中国インフラ投資に回復期待 「建設機械」関連株が上昇

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株式市場で「建設機械」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は4.2%と、米金融引き締めペースの鈍化への期待などから上昇した東証株価指数(TOPIX、1.6%高)を上回りました(3月3日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

全人代開幕、景気刺激策の思惑

建設機械関連株が買われた背景は、中国が景気刺激策を打ち出すとの期待です。3月5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕。経済成長率などの目標を発表する年に一度の重要な会議です。「ゼロコロナ」政策で落ち込んだ景気の回復に向け、財政出動でインフラ投資などを強化するとの見方が浮上

それに先立つ1日には、中国国家統計局が2月の購買担当者景気指数(PMI)を発表。製造業は前月比2.5ポイント上昇し、52.6と2カ月連続で好不況の境目である50を上回りました。2012年4月以来の高水準となり、景気が着実に回復に向かっているとの見方が高まりました。こういったことを背景に、建機関連株が買われました。

中国の生産拠点集約で収益安定目指す【神戸製鋼所】

上昇率首位の「 神戸製鋼所 」は、アルミ・鉄鋼の製造や建設機械、電力などを手掛ける複合企業です。建設機械は売上高で鉄鋼アルミに次ぐ主力事業です。建設機械の中国事業は収益の大きな柱でしたが、中国市場の縮小が続くとの見方や中国国内メーカーの攻勢で見直しを迫られました。2拠点あった中国国内向けの油圧ショベル事業を1拠点に集約すると2022年6月に発表。中国の生産能力を事業環境に見合った規模に見直し、収益の安定化を目指しています。

販売サービス統括会社設立で中国事業を強化【日立建機】

上昇率2位の「 日立建機 」は、日立製作所グループで建設機械や鉱山機械、部品・サービス事業などを手掛けています。日立が保有する同社株の一部を売却したのを受け、中国事業の体制を再構築し、事業を強化すると2022年9月に発表しました。販売サービス統括会社「日立建機販売(中国)有限公司」を設立し、日立建機(上海)の事業の一部を承継。大型・小型建機にとどまらず、鉱山機械まで幅広い製品やサービスを取り扱っています。

中国は景気回復を優先、現地メーカーとの競争には注意

そのほか、道路建設機械のパイオニアの「 酒井重工業 」は、上海の子会社を通じて建設機械などの製造や販売、輸出入を手掛けています。建設用クレーンや車両搭載型クレーン、高所作業車などを手掛ける「 タダノ 」は、北京の子会社で中国事業を進めています。建機国内最大手の「 小松製作所 」は、中国で生産拠点や販売拠点、パーツセンターなど17もの拠点を展開しています。これらの銘柄も買われています。

中国政府は5日の全人代で2023年の実質経済成長率の目標を「5%前後」と定め、3%成長にとどまった22年からの景気回復を最優先する方針です。地方政府が新たに発行するインフラ債(専項債)の枠は3兆8000億元(約75兆円)で、22年から1500億元増やします。
インフラ投資の活性化は建機各社に追い風となりますが、中国国内企業との競争は激しさを増しそうです。生産拠点の集約や営業強化など各社の中国事業の対応は様々ですが、どの会社が競争を優位に進められるかしっかり見極めたいですね。