10代の兄妹とカイゾクが語る地政学入門。地形が見えると政治や金融の根っこも見えてくる。本気でお金に強くなりたい大人にこそ読んでほしい一冊です。
海の読み方を知れば、政治経済とお金の流れもつかめる!?
何しろ海に対する見方が変わる本です。貿易から政治経済、情報戦から核ミサイルの問題まで全てが海に還っていくような構成に美しさすら感じます。
貿易の運送手段を問われれば、「今の時代、飛行機の方が多いよね?」と答えてしまいそうになる自分でしたが、実際には9割が船便経由(島国の日本においては99%)なのだそう。iPhoneなどのデータのやり取りも99%が海底ケーブルで行われており、文字通り「海を押さえれば世界の情報も押さえられる」状態とのこと。
さらにいえば、「核ミサイルってどこにある?」の根源的な問いの答えは、これまた海の中。①陸地では他国に見つかりやすい②原子力潜水艦を隠すため、海底でも特に水深のある場所が望ましいーーゆえですが、この流れで中国が南シナ海をめぐって揉めている背景も触れられます。「ミサイルを隠す海が欲しいから」ですね。
地政は国の豊かさにも影響します。アメリカは圧倒的に地形に恵まれており、赤道や北極から程よい距離にある。要は、暑すぎず寒すぎず、人も集まりやすい。太平洋、大西洋に囲まれているからこそ侵略もされにくく、そもそもお金持ちになりやすい環境にあるのだそう。
これに対し、不利な地形の代表が朝鮮半島です。中国やロシアなど大国に囲まれ、国の境目に大きな川や山もない。しかしながら、韓国は今や世界のエンタメをリードしていますよね。日本より人口もずっと少ないため、国内市場だけで経済は成り立たない。厳しい条件の下、逆転の発想で世界を目指したというくだりは、何かのヒントにもなりそうです。
ちなみに、本書の面白さを要約すると「なるほど、そういうことだったのか!」のオンパレード。「情報というのは集めすぎると持っていないことに近くなっていく」というフレーズも印象的ですが、雑多な情報を活かすには根本の土台や土壌(地政学)が必須なのだなと改めて実感しました。