規制緩和要望で外資流入の思惑 「民放キー局」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「民放キー局」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は10.7%と、米国の利上げ長期化への警戒感などから下落した東証株価指数(TOPIX、0.6%安)に対して逆行高となりました(2月24日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

民放連、外資規制に関する意見を提出

民放キー局関連銘柄が買われたきっかけは、外資規制に関する意見提出でした。2月17日、日本民間放送連盟は、総務省に放送分野における外資規制等に係る法令改正に対する意見を提出しました。放送法や電波法は、放送事業者について外国人株主の議決権比率を20%未満にするように定めています。

意見では、外資による間接出資の状況を把握するのが「著しい事務負担となるケースがある」と指摘。議決権割合を1000分の1以上もつ外国人株主を報告対象にするという規定について、「より高い議決権割合に変更していただきたい」と表明しました。これにより海外勢の小口の買いが入りやすくなるとの思惑を誘ったようです。

同じく17日には、有料動画配信サービス「Paravi」を手掛けるプレミアム・プラットフォーム・ジャパンが、同業の「U-NEXT」を運営するU-NEXT(USEN-NEXT HOLDINGS傘下)との経営統合を発表しました。なお、プレミアム・プラットフォーム・ジャパンはTBSホールディングスやテレビ東京ホールディングスなどが出資している会社です。乱立気味の動画配信サービスの再編が進むとの観測も、関連銘柄への資金流入を促しました。

配信事業の広告収入が19%増【TBSホールディングス】

上昇率首位の「 TBSホールディングス 」は、民放テレビ各社の無料動画配信サービス「TVer」や自社サイトの「TBS FREE」、Zホールディングス傘下の「GYAO!」、ニュース動画配信の「TBS NEWS DIG」を通じて自社のコンテンツを配信しています。2022年4〜12月期の配信事業の広告収入は、39億円と前年同期に比べ19%増えました。

“トライブリッド戦略”を展開【テレビ東京ホールディングス】

上昇率2位の「 テレビ東京ホールディングス 」は、傘下のテレビ東京コミュニケーションズが動画配信などのデジタル媒体の開発や運営、広告事業を手掛け、自社サイト「ネットもテレ東」などを通じて動画を配信しています。放送事業を軸に配信とアニメの3事業の相乗効果を発揮させてコンテンツの価値を最大化する「トライブリッド戦略」を掲げ、放送事業だけに頼らない収益構造改革を進めています。

配信事業は競争激化、リストラも

そのほか、「 フジ・メディア・ホールディングス 」は傘下のフジテレビが公式サービス「FOD」で動画や電子書籍を配信。「 テレビ朝日ホールディングス 」は傘下のテレビ朝日が公式サイト「テレ朝動画」などを通じた広告付き動画配信やKDDIとの協業「TELASA」をはじめとした定額動画配信を展開。「 日本テレビホールディングス 」は定額動画配信の米Huluの日本事業を傘下のHJホールディングスが手掛けています。これらの銘柄も買われています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり消費」の浸透で、定額動画配信サービスは急成長を遂げました。先行していた米ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムに加え米ウォルト・ディズニーなど伝統的なメディアの参入や経済活動の再開もあり、競争は激化しています。国内では「GYAO!」が3月31日にサービスを終了するほか、米国ではディズニーが、2月8日に人員削減も含む総額55億ドルのコスト削減策を発表しました。豊富なコンテンツを持つテレビ局が配信事業を成長の足掛かりにできるか、しっかり見極めたいですね。