株式市場で「リスキリング」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.8%と、米国の利上げペースが鈍化するとの思惑から反発した東証株価指数(TOPIX、0.9%上昇)を上回りました(10月28日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
岸田内閣、リスキリング支援など含む経済対策を閣議決定
政府は10月28日に開いた臨時閣議で物価上昇などに対応する総合経済対策を決めました。国と地方自治体、民間投資をあわせた事業規模は71兆6000億円程度になります。対策には物価高対策としての電気・ガス代の支援などとともに、「労働者のリスキリング支援」が盛り込まれました。
リスキリングは、「職業能力の再開発、再教育」を意味します。政府は労働者が最新の専門知識などを学ぶことで、キャリアアップにつなげて賃金上昇を実現したい考えです。労働者の企業間や産業間の移動の円滑化などとあわせ、「人への投資」の施策パッケージを5年間で1兆円に拡充します。このような施策を受け、市場ではリスキリング支援を手掛ける銘柄や社員のリスキリングに積極的な銘柄が物色されています。
動画教材でデジタルスキル教育サービスを展開【ランサーズ】
上昇率首位の「 ランサーズ 」は、顧客企業の依頼に対してサービスを提供できるフリーランスや、副業人材などのプロを迅速にマッチングするサービスを展開しています。提供しているサービスのうち「ランサーズ・デジタル・アカデミー」では、IT(情報技術)人材として活躍したい人向けに、動画教材によってウェブ上で受講できるデジタルスキル教育サービスを展開しています。
子会社が法人向け人材育成・研修サービスを展開【富士通】
上昇率2位の「 富士通 」は、1977年に設立した富士通ラーニングメディアを通じて、法人向けの人材育成や研修サービス、個人向けパソコン教室を展開しています。2022年10月から23年3月までのコースでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に対応するためのリスキリングなどの分野について122コースを拡充しました。
リスキリングは喫緊の課題、息の長い投資テーマ
そのほか、「 リンクアンドモチベーション 」は、コンサルティングを通じた組織開発、キャリアスクールなどによる個人開発、人材紹介などのマッチング事業を展開。「 Institution for a Global Society 」は、個人の気質や行動特性に基づき、DX人材の育成・研修や評価をするサービスを提供。「 インソース 」は、企業への講師派遣や公開講座などを通じ「DX理解研修」等26種のリスキリングプログラムを充実。これらの銘柄も買われています。
AIの活用やビッグデータ、あらゆるモノがネットでつながる「IoT」などによって、DX化や自動化が進行し、これまで人が担ってきた仕事が置き換えられる可能性が高まっています。一方、DX化に対応できる高度な知識や技術を持った人材は不足しており、リスキリングは喫緊の課題です。少子高齢化が加速度的に進む日本では息の長いテーマになる公算が大きいだけに、政府の積極的な取り組みの持続性を見極めていきたいですね。