的には確定申告、もしくは住民税申告をすることによって、「あなたは住民税非課税ですね、じゃあサービスしますよ」という順番になります。なので、個人事業主やフリーランスの方で、確定申告や住民税申告をしてない方は、もしかしたら住民税非課税なのに、漏れている可能性がありますので、必ず申告するようにしてください!

あえて非課税世帯になるケースも

最近は、国が「何かあったら住民税非課税世帯に給付金を出すよ」みたいなことを散々やっていて、住民税非課税世帯へのサービスがかなり手厚いです。なので、わざと家庭内別居したり、わざと世帯分離する、という夫婦が増えるかもしれません

実際に親子で同居していても、世帯分離(編集部註:1つの家に同居しながら、住民票の世帯を分けること)をあえてするというご家庭は結構あります。親は親、子は子で、それぞれ生活費が別だったら、世帯分離は可能です。

さらに、夫婦間の世帯分離をするという方もいらっしゃいます。夫婦では住民税課税世帯だけど、1人は単身の住民税課税世帯、もう1人は住民税非課税世帯になるというケースもあるわけです。ただ、この夫婦の世帯分離については別居してるとか、それぞれ生活費が別であるとか理由がないと認められません。

住民税非課税世帯になったらサービスが受けられ、1000円でも収入が上回ったら非課税世帯から外れてサービスも受けられず、給付金ももらえない。この少しの差が大きすぎるので、個人的には国の制度としてはちょっと良くないな、と思っております。

というわけで、今回は住民税非課税世帯についてお話ししました。自分も住民税非課税世帯に該当するかもしれないと思った方は、一度詳しく調べてみると良いと思います。「〇〇市 住民税 非課税」といった形で検索すると、出てくると思いますし、自治体へ問い合わせをしても良いと思います。なお、年金収入の場合や個人事業主の場合については、僕の動画でも解説していますので、気になった方はご参照ください。

それでは、今回はこのへんで! ば~いば~い!