半世紀ぶり「人間洗濯機」大阪万博に再び

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、2025年の大阪万博で展示される「人間洗濯機」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

活かせるか!? 日本発のファインバブル技術

大阪万博まで2年半を切り、2022年12月14日には万博「旗」のデザインが公表されるなど、開催に向けた準備が進んでいます。この万博は、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献とソサエティ5.0の達成を目的としており、その中で「人間洗濯機」が展示されるとのことです。

人間洗濯機は、1970年の大阪万博で三洋電機が出展しました。そのときは超音波でしたが、今回はファインバブル(FB)の技術を使うようです。開発するのは、顔の油性ペンの汚れをシャワーで落とすCMで知られる、サイエンスというシャワーヘッドや浴槽を手掛ける大阪の会社です。

このFB技術は日本発の技術です。発端は1997年の広島湾での赤潮被害。養殖カキだけでも40億円を超える被害が起き、その対策として気泡発生装置を活用し、これがウルトラファインバブル(UFB)の開発につながったといいます。

キッチンや浴室、マヨネーズの製造も

FBは目に見えない気泡、つまり泡のことで、直系100μm(マイクロメートル)未満をマイクロバブル、それより小さい1μm未満をUFBと呼びます。UFBは、刺激を与えなければ水の中で浮上もせず、数週間~数ヵ月保ちます。そしてUFBには洗浄効果だけでなく、植物や養殖魚の成長を促進したり、土壌改良や機械の油分洗浄にも効果を見せるなど、用途はどんどん広がっています。既にISO(国際標準化機構)にも日本提案の規格として定義されており、経産省も普及に力を入れています。

取り扱っている企業は、健康美容機器を手掛ける「 MTG 」や、キッチンや浴室、ガーデニング向けの水栓から農業向けのUFBポンプを扱う「 丸山製作所 」、FBの発生装置を扱う制御機器メーカーの「 IDEC 」、またFBの測定器(粒子径分布測定装置)を扱う「 島津製作所 」などがあります。

また「 キユーピー 」は、シェフスタイルマヨネーズの製造にFBを活用し、ふっくらとして口どけの良い食感を高めたとのこと。「 くら寿司 」は、丸山製作所のUFB発生装置を導入し、バックヤードの水使用量を89%も削減したといいます。

ポエック 」は、12月9日に太陽光発電を使ったFB農業システムを開発したと発表し、株価が急騰しました。投資家もFB技術に関心が向いてきたようです。後は、他の技術もそうですが、海外に追い抜かれないよう心掛けたいところです。

(出典:日本証券新聞)