第7回 住宅ローン金利の行く末を、マジメに考えてみた

38歳から作る、老後資産3000万円/ 日興フロッギー編集部五月女ケイ子

こんにちは! フロッギー編集部のウミヤマです。老後に葉山の老人ホームで暮らすため、60歳までに資産運用で3000万円をつくることにチャレンジ中の、アラフォー編集部員です。

あっという間に12月になり、なんだか慌ただしい日々を過ごしています。大掃除や年賀状など、色々やることは多いですよね。お金関係でいうと、年末には今年の貯金増加額や、住宅ローンの残債を振り返るようにしています。普段はざっくりとしか把握していませんが、なんとなく年末には確認したくなるんですよね。

そんな中で気になったのが、11月に大手銀行が住宅ローンの「10年固定金利(新規借入)」を引き上げた、というニュースです。我が家は変動金利で住宅ローンを組んでいるのですが、今後は変動金利も上がってしまうのか心配です。そこで今回は、住宅ローン金利の決まり方や、金利の行く末について検証してみたいと思います。

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「なんとなく」変動金利に決めた住宅ローン

そもそも、住宅ローン金利ってどう決まるんでしたっけ……? 住宅ローンを組んだ時は変動金利がとても低く、今後も急激に金利が上がることはないだろうと思って組みました。私みたいな人、多そうですよね?

フロッギーで住宅ローン関係の記事を調べてみたところ、「マイホーム購入の新米パパ。ローン返済のポイントは?」の記事を発見。この記事によると、国土交通省の調査結果(平成29年度民間住宅ローンの実態に関する調査)では、平成28年度の新規貸出における金利タイプの割合は変動金利型が50.2%となっており、変動金利型にしている人は多いようです。

カエル先生の一言

変動金利以外の割合は、下記のとおりです。
・○年固定などの固定金利期間選択型は25.7%
・全期間固定金利型とフラット35に代表される証券化ローンの合計は24.1%

我が家の場合は「夫の収入だけでも返せるような物件にしよう」と思っており、借入金額はそこまで大きくありません。言い訳がましいですが、そんな事情もあって、住宅ローン金利がどうやって決まるのか詳しく調べずに組んでしまっていました……。

住宅ローン金利の決まり方

フロッギーに住宅ローン金利の決まり方の記事はないのかな? と思い「金利」と検索してみました。すると、「住宅ローンの金利タイプ」の記事を発見。この記事を読むことで、住宅ローン金利のそれぞれの特徴やメリットが理解できました。

しかし、「金利の決まり方」については分かりません。うーん、どうしよう。


なにか悩んでるの? ウミヤマさん!


カエル先生、ちょうどいいところに来てくれました! 教えてください。住宅ローンの金利って、どの金利を元に決まっているんですか?


まず、変動金利についてお答えしますね。変動金利型の住宅ローンの基準となっているのは、短期プライムレートです。金融機関が企業に対して1年以内の融資を行う際の、最優遇貸出金利のことです。短期プライムレートに1%上乗せした金利を、変動金利の基準金利としているんですよ。


短期プライムレート……初めて聞きました! 検索してみたら、三井住友銀行のHPに1.475%って出てきました。これに1%足したら2.475%ですね……あれ? 今の住宅ローン金利より、だいぶ高いような気がします。


実際に適用される適用金利は、基準金利から適用金利の優遇が行われたりして決まるんですよ。


ふむふむ。仮に三井住友銀行なら、変動金利型は年0.475%~年0.725%(2022年12月現在)なので、優遇幅が2%程度あるってことでしょうか。結構大きいんですね。固定金利は何の金利を元に決まってるんですか。


固定金利は、国債市場で取引される新発10年国債の利回りを基準に決められます。


新発10年国債の利回り……? なんかあまり馴染みがないですけど、どこで見れるんですか?


(この人、本当に金融メディアの編集部員なのかな)
SMBC日興証券HPを見れば、載っていますよ。各金融機関のHPなどにも載っています。

短期金利と長期金利の違いって何?

カエル先生の話を受けて、あらためて短期プライムレートと新発10年国債の利回りを調べてみました。日本銀行HPを見ると、2009年の1月から、短期プライムレートは変わっていません。一方で、新発10年国債の利回りは、2008年ごろから下落し始め、2019年の後半からは上昇に転じています。


短期プライムレートが10年以上変わっていないのに、新発10年国債の利回りは、近年少しずつ上がっています。これってなぜですか?


