株式市場で「不動産」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は0.7%と、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めへの警戒感などから軟調だった東証株価指数(TOPIX、1.3%下落)に対して「逆行高」となりました(10月14日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
7~9月期の投資用アパート価格が過去最高に
不動産関連株が買われるきっかけになったのは、投資用不動産投資サイト「楽待」を運営するファーストロジックが7日に発表した2022年7〜9月期の投資用不動産の市場調査の結果でした。一棟アパートの価格は7500万円を超え、2012年の集計開始以来の過去最高額を記録。また、分譲マンションとは違って、主に投資用不動産として区分けされた「区分マンション」の価格は2四半期連続で上昇し、21年4〜6月期に次ぐ過去2番目の高値を付けました。
ファーストロジックによると円安による建築コストの上昇などから、不動産価格は上昇傾向にあるといいます。一方、日銀は金融緩和を続ける姿勢を鮮明にし、円相場が米ドルに対して歴史的な安値を付けています。円安を背景に、海外投資家が日本の不動産に積極的に投資するとの思惑もあり、不動産関連銘柄が物色されています。
「グローベル」ブランドで不動産業を展開【ミライノベート】
上昇率首位の「 ミライノベート 」は繊維事業を手掛ける井波機業として1937年に創業しました。91年に住宅事業部門を設立し、93年から自社開発マンションの分譲事業に参入しました。現在は太陽光発電事業や投資事業も手掛け、不動産事業は「グローベル」ブランドで展開。マンションやアパート、戸建てなどの開発や企画、販売を手掛けています。22年10月12日には投資事業の利益計上や太陽光発電の売電収入が堅調に推移しているとして、2023年3月期の連結営業利益が6億9500万円と従来予想を4億円あまり上回る見通しだと発表しました。
上場REITの運用や不動産再生事業を展開【いちご】
上昇率2位の「 いちご 」は不動産ファンドなどの運営を目的に2000年に設立したピーアイテクノロジーが前身で、16年に現在の社名となりました。上場不動産投資信託(REIT)の「いちごオフィスリート」と「いちごホテルリート」、インフラ投資法人の「いちごグリーンインフラ」の運用や、遊休地を活用したクリーンエネルギー事業、不動産資産価値を向上させる「心築(しんちく)事業」を手掛けています。10月13日に発表した2022年3〜8月期連結決算は、商業施設やオフィスなどの販売用不動産の売却などで営業利益が前年同期比20%増と好調でした。
歴史的な円安の功罪を見極めへ
そのほか、不動産開発と不動産投資を手掛ける総合不動産デベロッパーの「 ディア・ライフ 」、駐車場の管理運営など駐車場事業やスキー場やテーマパークの開発・運営を担う「 日本駐車場開発 」、大和ハウス工業グループで首都圏を中心にマンションの開発や販売を手掛ける「 コスモスイニシア 」も買われています。
金融政策の方向性の違いを主因に円の対ドル相場は32年ぶりの1ドル=149円台まで下落し、150円の心理的な節目も視野に入っています。ドル建てでみた日本の不動産は割安感が増していますが、円安はマンションの建築材などの価格上昇につながるため販売価格は上昇基調にあります。投資家がどの程度の値上がりまで許容できるのか、マンションの販売動向などをしっかり確認していきたいですね。