グリーンボンドってなに? 環境に配慮した企業の資金調達

これだけは知っておきたいESG投資のこと/ SMBC日興証券 サステナブル・ソリューション部岡田 丈

企業や自治体が事業を運営するうえで、必要な資金を調達する手段のひとつが「債券(ボンド)」です。なかでも「グリーンボンド」は環境に配慮した事業に役立てるために発行されるもので、2020年は年間で総額1兆円も発行されるなど注目が集まっています。そこで今回は、グリーンボンドとはどのようなものなのか、私たちの暮らしとどのように関係しているのかについて紹介していきます。

グリーンボンドとは

グリーンボンドは、地球温暖化対策や再生可能エネルギー促進など、環境分野への取り組みに特化した資金を調達するために発行される債券のことです。企業や自治体などの発行体はグリーンボンドの発行により、環境分野の事業に必要な資金を集めるということを明確に示すことができます。これにより、環境問題への関心が高い投資家へ投資参加を促すことができ、円滑に資金調達を進めることが可能となります。

また、発行体は世間に対し、環境分野へ取り組んでいることや、貢献していることをアピールすることができます。グリーンボンドは、2008年に世界銀行グループである国際復興開発銀行(IBRD)が史上初めて発行しました。その後、環境への関心の高まりとともに続々と発行され、その市場規模は急速に拡大しています。

7年で14倍に膨れ上がるグリーンボンド市場

グリーンボンドの市場規模がどれだけ拡大したかを、具体的に数値で見てみましょう。2014年、国際資本市場協会(ICMA)による「グリーンボンド原則」策定をきっかけに、市場規模は急速に拡大しています。2014年のグリーンボンドの年間発行額は約413億米ドルでしたが、2021年の年間発行額は約5886億米ドルで、市場規模は約14倍に拡大しています

国内では、2014年に日本政策投資銀行が国内初のグリーンボンドを発行して以来、グリーンボンドの発行は急速に拡大していきました。2016年度は748億円にとどまっていた年間発行額ですが、2021年度は約1兆8651億円まで発行額が拡大。グローバル市場同様に、急成長しているマーケットであることがわかります。

国内での発行額増加は、環境省によるグリーンボンド市場の整備や支援が背景にあります。環境省はICMAが発行したグリーンボンドに配慮したグリーンボンドガイドラインを策定。また「グリーンファイナンスモデル事例創出事業」や「グリーンボンド等促進体制整備支援事業(補助事業)」等の政策によって、グリーンボンドの発行体を支援しています。環境保護への関心の高まりに加え、こうした環境省の政策を通じて、今後もグリーンボンドの更なる発行増加が期待されています

グリーンボンドの具体的な事業例

では具体的にどのような事業でグリーンボンドは発行されているのでしょうか。ICMAが策定したグリーンボンド原則によると、適格なグリーンプロジェクトは以下の通りです。ただしこれらはあくまで例示であり、これら以外も適格と認められる可能性もあります。

実は身近なところに使われているグリーンボンドの資金

もう少し具体的に、東京都によるグリーンボンド発行の事例を見ながら、グリーンボンドの発行により調達された資金がどのような事業に使われ、私たちの生活にどのように関わっているのかを見てみましょう。

東京都はSDGs・ESGの潮流本格化に備える形で、 2016年12月に住民参加型の環境サポーター債を発行しました。その後、2017年度に国内の地方自治体において初となる外部評価を取得したグリーンボンド(東京グリーンボンド)を発行。直近では、2021年の11月にも個人向けグリーンボンドを発行しています。

グリーンボンドによって調達された資金が役立てられる対象のことを「資金使途」と呼びますが、東京都のグリーンボンドの資金使途は、「東京都環境基本計画(2016年3月)」に基づいて設定された5つの環境事業区分に分類されています。

東京グリーンボンドの調達資金はこれまでに、上の表の環境事業区分に該当する様々な環境施策に充当され、効果を上げています。ここでは、充当事業とその効果について東京都にて公表されている内容をご紹介します。

事例:スマートエネルギー都市づくり~都有施設の改築・改修(教育庁)

東京都では、子どもたちの良好な学習環境を維持するために、老朽化した施設の改築・大規模改修工事を計画的に実施しています。

こうした改築工事等を行う際、再生可能エネルギーを積極的に活用することで環境負荷を軽減することを目指しています。具体的には都立高校の校舎等に太陽光発電設備を設置して、施設内の使用電力の一部に太陽光エネルギーを活用し、購入電気使用量の削減に役立てています。

その効果として、都立学校の改築・改修による再生エネルギー使用量は110万7138kWhと公表されています(2022年3月時点)。これは、一般家庭256軒分の1年間の電力消費量に相当します(2017年度の一般家庭電力消費量:4322kwh)。

私たちの生活を支えるグリーンボンド

グリーンボンドは、一般的に機関投資家(プロの投資家)向けに販売されることが多いものです。しかし、今回ご紹介した東京都のように、個人投資家向けに発行されるケースも珍しくありません。

グリーンボンドは、私たちが生活していく上で必要となる施設や設備の整備に役立てられています。実際に集められたお金がどのように使われているのかを意識することで、グリーンボンドが少し身近なものに感じられるのではないでしょうか。