インバウンド急回復 「百貨店」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「百貨店」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は5.9%と、急速な円高の一服などから上昇した東証株価指数(TOPIX、1.3%高)を大幅に上回りました(1月20日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

訪日外国人客数、ほぼ3年ぶりに100万人を突破

昨年10月から、日本政府が個人旅行の受け入れなど水際対策を大幅に緩和したのを受け、訪日外国人観光客は急回復しています。1月18日に発表された2022年12月の訪日外国人数(速報値)は、137万人と前月の約1.5倍に膨らみ、20年2月(108万人)以来の100万人超えとなりました。訪日外国人数の回復は百貨店の売上にも表れており、1月24日に日本百貨店協会が発表した22年12月の免税総売上高(速報値)は214億と前年同月の6倍に拡大しています。

また、1月20日には岸田文雄首相が、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いを季節性インフルエンザと同じ「5類」に移すよう指示したと明言しました。インバウンドの回復に加え、国内でも外出の機会が一段と増えるとの思惑から、百貨店関連銘柄が物色されています。

12月の免税売上高、コロナ前を上回る【松屋】

上昇率首位の「 松屋 」は、銀座と浅草に2店舗を展開する老舗の百貨店です。1月13日に発表した2022年12月の売上報告によると、円安を背景に台湾、韓国、香港、タイなど東南アジアの国々からの訪日客が増加し免税売上高はコロナ前の2019年12月を上回る伸びを示しました。国内でも富裕層向けのラグジュアリーブランドなどの売上高が好調に推移しています。 

12月のインバウンド売上高が前年の11倍に【J.フロント リテイリング】

上昇率2位の「 J.フロント リテイリング 」は大丸、松坂屋ののれんで百貨店を展開しています。1月16日に発表した2022年12月の百貨店事業の売上高は前年同月比3.7%増でしたが、免税売上高は約11倍と急増しました。3年ぶりに入国制限のない年末を迎えたことで、客数が約44倍に膨らんだのが追い風になりました。 

中国に対する水際対策の緩和が焦点

このほか三越や伊勢丹、丸井今井などののれんで国内外で店舗を展開している「 三越伊勢丹ホールディングス 」。「あべのハルカス近鉄本店」など関西を中心に店舗を運営している「 近鉄百貨店 」。傘下の阪急阪神百貨店で「阪急百貨店」と「阪神百貨店」を経営している「 エイチ・ツー・オー リテイリング 」。これらの銘柄も買われています。 

2022年12月の国別の訪日外国人数では韓国からが45万6100人と前年同月の1064人から急増した一方、中国からは3万3500人(前年同月は1764人)と回復の鈍さが目立ちます。日本の水際対策強化に加え、中国政府も日本への団体旅行を解禁していないのが主因のようです。中国共産党の機関紙である人民日報の電子版は1月20日、中国全土の発熱外来の受診者数などがピークアウトしたとの当局の見解を伝えました。中国に対する水際対策の緩和が次の焦点となりそうです。