DX加速で売上好調 「SaaS」関連株が上昇

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株式市場で「SaaS」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は1.5%と、米長期金利の上昇を背景に下落した東証株価指数(TOPIX、0.9%下落)に対して「逆行高」となりました(10月21日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

「楽楽清算」のラクス、9月の売上高が前年同月比34%増

「SaaS(サース)」とは「サービスとしてのソフトウエア=ソフトウエア・アズ・ア・サービス」の略で、かつてはCDなどのパッケージで販売していたソフトをクラウド経由で提供するサービスです。製品の一括購入やインストールの必要がなく、コストも抑えられるため企業の採用が進んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大で企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)化を加速させているのも追い風です。

SaaS関連銘柄が買われたきっかけは、交通費・経費精算システム「楽楽清算」や電子請求書発行サービス「楽楽明細」などをSaaSで提供しているラクスが、10月17日に発表した月次売上高でした。9月の全売上高は、前年同月比34%増と2019年以降続いている3割前後の伸びを維持しました。企業がDX化を加速しているとの見方から、SaaS関連銘柄が物色されています。

子会社でSaaSを展開【USEN-NEXT HOLDINGS】

上昇率首位の「 USEN-NEXT HOLDINGS 」は、有線音楽放送を祖業に、コンテンツ配信や店舗サービス、通信など幅広い事業を手掛けています。2019年に、USEN Smart Worksを設立し、USEN ICT SolutionsからSaaS事業を継承。「USENGATE02」のブランド名で米グーグルの企業向けサービス「Google Workspace」や、業務支援ソフト「キントーン」などを手掛けるサイボウズの製品などを再販しています。10月13日に発表した2022年8月期の連結決算はコンテンツ配信のユーザー数が順調に拡大したことなどから、売上高と営業利益が6期連続で過去最高を更新しました。

約2000社がサービスを導入【HENNGE】

上昇率2位の「 HENNGE 」は、シングルサインオン(SSO、1度認証すれば複数のサービスを認証を意識せず使用)が可能な「HENNGE One」サービスを展開、多様な業種で約2000社の導入実績を誇ります。9月27日にHENNGE Oneが米キーパー・セキュリティーのパスワード管理サービス「Keeper」に対応したと発表するなどサービスの拡充を進めています。

需要は着実に拡大も成長と収益性のバランスがカギに

そのほか、「 フィードフォースグループ 」は、EC(電子商取引)サイトへの商品掲載や広告運用自動化などのツールをサブスクリプション(定額課金)で提供。「 サイボウズ 」は、10月25日に9月の売上高が前年同月比で18%増えたと発表。「 マネーフォワード 」は、バックオフィス向けSaaS「マネーフォワード クラウド」などを展開、10月17日に発表した2022年6~8月期決算で2024年11月期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が黒字化する見通しと発表。これらの銘柄も好感され買われています。

米調査会社のリポートオーシャンによると、世界のSaaS市場は2022〜30年までで、年平均成長率が19%弱になると予測しています。企業の需要拡大を背景に順調な成長が続く見通しですが、比較的参入障壁が低いSaaS関連銘柄にはスタートアップ企業も多いのが実情です。売上高成長率が大きい企業でも、広告宣伝費が膨らみ営業赤字となっている場合が珍しくありません。成長を続けつつ収益力も高いといった、成長と収益性のバランスが良い企業を見極めて投資していきたいですね。