短期プライムレートが変わっていないのは、日銀が長い期間にわたって金融緩和や低金利政策を維持してきたことによります。例えば、近年では、短期金利の一部にマイナス金利を適用する、といった政策を取っていますね。


新発10年国債利回りが上がっている理由は、①日銀による金融政策(新発10年国債利回りがゼロ%程度で推移するようにコントロールする)が、今後状況に応じた柔軟な対応となるのではないかという懸念や、②インフレ圧力が強まったことによる米長期金利上昇の影響などです。


なるほど。だから、直近では「10年固定金利(新規借入)」だけ上がったんですね!

今後の住宅ローン金利はどうなる?

カエル先生のおかげで、だいぶ金利について詳しくなりました。ここまで住宅ローン金利について考えたことは初めてかもしれません……! しかし、肝心なのは、これからの見通しです。


短期プライムレートと新発10年国債の利回りは、今後どうなるんでしょう? 私、住宅ローンを変動金利で契約してるんですけど、変動金利に関係する短期プライムレートが上がるとしたら、いつ頃ですか?


日銀が今の金融政策を維持する限り、どちらも上昇する可能性は低いですね。ただ、日銀が金融引き締めに動いた際には、上昇することが予想されます。例えば、ゼロ金利政策の解除などの金融引き締め策が取られた場合です。


なるほど。日銀が金融引き締めを行わない限り、しばらく上がらなさそうなのですね。そういえば、2023年の春に日本銀行の黒田総裁が任期満了となるって聞きました。それも金利に影響したりするんでしょうか。


次期総裁がインフレを抑えるために金融引き締めを行うと、日本の金利は上昇する可能性がありますね。ただ、世界的な景気減速が強く認識されている状況の下では、金融政策が大幅に転換される可能性は低いと思います。


ふむふむ。となると、来年の春以降の景気次第なんですね。今のところ、金融政策が大きく変わることはなさそうですね。万が一10年国債の利回りや短期プライムレートが上昇する場合、銀行などで表示されている住宅ローン金利に、すぐに反映されるんでしょうか。なんとなく、タイムラグがありそうなイメージです。


短期プライムレート及び新発10年国債利回りが上昇した場合、住宅ローン金利にはすぐに反映されますよ。

注:すでに変動金利で住宅ローンを組んでいる方は、半年に1回金利が見直されます。


おお、そうなのですね! それは意外でした……! となると、やはり金利動向を時々チェックしておいた方がいいですね。カエル先生、ありがとうございました!

住宅ローンの見直しは必要?

カエル先生の話を聞いて、日銀が金融政策を変えない限り、短期プライムレートおよび新発10年国債の利回りが大幅に上がることはないのかな、と感じました。そして、今の状況を考えると、日銀が金融引き締めに動くとは考えにくいです。

もし金融引き締めに動いたとしても、変動金利が関係する短期プライムレートよりも、固定金利が関係する新発10年国債利回りの方が、先に上がりやすいという印象を受けました。ということは、変動金利が高くなるころには、固定金利はすでに金利が上がった後である可能性が高いです。とはいえ、しばらく変動金利が上がりそうにない状況の中、低金利の変動金利から高金利の固定金利へ借り換える必要はないかな、と思いました。

ただし、今の金融政策が5年後、10年後も続いているとは限りません。よって、日銀の金融政策と金利動向を時々チェックしつつ、早めに繰り上げ返済できるようにしたいなと思いました。我が家では、あと10年ほど、住宅ローン控除が使えます。住宅ローン控除を使える期間が終わったら、まとめて繰り上げ返済できるとベストだな、と考えています……! それまで低金利が続くことを祈るばかりです。

まとめ
・住宅ローン金利の基準となるのは、短期プライムレートと新発10年国債の利回り
・日銀が金融引き締めしない限り、低金利が続く見込み
・日銀が金融引き締めを行う場合、変動金利よりも固定金利の方が先に上がりやすい
・カエル先生は物知り
・金利上昇におびえる前に、繰り上げ返済したい
次回は1/17(火)配信予定です。