「デジタル円」実証実験は第3段階へ

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、日銀が3メガバンクや地銀と実証実験を行う「デジタル円」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

金融システム関連株に物色

日銀が「デジタル円」の発行に向け、3メガバンクや地銀と実証実験を行うことが明らかになったと、複数メディアが報じました。2023年春以降に、実際の運用を想定した検証を始めるとしています。

これを受け、金融システム開発に強い「 ニーズウェル 」「 クロスキャット 」が連日の年初来高値を更新。

このほか、デジタル通貨のプラットフォームづくりに精力的な「 インターネットイニシアティブ 」、かつてみずほ銀行のJコイン構想で思惑人気を集めた「 アイエックス・ナレッジ 」などにも物色が向かいました。

また、同日はNTTデータの小口送金サービス開発支援発表で一時ストップ高となった「 アイリッジ 」も、デジタル通貨関連の一角として度々注目されています。

世界各国で「デジタル通貨」の開発競争が過熱

「デジタル円」は、現金と同様に使える電子的な法定通貨のことで、CBDC(中央銀行デジタル通貨)とも呼ばれます。日銀は、2021年4月に実証実験の第1段階である「概念実証フェーズ1」、2022年4月に「概念実証フェーズ2」を開始しました。

フェーズ1では、CBDCシステムの基盤となる「CBDC台帳」を中心に、実証環境を構築したうえで、CBDCに関する基本的な取引(発行、払出、移転、受入、還収等)を的確に処理できるかどうかの検証が行われました。フェーズ2ではさらに様々な周辺機能を付加し、その実現可能性や課題を検証しています。

日銀は「現時点でCBDCを発行する計画はない」と繰り返しているものの、2023年に始まるフェーズ3では民間事業者や消費者が実地に参加する形式が想定されており、実用化に向けた準備が本格的に進められている印象です。

CBDCへの関心は世界で高まっており、カンボジアやバハマといった新興国を中心に、既にCBDCが正式導入されている国・地域もあります。

目下、世界の中央銀行が動向を注視しているのは中国の「デジタル人民元」です。実証規模は着々と拡大し、2022年8月末には試行地区における累計取引件数が3億6000万件、金額にして1000億元を突破したと伝えられました。

デジタル人民元で基軸通貨の主導権を握ろうとする中国に対し、米国も「デジタルドル」の研究開発に乗り出す意向を示すなど、開発競争が過熱しています。

(出典:日本証券新聞)