安全保障強化で需要拡大期待 「防衛」関連株が上昇

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株式市場で「防衛」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.4%と、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え小幅高にとどまった東証株価指数(TOPIX、0.4%上昇)を上回りました(12月9日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

防衛費を2027年度にGDP比2%へ

11月28日、岸田文雄首相が、省庁横断の総合的な防衛費を、2027年度に国内総生産(GDP)比2%に増額するよう関係閣僚に指示したと伝わりました。北朝鮮による相次ぐミサイル発射や台湾海峡を巡る緊張感の高まりなど、東アジアの厳しい安全保障環境を踏まえたかたちです。防衛能力の増強が不可欠と判断し、従来の1%程度から増額する方針です。
また、12月1日には、政府が与党に対し、2023年度から5年間の防衛費の総額を40兆円超とする方針を伝えました。現行の中期防衛力整備計画から5割ほどの増額で、過去最大といいます。大幅な予算の増加を受け、防衛装備品の需要が拡大するとの期待から防衛関連銘柄が物色されています。

防衛力強化の方針を背景に需要増を期待 【川崎重工業】

上昇率首位の「 川崎重工業 」は、日本有数の航空機メーカーです。P-1固定翼哨戒機やC-2輸送機など防衛省向けに航空機の開発・製造を行っています。同社は、防衛省向けについて、抜本的な防衛力強化という方針を背景に、今後の需要増を期待しています。なお、2022年度第2四半期決算発表時に、防衛省向けを含む航空宇宙システム事業の2022年度受注を、防衛省向けの他、ボーイング向けの増加や為替前提の変更も要因に上方修正しています。

日英伊で次期戦闘機を共同開発【三菱重工業】

上昇率2位の「 三菱重工業 」は艦艇や特殊機械、戦闘機、ヘリコプター、誘導機器からサイバーセキュリティーまで幅広い防衛装備品を提供しています。12月9日、日本、英国、イタリアの3ヵ国の首脳が、次世代戦闘機を共同で開発することを発表。これを受け、同社は、各国政府及び企業と緊密に連携しながら、次期戦闘機の開発に取り組んでいくと発表しました。

防衛関連は民生分野への技術展開も

そのほか、「 IHI 」は、子会社でロケット弾システムや誘導弾ロケットモータを開発・生産。「 東京計器 」は、レーダー警戒装置(危険な周波数のみをとらえパイロットに警報を与える)や、慣性航法装置(潜水艦を誘導)などを製造。「 細谷火工 」は、火薬や爆薬を使った火工品を防衛省・自衛隊関連向けにも供給。こういった銘柄も買われています。
防衛費の増大は、その直接の目的としては必ずしも手放しで喜べるものではありません。一方、三菱重工業は、次世代戦闘機の共同開発にあたって、国内関連企業が幅広く参画することで、日本の安全保障に貢献するとともに、科学技術分野での人材の育成や、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進などが期待されるとしています。防衛関連は、民生分野への技術展開などの観点も含め注目していきたいテーマです。