金融政策に正常化の思惑 「大手銀行」関連株が上昇

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株式市場で「大手銀行」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は6.9%と、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース鈍化観測などから上昇した東証株価指数(TOPIX、1.5%上昇)を大きく上回りました(1月13日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

長期金利の変動幅拡大、日銀の金融政策正常化の思惑誘う

大手銀行関連株が買われるきっかけになったのは、日本銀行が2022年12月20日まで開いた金融政策決定会合で決めた長期金利の変動幅上限の0.25%から0.50%への引き上げでした。日銀が長期にわたり続けている金融緩和政策を正常化するとの思惑を誘い、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが23年1月13日に一時0.545%と、15年6月以来7年7カ月ぶりの水準まで上昇(債券価格は下落)。銀行の利ざやが改善するとの期待が高まりました。

日銀は市場から国債などを購入する「公開市場操作」を通じて短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する「長短金利操作」を実施しています。長期金利の変動幅は21年3月に上限0.25%までの変動を許容するとしていましたが、市場機能が低下しているとして上限を引き上げました。日銀が都市銀行などの当座預金に課しているマイナス金利など一連の緩和策を正常化すれば、銀行の収益機会が広がるとの見方も追い風になっています。

企業価値向上へ成長企業支援や提携を強化【三菱UFJフィナンシャル・グループ】

上昇率首位は3メガバンクの一角を占める「 三菱UFJフィナンシャル・グループ 」です。企業価値の持続的な向上に向け、既存事業では成長企業支援や不動産領域での柔軟な投資といったリスクテイクを進めています。海外ではタイやベトナム、フィリピンで事業を展開しているほか、デジタル領域では提携を強化し中堅中小企業向けDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援などを進めています。

資産運用や事業承継、海外事業を強化【みずほフィナンシャルグループ】

上昇率3位も3メガバンクの一角を占める「 みずほフィナンシャルグループ 」です。成長戦略として顧客のゴールに根差した資産コンサルティングモデルの確立による資産運用部門の強化や事業承継などを掲げています。海外では資本市場の中心である米国と、今後も経済発展が見込まれるアジア・オセアニア地域での取り組みに注力していく方針です。

日銀総裁、副総裁の任期を控え政策変更の思惑続く

そのほか、コンパクトながらも日本全国および海外で業務を展開している「 あおぞら銀行 」。日本郵政グループの一員として全国の郵便局ネットワークを通じて個人に金融サービスを提供している「 ゆうちょ銀行 」。これらの銘柄も買われています。

日銀の黒田東彦総裁は2013年の就任以来、大規模な国債買い入れを柱とした「量的・質的金融緩和」を導入し、マイナス金利政策や長短金利操作といった緩和策を追加しました。いずれも2%の物価安定目標を達成するためでしたが、銀行の収益を圧迫しているとの指摘もくすぶっていました。日銀は3月19日に副総裁、4月8日に総裁の任期満了を迎えます。1月18日まで開いた決定会合では現状維持を決めましたが、新たな総裁や副総裁の下で金融政策の正常化が進むとの観測は根強く、新総裁が決まるまでは日銀の政策変更を巡る思惑が銀行株の動向を左右しそうです。

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