株式市場で「鉄鋼」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は4.8%と、米長期金利の落ち着きなどを受けて上昇した東証株価指数(TOPIX、2.9%高)を上回りました(1月27日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
中国景気の回復観測で、鋼材市況に改善期待
鉄鋼関連株が買われた背景は中国景気の回復期待です。世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、1月17日に講演した中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相は「2023年の経済成長率はかなりの確率で正常のレベルに戻る」と強調、「輸入は明らかに増加する」との見解も示しました。世界の鉄鋼需要の過半を占めるとされる中国景気の回復期待で、世界的に鋼材市況が改善するとの思惑を誘いました。
また、好調な企業の決算発表も関連銘柄の買いに波及しました。1月20日に東京製鉄が発表した2022年4〜12月期決算は好調なものだったことから、鋼材に対する需要増加や関連企業の収益改善期待が高まりました。
好調な決算を発表【東京製鉄】
上昇率首位の「 東京製鉄 」は、鉄スクラップを原料として電気炉で鉄鋼を生産する電炉業界のトップ企業です。2022年4~12月期決算は、売上高が前年同期比42%増、営業利益は46%増の大幅な増収増益となりました。主原料である鉄スクラップ価格が会社の想定を下回ったことや、堅調な国内需要に支えられ、出荷単価が想定を上回ったことなどが好業績の背景です。
軸受鋼の国内シェアトップ【山陽特殊製鋼】
上昇率2位の「 山陽特殊製鋼 」は、粗鋼生産世界大手である日本製鉄グループの電炉企業です。自動車や産業機械などに使われる鋼材事業、金属粉末などを手掛ける粉末事業、自動車部品などに使われる素形材事業を展開しています。国内No.1シェアを占める軸受鋼は強度が求められる自動車部品など社会のさまざまな場面で使用されています。
自動車生産の回復など追い風も、中国の生産増に注意
そのほか、「 中山製鋼所 」は、電炉企業として鋼板や条鋼などの鋼材を生産。「 栗本鉄工所 」は、水道用のダクタイル鉄管や製鉄・電力プラント向けのバルブなどを製造。「 神戸製鋼所 」は、アルミと高炉による製鉄の双方を手掛ける唯一のメーカーです。これらの銘柄も買われています。
中国の鉄鋼需要は世界の過半を占めていることから、鉄鋼関連企業は、中国で事業を営んだり、中国に直接輸出を行っていなくても、鋼材市況を通じて中国景気の影響を大きく受けます。このため、鉄鋼関連株には、「中国関連株」といった側面もあります。また、半導体の供給制約で調整を余儀なくされていた自動車生産の正常化が見込まれることも追い風となりそうです。一方、中国の景気回復による中国鉄鋼メーカーの生産増加は、鋼材需給の緩和というリスク要因となることには注意が必要です。