「3D都市モデル」実用化へ急伸展

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「3D都市モデル」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

災害対策の計画もより具体的に

「あれは阪神淡路大震災がきっかけだった」。DX(デジタルトランスフォーメーション)の話の中で、ITジャーナリストがこう振り返りました。政府などが取り組んできた「3D都市モデル」のことです。

1995年1月17日の震災で、被災地は広く被害を受けました。政府は被害状況の把握や復興計画を立案しようとしましたが、当時、地域の詳細な地図データがなく、担当者は途方に暮れたと言います。そこで国土交通省は、GIS(地図情報システム)と呼ばれる、位置に関する空間情報をデータベース化し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術の構築を始めました。

それを2020年からPLATEAU(プラトー)というプロジェクトに落とし込み、2021年8月には全国56都市の面積約1万平方キロメートル・建物約1000万棟分のオープンデータ化が完了。データは、社会情報流通推進協議会の「G空間情報センター」でダウンロードが可能になりました。

産経新聞の2023年1月3日の朝刊1面で〈メタバースに「京都」構築〉という記事が掲載されましたが、正にこれが3D都市モデルの展開です。これは、メタバース空間で京都観光を行うというだけのものではありません。例えばインバウンドで外国人観光客が大勢押し寄せた場合、公共交通機関の渋滞が1万人ならどうなるか、5万人ならどうなるかといったシミュレーションをメタバース上で行うことができ、その結果に応じて交通インフラの整備を進めることができます。

また、豪雨災害が起きた際、どのエリアに濁流が押し寄せるのかなどのシミュレーションなども可能となり、災害対策の立案計画がより具体的にできるようになります

3D都市モデルのデータ化は、2027年までに500都市へ

2022年12月23日に取りまとめられた、デジタル田園都市国家構想「総合戦略」でも、2027年までに3D都市モデルのデータ化を500都市に増やすとし、「デジタル技術を用いた都市空間再編やエリアマネジメントの高度化、データを活用したオープン・イノベーション創出等を進める」としています

こうした取り組みに参画しているのは、「 アジア航測 」「 パスコ 」など航空測量会社や、都市計画にも関わる「 鹿島建設 」「 大成建設 」「 東急 」「 JR東日本 」などです。

他にも、コンサルの「 三菱総合研究所 」や警備の「 セコム 」、「 NTT 」傘下のNTTドコモ、「 KDDI 」「 NEC 」「 日立製作所 」「 パナソニックHD 」といった企業も挙げられます。

(出典:日本証券新聞)